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空手青春記  作者: 東武瑛
3/10

昇級はしたけれど

「全国大会に出ないか」

入門して一ヶ月経ったある日、先生が私に言った。

道場内の交流試合でも無い、地区戦でも無い。

宗家先生を迎えて横浜地区本部主管の初めての記念すべき全国大会である。

 そんな格式ある大会に入門して一ヶ月の私が出場する誘いが来るなど想像出来なかった。

「型を教える。夏休みに入ると少年部の稽古は午前中にもなる。それに参加し夜の一般部の稽古にも出れば、大丈夫だ」

そこまで言われると「分かりました」と答えるしかない。

 ただし、嫌な気分もあった。

一つは試合と言っても型の試合。

私は型には興味なく組手の力を試したかった。

もう1つは試合の開催される日曜の次の日は中間テストの一日目だった。

 二学期の中間テストの成績は高校合否の対象になる。テスト前日の日曜は試験勉強のため一日開けたかったが、逆に一日潰れてしまう。

 「分かりました。試合を出ます」と言ったが内心は「嫌だな」というのが正直な心境だった。

 しかし、稽古は厳しかったが自分がみるみる強くなる実感があり続けた。

 8月に初めての昇級審査があり、それまでは稽古に熱が入った。

 当時、私の道場では白帯の次は6級緑帯の審査だった。

 審査では、自由組手のテストもあったが、顔面を叩かれ、蹴られても怪我せず、審査に合格した。

 同じ中学の下級生が私よりも先に入門して緑帯を閉めていたので嬉しく思った。

ただし、昇級して逆に私の心は空手から離れて行った。

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