プロローグ
全てが破壊された城の跡地で二人の男女が満身創痍で剣を地面に突き立て膝をつき、お互いに向き合っている。
男の方は、勇者であり、白オーラを纏っている。女の方は、魔王であり、黒オーラを纏っており、全身に禍々しいタトゥーが入っている。
勇者は、苦悶の表情を浮かべながらも魔王に話しかけながら立ち上げり強く剣を握り締め地面から引き抜くと魔王に向けて剣を構えた。
「さすがは…。歴代最強の元勇者……。まさか、魔王に堕ちて500年。ここまで勇者の力と自我が残っている魔王は………、アンタだけだろう……。勇者、マオ!」
魔王も立ち上がり剣を構え、泣きそうな顔をして勇者に対して話しかけた。
「私を勇者などと………呼ばないでください……。魔王の呪いに逆らえず…………、滅ぼした国など10では……、済まないでしょう…。今も勇者に討たれる為に…残していた力を全て使っても……。くっ…!魔王の呪いを完全に抑えるまでには………、いかない。しかし、お願いです。私をここで討ってください!もう、私が魔王に成りきるまでの猶予は、ほとんどありません!」
勇者は、覚悟を決めた表情をすると身体から膨大な魔力が練り上げられ魔法を発動すると勇者を中心として無の空間が広がり、魔王を取り込み空間を完璧に閉ざした。
「 わかったよ。真央。俺が命を懸けて、ここで終わらせる。空間魔法 無間!」
無の空間の中では、魔法を発動している者の許可がないと動けないため魔王は、抵抗出来ないことを悟ると勇者に穏やかな笑顔を向けたてお礼を言った。
「ありがとう。勇者 ユウ。」
勇者は、こんな方法でしか魔王を救えないことに申し訳なさを感じながら最後の魔法を発動した。
「空間魔法 終焉!」
構築されていた空間が消滅し、勇者と魔王の熾烈を極めた闘いは、相討ちと言う形で幕を閉じた。
目の前の写真には、目が大きく長い黒髪をストレートに伸ばした美人な女性が振り向き様にこちを見ている姿が写っている。
「行って来ます。姉さん。」
姉さんが行方不明になってから5年。家族に書き置きもなく突然と学校の帰りから姿を消した。
俺の家は、神社の家系で幼い頃から一族に伝わる剣術と体術を習うことになっている。中でも姉さんは、天才で17歳の頃に師範を修める程だった。
俺も姉さんを越そうと努力して来たが今だに姉さんの様に自然の流れで力強く技を出すことが出来ない。そんな姉さんが何かの事件に巻き込まれ行方不明になることなど、誰も夢にも思ってなかった。
警察も懸命な捜査を行っても全く手掛かりがつかめず、報道機関からの情報提供も全くなく、時間だけが無為に流れ5年。
写真に挨拶を終え、大好きで目標だった姉が今は、いない事に寂しさを感じて家を出た。