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2話 宇宙船2

 乗組員達が自分の持ち場に戻り、作業を始めた瞬間、オペレーションルームの扉が開き、焦った様子で男が走りこんできた。


 「なんだ?!」


 船長が振り返ると、男は息を乱しながら言った。


 「生命体の反応を強く感知し、生物の全貌が分かりました!

 大きさ10センチほどの生物が水中に生息しています。他にも生命体の反応はありますが、一番大きいのはそれになります!

 さらに驚くべきことがありました!水と酸素が人間の生存可能な濃度で存在しています!

 地球とは全く異なった進化が起きているようです。

 今すぐにでも、移住が可能です!

 まだ、陸上内部まで植物は侵食していないので更地にはなりますが」


 船長は手を叩いた。


 「よくやった!これで地球に大手を振って帰れるぞ!」


 驚きの報告に僕もたまらず声を上げる。


 「すごい!地球での資源問題と人口増加問題が一気に解決するかもしれませんね!」


 

 ドガァァァァアン!!!!!


 唐突に爆発音が船内に響いた。


 「今度はなんだぁぁあ!!」


 船長が声を張り上げる。


 「ゴードン船長!!大変です!エネルギータンク付近で爆発が起こり、エネルギーが急激に減少しています!」


 「なに?!何とかならないのか!」


 「この船の機能で、すぐに復旧作業が始まりますが、地球に戻るだけのエネルギーは残らないと思います!」


 「くそっ!なんだっていうんだ!今残っているエネルギーでどれだけ地球に近づける?!」


 「残っているすべてのエネルギーを使っても、地球の救援外になってしまいます。

 地球への連絡のためのエネルギーを考えると、帰還は難しいかと……」


 すべてをあきらめた声に、乗組員たちは頭を抱えた。

 船内の気温が下がったようにすら感じる。


 船長は顔をゆがめながら、椅子にどっかりと座った。

 そして貧乏ゆすりを始める。

 

 どうしたらいいんだ……。

 エネルギー漏れに、局からの申請拒否。極めつけに急な爆発。

 確実に何かの陰謀が裏にあるはずだが、今はそれを考えても仕方ないだろう。

 地球に帰ろうにも、エネルギー不足で不可能。

 ……詰みじゃないか。


 頭をフル回転して、これからの行動を考える。

 船長の貧乏ゆすりの音だけが、耳に入ってきた。


 どうすればいい。

 どうすればいい。

 地球に戻ることはでき……

 

 「あ!」


 戻ることができないなら、前に進めばいい!


 顔を上げて回りを見渡すと、みんなが僕をみていた。

 僕は、さっき船長と会話をしていた乗組員に話しかけた。


 「メラノス星には、残ったエネルギーで行くことはできますか?」


 乗組員は納得したような顔をしてから、解析を始めた。


 「残念ながら3光年程距離が足りません……。言いたいことは分かります。

 人間が生息可能な星に行けば、もしかしたらそこで何とかできるかもしれないということですよね」


 「そうですか……」


 ダメだった。

 乗組員が言った通り、生物が生きられる星なら、食料があるかもしれないし、エネルギーを作ることもできるかもしれないと考えた。

 だが、届かないんじゃ意味がない……。

 いい案だと思ったんだけど。

 今度こそ、詰みか……。


 「いや、一つ方法があるぞ」


 船長が椅子から立ち上がった。


 「ワープを使えばいい。実証実験はされてなく、座標設定と空間設定が不安定だと、ケンゾウは言っていたが、エネルギー消費はことのほか少ないらしい。

 大変危険で、一か八かにはなるが、この方法なら星につくことができるだろう」


 ケンゾウとは、僕の父の名前だ。

 船長は、父さんからワープの話を聞いたことがあるらしい。


 沈黙を保っていた乗組員の一人が声を上げた。


 「今調べましたが、確かにワープ機能は使用できそうです。しかし、危険すぎます!

 少し間違えたら、まったく違く場所に飛ぶことになりますし、もしかしたら別空間に行ってしまうかもしれません」


 「確かに、危険性は極めて高い。

 無事につける可能性は、五分五分ですらない。だが、0でもない!

 ここで死ぬのを待つくらいだったら、わずかな可能性に賭けたほうがいい」


 船長がまっすぐ僕を見た。

 覚悟を決めた男の目だ。


 「ソラタ。起動してくれ。

 ワープにも声紋認証が必要だ」


 覚悟をきめる必要がありそうだ。

 

 僕は、船長の目をまっすぐ見返してうなずいた。


 「わかりました。やりましょう」


 乗組員達も覚悟を決めたのか、作業を始めた。


 どうなるかは分からない。

 全く違うところにいってそこで一生を終えるかもしれない。

 だけど、うじうじしているのも嫌だ。


 「ソラタさん、お願いします」


 どうやら準備ができたらしい。

 僕は、窓の外をにらみつけ、機械の前に立った。


 「コード2041。オーダー、超光速空間航法」


 「声紋、認証しました。綿矢空大様を認知。これより、超光速空間航法の第1フェーズに入ります」


 誰一人として、口を開ける者はいなかった。


 「警告、エネルギーの欠失を感知。1度しかこの機能は使用できません。使用した場合、エネルギーが枯渇します。

 警告、この機能は不完全です。失敗の可能性が極めて高いです。使用しますか?」


 僕は船長と顔を合わせてから言った。

 

 「はい」


 「了解しました。目的地の座標を打ち込んでください」


 乗組員が言われた通り、星の座標を打ち込んでいく。


 「座標を確認しました。最終フェーズに入ります。各自、席についてセーフベルトをしてください」


 機会がそれを言い終わると、船内に「各自、席についてセーフベルトをしてください」という言葉とともに、大きく警告音が響きだした。


 乗組員と船長は席について、ベルトをした。

 僕も開いている席に急いで座り、ベルトをする。


 「最終フェーズ、終了します。これより、超光速空間航法によるワープを開始します。開始まで、30秒」


 滑らかな女性の声が、カウントを始めた。


 さぁ、吉が出るか凶が出るか。

 

 恐怖で震えそうな体を抑えつける。

 祈るようにしている船員もいれば、呆けている船員もいた。皆一様に不安に駆られているようだ。


 「5……4……3……」


 カウントの声が嫌に大きく聞こえる。


 「2……エラーエラー空間座標が把握できません。エラーエラーくう……1……始動」


 目を開けていられない程の光とともに、ざわめく声が、空間に置いて行かれた。

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