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第5話:魔法修行はじめました(?)

 うん、とりあえず魔法の学校にはそう簡単に入れないという事実はわかった。丸一年待つのも面倒だからね。……まあきっとユナちゃんはなんだかんだ優しいし、事情を聴けば魔法くらい教えてもらえるはず! ってことで今は考えないことにしよう。


 それにしたって一年が24か月、730日もあるとは驚きだね。月日の感覚が狂っちゃうかも……ってちょっと待って?


「あれ、マリネちゃんって本当に12歳、なの?」

「? はい、そうですけど……どうかしましたか?」


 ……一年が730日のこの世界で12歳って地球換算で24年分にならないかい? つまり私よりも年上……? それならこのしっかり具合もわかる……いやいやだとしても24年経って幼女っておかしいよね!?


「一応聞くんだけど、生まれてから何年間生きてる?」

「今年で12歳ですから、12年ですね」

「じゃあ————」

「もちろん————」


 それからいくつか質問をしたけど、結果から言うとさっぱりわからないね! うん、でももう考えることに飽きたよ。異世界なんだから何でもありなのさあっはっはっはっは……。


 よし、リセット完了!



「それで、他に質問はありますか?」

「いいえ、大丈夫です」

「では最後に注意事項を……」

「あっ、一つだけいいです?」


 そう、さっきスルーしてたことを忘れていた。


「はい、なんでしょうか?」

「この国のお金って、どんな感じ?」

「……えっと、国境門を通る時に外国通貨交換とか、しなかったんでしょうか? 為替相場はたしかあそこの人が説明してくれるはずですが……?」


 えっ、なにそれ。あー……うん。じゃあ、そうだね。


「いやぁ、交換したんだけど、何の硬貨がいくらなのかってちゃんと把握できてなくてね」

「そう……ですか?」


 あっ、凄く訝しげな視線を感じるよ⁉︎ 信じて! お願い!


「……まあ通貨について教えるくらいなら」

「やった! ありがとう!」


 それから金銭の説明を受けた。なんでも硬化の種類は全6種で銅貨1枚で1トーラ(トーラが単位)。そこから大銅貨、小銀貨、大銀貨、小金貨、大金貨、の順番でそれぞれ10枚で1つ(くらい)が上がるみたい。


 正直、10進法で助かった。これが8枚で1つ上とか、5枚で1つ上とかだったらわかりづら過ぎて生活できる気しないもんね。……おいそこ! 私のこと今、馬鹿って思っただろ!……思ってない? さいですか。


「では今度こそ注意事項を言いますので、よく聞いてくださいね」


 注意事項は予想外に多かった。さっき言われたギルドカードの再発行には500トーラ……小銀貨5枚が掛かること、あと依頼を受けるときに保証金を払わないといけない依頼があること、依頼は一度受けたらキャンセルする時にはキャンセル料金が掛かること、あと依頼中に死んでも自己責任であることとか、その他にもいくつか。


 ……まあ聞いたら思い出すでしょう!


 殆ど覚えられてないけど、とりあえずギルドカードを無くさないってことだけ覚えておけばいいかな。


「ではこれで説明は以上になりま……あっ、すいません忘れてました。名前を教えて頂けますか? 本当はギルドカードから見るんですが、読めないもので……」


 名前かぁ……ギルドカードに書いてあるのは「かなかな」なんだけど、ほんとにそれでいいの?

 今ならどんな名前にでもできるわけだよ。カナ=シュヴァインでもカナカナ=ゼグリフィアでもなんと名乗っても誰にもバレないわけで……センス無い? いやいやカッコいいですから! 主にヴァとかゼグの辺り!

 少し悩んでからマリネちゃんに聞く。


「ちなみにこの名前ってどんなところで使われるの?」

「どんな、というより全てですね。あなたのこの国での身分がそれと確定するものですので」


 あーなるほどね。それなら『かなかな』っていうギルドカードに書かれたそのままの名前が無難なのかなぁ。読める人が出てこないとも限らないし?

 まあ強敵を前にしたその時の気分で名乗りを上げればいいもんね!


「じゃあ名前は”かなかな”で」

「かなかな、ですか? えっと、本当に?」

「はい!」

「……わかりました。簡単に変えられるものではありませんのでご承知ください」


 絶対信じてないね。うん知ってた! 私それくらいはわかっていたよ! まあ読めない方が悪いんですよってね!

 それからオススメの宿屋だけ聞いてから冒険者ギルドを後にした。


 そして、早くも一週間が経った。……えっ、早すぎるって? 仕方ないじゃん! 冒険者としての活動なんて側溝の掃除と草むしり、それに迷子の猫探しくらいだよ? 何を話せと……。


 とまあ、そんなわけで一週間が経った今日も私は変わらず冒険者ギルドでのんびりと依頼の報告をしていた。


「迷子の猫探しが完了、ですね。――――はい、確認いたしました。どうぞ、こちら成功報酬の100トーラです」

「ありがとうございます!」


 そうそう、金銭感覚的には1トーラが10円くらいだと思う。……つまりギルドカードの再発行料金は5000円くらい? んー、割とリーズナブルな価格だね。素材自体はそこまで高価なものじゃないのかも?


 そんな風に考えながらギルドを出て伸びをする。なんだかんだで初めの頃はトンガリ帽子に豪華な服が人目についていたんだけど、なんかこの服で草むしりとか側溝掃除とかしてるうちにみんな優しくなってきた。

 やっぱりこれは私の人情がなせる業なのかな! 

 だってたまに通りすがりのおばちゃんに「(たくま)しいねぇ」とか「頑張ってね」って言われるんだよ? あとたまに泣きそうな顔をしてる人もいるんだけど、そういう人は大体優しくしてくれたり。まあここまでくると不思議な世界だなって思っちゃうけど。


 ……別に、貧乏貴族の家に生まれた末っ子が服一枚で家から追い出されたとか、そういう人が平民よりひどい暮らしを送っている常識がこの辺にあるとか、そのせいで平民の皆さんに同情されているとか、そんなことはない…………。えっ、違うよね? 

 よくある物語だと貴族って基本平民にとって悪者扱いだし、関わりたくない存在、みたいな扱いでしょ? あれ、でも私そういう扱い受けて無くない? ってことはここの貴族と平民って割と良好な関係? つまり私は貴族家の頭のおかしいお嬢様が草むしりしてて……いやでも私は頭おかしくないし。


 結論! よくわからん!(どやあ)


 そんな風に考えながら、私はいつも通りの道を通って宿屋へ。

 カランカランという鐘の音と共に宿屋の扉を開ければ、ここの看板娘であるチイちゃんがカウンターで出迎えてくれる。


「いらっしゃ……あっ、かなちゃん! おかえりー」

「ただいまー、はい、チイちゃんこれ来週の分の宿代。今日でも大丈夫よね?」

「大丈夫だよっ! じゃあ来週もかなちゃんは泊まってくんだ?」

「うん! たぶん当分は泊まらせてもらうと思う」

「やった! またお部屋行ってもいい?」

「もちのろんだよ! いつでも来ていいからね!」


 赤い髪とその上にピンと立った猫耳が可愛らしいチイちゃんは、なんと10歳! マリネちゃんより年下だから、こっちの世界であった中で一番年齢の低い子ってことになる。

 ちなみに会ったその日に話して、色々と楽しくなっちゃって、今では仲良しのお友達だ。


 ……べ、べつに私はロリコンじゃないよ!? ただちょっと幼子が好きなだけ! 恋愛対象として見てる訳じゃないんだから!



 その日の夜、私はチイちゃんと話していた。何についてかって? それはね、魔力について。

  チイちゃん、まだ小さいけどこう見えて魔力の扱いは私より上手い。いやまあ比較対象が魔力を一週間前に初めて知った私だからね。

 なんかこの世界では魔力について3歳の頃から教わるらしくって、10歳になるチイちゃんにも飲み水を出すくらいならもう問題なくできるんだって。


 ……あの魔術の学校、マギセンだっけ? 要するにあそこで学ぶのって生活魔法できる上での話ってことなんだと思う。ってことは、今の私じゃ受験しても絶対落ちる。


 ユナちゃん、学校で学べってそのための知識が無いんですがどうすれば良いんですかねー? というかそもそも保護者いなくて文字すら読めないって……私詰んでね?

 そんな風に思ったのはチイちゃんに魔力を教えてもらった初日のこと。


 とりあえず今はチイちゃんに魔法の基礎だけ教えてもらってる。要するにチイ師匠だね。ちなみに教え方はめっちゃ優しくて可愛いらしい。



 とりあえず魔法を使えるようになるまではこの調子で頑張る。それで伝達魔法だけ覚えられたらユナちゃんに連絡していっぱい褒めてもらうんだ……!!


「? 変な笑い方してたけど、かなちゃん、大丈夫?」

「うん! それでそれで、魔力が練れたらどうするの?」

「そしたらねー…….」


 そうして今日も過ぎていく。

 私の魔法修行はまだ始まったばかりなのだっ!

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