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僕と彼女の物語

欠けたハート

作者: 渋音符

比翼連理は、男女の仲のメタファーとしてよく用いられる。

 


 比翼


 携帯に積もった埃が散った。

 這っていた虫がこちらを見ていた。

 眼鏡に積もった埃はそのまま。

 貼っていた物がこちらを見るから。


 欠けたハートから零れた中身。

 赤い油は水に弾かれた。


 比翼の鳥は片方だけのようだ。

 もう片方は飛んでいった。

 風が少しも吹いてなかったんだ。

 飛ぶことさえ出来ないようだ。


 声帯に絡んだ(たん)を吐いた。

 死んでいた鳥がこちらを見ていた。

 仮面に入ったひびはそのまま。

 千切れた翼をぐちゃり踏んづけた。


 割れた器では掬えぬ中身。

 暗いメレンゲは何の意味もない。


 記憶の君は綺麗だったのかな。

 もう何も憶えてなかった。

 誰かの後ろを見ているだけだった。

 地面にただ蹲った。


 欠けたハートに君はいない。

 独り善がりとあなたに言った。

 ほざけ。

 僕は独り酔っていた。


 比翼の鳥はどこにもいなかった。

 僕は鳥じゃなかった。

 元々飛べぬ僕は地に墜ちた。

 飛ぶことすら独りでは。


 両足はまだ残っているようで。

 遠く歩き出していく。

 振り返って一度だけ君を見た。

 僕も君を置いて行く。

 鳥は土を蹴っては()いた。

 もう空は飛びたくなかった。






 連理


 アタシは、木だね。

 半分になった木。

 アンタがいないと立てないのさ。


 葉っぱが中途にのび、

 体を隠してくれぬのさ。

 アンタがいないと服も着れんのよ。


 アタシは木だね。

 アンタの半分。

 アタシとアンタで一丁前。

 ペアルックでもしようかね。


 今日は風が強いねえ。

 オイ、アンタ、アタシを支えてよ。

 アタシ一人じゃ立てないのさ。

 アンタがいないとダメなのさ。


 アタシは木だね。

 半分で生まれた木。

 アンタと一緒に生まれた木。


 オイ、オイ、アンタ、どこへ行くんだい。

 アタシを置いて、一体どこへ。

 アンタがいないと半分欠けちまう。

 体も、心も、何もかも。


 オイ、アンタ。

 アタシから感情を持っていくな。

 おかげでアンタを怒れないだろ。

 悲しめないだろ。


 オイ、オイ、オイ。

 行くんならせめて言いなよ。

 アタシに言ってくれ。

 アタシは必要だったって言ってくれ。


 アタシは木だね。

 半分になった木。

 アンタの半分。

 アンタはどうか知らんけれど。

 アタシにはアンタが必要だったよ。



だから私は、それを引き裂いた。

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