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僕と彼女の物語

欠けたハート

作者: 渋音符
掲載日:2020/06/28

比翼連理は、男女の仲のメタファーとしてよく用いられる。

 


 比翼


 携帯に積もった埃が散った。

 這っていた虫がこちらを見ていた。

 眼鏡に積もった埃はそのまま。

 貼っていた物がこちらを見るから。


 欠けたハートから零れた中身。

 赤い油は水に弾かれた。


 比翼の鳥は片方だけのようだ。

 もう片方は飛んでいった。

 風が少しも吹いてなかったんだ。

 飛ぶことさえ出来ないようだ。


 声帯に絡んだ(たん)を吐いた。

 死んでいた鳥がこちらを見ていた。

 仮面に入ったひびはそのまま。

 千切れた翼をぐちゃり踏んづけた。


 割れた器では掬えぬ中身。

 暗いメレンゲは何の意味もない。


 記憶の君は綺麗だったのかな。

 もう何も憶えてなかった。

 誰かの後ろを見ているだけだった。

 地面にただ蹲った。


 欠けたハートに君はいない。

 独り善がりとあなたに言った。

 ほざけ。

 僕は独り酔っていた。


 比翼の鳥はどこにもいなかった。

 僕は鳥じゃなかった。

 元々飛べぬ僕は地に墜ちた。

 飛ぶことすら独りでは。


 両足はまだ残っているようで。

 遠く歩き出していく。

 振り返って一度だけ君を見た。

 僕も君を置いて行く。

 鳥は土を蹴っては()いた。

 もう空は飛びたくなかった。






 連理


 アタシは、木だね。

 半分になった木。

 アンタがいないと立てないのさ。


 葉っぱが中途にのび、

 体を隠してくれぬのさ。

 アンタがいないと服も着れんのよ。


 アタシは木だね。

 アンタの半分。

 アタシとアンタで一丁前。

 ペアルックでもしようかね。


 今日は風が強いねえ。

 オイ、アンタ、アタシを支えてよ。

 アタシ一人じゃ立てないのさ。

 アンタがいないとダメなのさ。


 アタシは木だね。

 半分で生まれた木。

 アンタと一緒に生まれた木。


 オイ、オイ、アンタ、どこへ行くんだい。

 アタシを置いて、一体どこへ。

 アンタがいないと半分欠けちまう。

 体も、心も、何もかも。


 オイ、アンタ。

 アタシから感情を持っていくな。

 おかげでアンタを怒れないだろ。

 悲しめないだろ。


 オイ、オイ、オイ。

 行くんならせめて言いなよ。

 アタシに言ってくれ。

 アタシは必要だったって言ってくれ。


 アタシは木だね。

 半分になった木。

 アンタの半分。

 アンタはどうか知らんけれど。

 アタシにはアンタが必要だったよ。



だから私は、それを引き裂いた。

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