後日のこと
「それで?今後はどうするつもりかな?」
あれから宿で休んでダンジョン攻略をした翌日。ギルドマスターのいる執務室に来ている僕たち。報告は一通り済み今後についての話し合いをしている。
「そう、ですね・・・アルトネの問題をなんとかしたいんですけど」
僕の言葉にギルドマスターは難しい顔を作る。やっぱり神剣のことは大きな問題みたいだ。
「聞いてはいるよ。ただ、そうだね。準神剣はあるかい?」
準神剣、とギルドマスターが言ったのはまだエルピスが神剣として覚醒したことを知らないから。神剣の前段階にあり、神剣になる可能性がある剣を指す。
「おいで、エルピス」
ポケットホールから休眠状態のエルピスを手元に召喚する。何度持ってみても剣の重さを感じないのが不思議だ。
「うん?神剣の手前、神剣としての覚醒を果たしてないとしたら余りにも何も感じない?神剣になるには足りなかったということかな?刀身と装飾に関しては素晴らしいとは思うけど」
「今は、寝てるんです」
(起きられるかいエルピス?)
(あなたが望むなら即座にでも)
その言葉と同時にエルピスから部屋全体に圧力がかかる。それは彼女から発せられる莫大な量の神氣によるもの。神々しく、なにより絶対的な力を持つ彼女の存在はやはり大神剣に相応しい。
「まさか既に神剣として覚醒しているなんてね・・・・とんでもないものを鍛えたものだねアルトネ=マージ?僕が見たことのある五本の神剣よりもヤバいのが伝わってくるよ」
「私は鍛っただけ。神剣に選ばれたのはファン、神銘も彼が授けた」
アルトネの言葉にいつかのミネアのように目尻を押さえるギルドマスター。うーん、最近どこかで見たことがあるようなポーズだ。うん、ほんとね。最近よく見るね。
「そうか、いやアレの弟子だから。こうなるのも当然か。ならば話が早いファン=ルーシュ、君のバックにはギルドが立とう。全ての国のトップにその旨を伝える。ただ、あくまでこれも非公式だ。彼らが事故にあった、なんて言ったら君の命は事故として処理される。そのあたりは、保証できない」
それは保護という放し飼い。自己責任で身を守れという言葉。しかし、厳しい表情を崩して言葉が続けられる。
「しかし、君のしたことにはギルドが責任を持つ。国を落としたり、大量虐殺を自主的に行わなければ問題ない。判断は君たちに任せるよ」
「なぜそこまで?」
僕の言葉にギルドマスターは優しく微笑んで頭を撫でてくる。
「君の師匠はバカだ。面倒だ、ダルいなんて言いながら一人で全部背負い込む。終いには神様まで誰かのために殺すくらいだ、そんな親友の愛弟子のためなら僕ができることは全てしよう・・・まぁ、君ならあまり心配はいらないだろうけど」
「師匠は出会ったときから不器用ですから」
師匠から彼自身の話を聞くことはほとんどない。酒場のねーちゃんが綺麗だとか、宿屋の娘がかわいいとかそんなのばかりだった。ただ時々友人の話は聞いた。父さんだったり、カルタさんだったり、ミネアや母さん他にも色々な人たちの。そのどれもが楽しげだった。
「えぇ、それにすぐに女性を追いかけ回す」
「ほんとに・・・話を聞くだけで頭が痛くなってましたけど」
二人で苦笑いを浮かべて肩を落とす。おっさんはやっぱりおっさんだったことに改めて頭を痛める今日この頃。
「ところで、君たちはダンジョンの踏破報酬が支給されたんだろう?僕たちの知ることができるのは踏破の完了とそのメンバーだけ。そこで得たものは知らないんだ。いったい何が取れたんだい?それにモンスターは?」
「あぁ、知りたいの?あなたもギルドマスターだから聞くのは責務からだろうけど、あまりお勧めはしないわね・・・モンスターに関してもね」
ギルドマスターの言葉にミネアが疲れたような表情で答える。うーん、僕にはあまり価値がわからないからどうしてそんな顔をしているのか判断がつかない。凄そうな名前だけども。
「・・・一応鑑定はしてみたいね。出してもらっても大丈夫かい?そこの机の上でいいから」
「問題ないですよ」
そう言って僕はポケットホールから報酬として貰ったものを取り出す。
それは白を基調とした赤であしらわれた鎧に、まるで龍の手を彷彿とさせる荒々しさのある籠手。赤と青を金と銀でそれぞれ装飾した扇子と透明に澄む石。その四つを出すとギルドマスターの頬がひきつる。




