始まりそうで始まらない
「別に冒険者じゃなくてもいいんですけど、やっぱり世界を見てみたいと思いまして」
「なるほどな、平和な国も多くなってきた。ならばあとは力をつけるだけか・・・・ふむ、ならば選択肢は三つだ」
僕の言葉を聞いて指を三本立てて見せる父さんの顔には意地の悪い笑みが浮かんでいた。
「一つは時を待ち冒険者となること、それは試験やら資格やら多くの物が必要になる。二つ目は私たちに庇護されたうえで他国を旅行すること、これが一番簡単だな。最後の一つは・・・・ここ、中央大陸一の学園を卒業する」
「えー、どれも時間がかかりすぎます。もう少しなんとかなりませんか?」
「いや、うーん、これ以上はちょっと厳しいかな息子よ。お前に危険なことをさせたくないのはわかるだろう?」
さすがにこれだけ家族から愛されているのは重々承知のうえなので僕は頷く。ただ、めっちゃ時間かかるしせめて成人と認められる13までには旅に出たい。
(あの神様の話もあるし、てかめちゃくちゃ無理難題だよあんなの!チートも全然使えないからほんとかわかんないし!)
「それはわかっているのですが・・・・」
「よし!ならファン、お前の才能を見せてほしい。これから13までの間私のほうで優秀なものを雇い家庭教師となってもらう、二年後からは初等学園に行くことになるのだからそれと合わせてその者に全てを教えてもらえ、そして認可を得ることが条件だ」
この世界は文化の水準が高い。それこそ魔法だけでなく、科学についてもそのレベルは魔法に劣るが存在する。識字への理解も深く教養に力をいれる国は多い。だから国の補助で幼いときから学校へ行ける。義務ではないが、この国では貴族制度がなくなって久しく、子供の社交性を高めるために行かせるのが通例となっている。しかし学校といっても校舎も立派ではなく寺子屋という表現のほうが近いかもしれない、教育体系についてはやや未熟であるといった感じだ。裕福であれば家庭教師をつけることがある。
「わかりました、それで許してくれるなら僕はがんばるだけです」
「よし、ならさっーーーー」
「そんな話は聞いていません!」
はい、今まで登場しないのがおかしいくらい出てこなかった母さんとその後ろに控えるミネア。ドア壊すってどんな力をしてるのさ母さん。