表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

行け!鉄仮面ライダー

作者: Hicalin

「また、子供が2人さらわれたのよ!!」

「アンタ、どうにかしなさいよ!!それでも、ヒーローなの!!!」


「いやー、そいつら知らないしぃ…」

「なぁーにぃ、バァッカァなこと言っているの!!!」


とある喫茶店の光景。

デーブルを「バンッ!」と叩き、女性が詰問している。


こんなに怒られているのに、気だるそうに聞いている人物、こいつが「ヒーロー」である。

一応、特殊能力を持っていて、変身が出来るらしい。


ただ難点、「やる気」がない。

無気力のかたまり。


そして、この責めている人物が、この物語の「ヒロイン」といったところか。

カノジョのような、幼馴染みのような関係。


距離が近い関係だからこそ、ズバズバ言われる始末。

しかし、「ヒーロー」にとっては、ハタ迷惑と言ったところ。


ちなみに、喫茶店のマスターは、いつもことだというように、自分の作業をしている。

そう、ここは「アジト」でもある。



最近、子供・老人など、何者かにさらわれる事件が頻発している。

これは、「悪の組織」というものがあり、そこから来た戦闘員の仕業、というのが大方の意見。

「弱い存在」が狙われている、というのは明白である。


マスターの情報によれば、最近、その場所を突き止めたというところだった。


と、ゆうことは・・・


さぁ、「ヒーロー」の出番だ!

行け!我らのヒーロー!!


・・・

あれ…?


「いやー、怖くねー、悪の組織なんて」

「力が出せたのは、自分が危なかったからであって、人助けで力出せるとは思えねぇし、分かんねぇし。」


椅子の背もたれに、寄りかかった。


これが、冒頭の会話に戻るのだ。


「なんでぇ、行・か・な・い・のー!!!!!」


怒りで、声が震えている。

はいはい、そうなりますよね、という顔で彼女を見た。


「この前、近所のエリちゃん助けたじゃない!なんで、その力、もっと使えないの!」

「あなたは、特別な存在なのよ!!」


「いやー、あれは、そのー、エリちゃんのお母さんって、すっげー美人じゃん。」

「だから、つい、力が出ちゃったんじゃない(笑)」


「ふざけないでぇーー!!」


もはや、夫婦漫才である。


「いい?」

まっすぐ見つめて言う。


「あなたは、世界を救える力があるのよ。」

「私だけじゃない、この街みんなが、あなたがきっと、この街を救ってくれると思ってるんだから!!」


「そう言われてもさー・・・」

彼女の真剣な眼差しに、ついつい言葉を選んでしまいそうになる。


「ほら、例えばさー、ヒーローものってさぁ、2号とか、なんとかスリーとか、そうゆう登場人物が出てくるじゃん。」


「でさー、大体、そっちの方に行くにつれて、強くなったり、能力が高くなってくるじゃん。」


「だからさー、そいつら出てくるの待ってさぁー、そいつらにお願いすれ・・・」


パンッ!!!


風船が割れた音ではない。

頬と、手で、立てた音である。


(でたーーー!!)

(平手打ち、クリーンヒット!!)


「えっーーーー!!!!」

赤く腫れた頬に手を当てながら、そんな表情と声をあげた。


たまたま窓の外で、カップルが通りかかった。


突然のシーンを目撃して驚いていたが、ニヤッとし始め、

「そっちは、もうお別れですか??」

そんな視線を送っていた。


別れ話と勘違いされたらしい。


話はもとい。

当然の怒りがこみ上げてくる。


「オイッ!何すんだよ!!」

「キッ!」と睨み返した。


「俺だって、こんな力!!」

「好きで持ったん、じゃないん…だ…よ…」


語尾が段々弱くなる。

胸が締めつけられた。

急に悲しくなった。


泣いているのだ。

彼女の方が、である。


でも、目は「キッ!」としたままである。


「なんで…、」

「ねぇ、なんで!」


「なんで、こんなヤツが『ヒーロー』になったのよ!!」

「私、許さないから!!ゼッタイに許さないから!!!」


そう言うと、出口に走り出していた。


少し荒っぽくドアを開け閉めし、外へ出て行った。


ドアベルは、「カランコロン♪」となるやつだ。

当然だが、今は、不快な音にしか聞こえない。


店内に、他のお客さんがいなくてよかった。

これは、マスターも同意だろう。



数分経った頃だろう。


「キャーーーーーーー!!!」


女性の悲鳴が聞こえた。

ていうか、彼女の声だ。


(あーあ、やっぱりこうゆう展開ね…)

「ヒーロー」は、何か悟っていた。


「い、急がなくて、いいのか??」

「いや、以前もこうやって、わざと問題起こして、ヤツは俺をダシに使おうとするんスよ。」


「あーあ、ヒーローってほんと、大変ですねー。」

自嘲気味である。


「まぁ、今、視聴率上がっていると思うんで…、それじゃー」

と、ドアを出る。


って、


おい…、


本当に襲われてるじゃん!!!


「悪の組織」の者か?

黒いタイツを着た戦闘員が、4~5人、彼女を囲っている。


さすがに、急な展開に戸惑う。

しかし、やはり、「変身」しなければいけないか。


ポーズを構える。


「あっ!!」


驚いたのは、戦闘員の方である。

なぜ、急に声を出す。


「ごめん、変身ベルト…」

「忘れちゃった…」


さすがに、相当バツが悪い表情をした。

お茶の間も、ひっくり返っただろう。


「最低!最低!サイテー!!!」

「もぅ!本当、死んじゃえばいい!!!」


彼女が怒るのは無理もない。

しかし、追い打ちをかけるな・・・


俺も辛いんだ…。

そんな視線を彼女に送った。


さぁ、どうするんだ?

そう言いたげな態度で、戦闘員の2人が近づいて来た。


こいつら、生身の人間な状態で勝てる相手か?

そんな思いが頭をよぎる。


確かに、組織の下っ端のような奴らだから、弱いに決まっている。


だが、

だが、


俺も、弱い。

生身なら….。


一旦、カメラ目線に向ける。

これは、何カメだろうか。


「取り敢えずCMってないの?」

「ここで、次回予告!、ってなるとか」


嘘だ。

冗談だ。


そんなものは、ない。

ただ、気休めである。


「ナニ、言ってやがる!!」

相手は、そう喋る代わりに、距離を近づけてきた。


(ピンチ、ピンチ、ピーンチ!!)


嫌でも、緊張感が高まるシーン。

鼓動も速くなる。


しかし、作者である私は、天から見守るだけ。

余裕である…


が、


「おい、この野郎!何とかしろよ!!」

いきなり天上に向かって叫んだ。


な、なにぃ…

この物語では、"神"の存在である私にまで、助けを求めるとは…


この男、そこまで堕ちたか…


ならば仕方がない。

物語を大きく変えようではないか。


おっと、その前に、言っとかなければなるまい。

下界に目を向ける。


「ちょっと、おぬし。私と君は一応、住む世界が違う設定だからね!」

「こうゆうの、タブーって言うからね!」


忠告は、せねばなるまい。

読者様へのケジメでもある。


さて…

どうしようか…


あっ、そうだ!

「光の玉」を作ろう!!

精神を集中させた。


光の玉⇒⇒⇒『  』

(このスペースに、光を入れた。)


「よし、今から、この『光の玉』を降ろすから、これを使え!」

下界に言い放った。


(ああー、もう、シナリオも糞も無い状態・・・)


「ええぃ、もう、どうにでもなれ!!」

「それーー!」と、下界に投げた。


「いいぞ、いいぞ、行って来い!」

『光の玉』の行き先を、静かに見守る。


「!!!」

「そっち、じゃない...!!」



場所が変わって、ここは下界。


上で、そんなことがあったとは、つゆ知らず。

いまだ、ヒーローと戦闘員との睨み合いが続いている。


ヒロインも捕まったままである。

膠着状態が続く・・・


そんなところに、眩しい光が!!


「うぁ!な、なんだ、この光!!」

「あ、危ない!!」


「ドッカーン!」と、眩しい光と共に爆発した。

皆は吹っ飛んだ。


白煙が上がる。

そして、煙い。


ゲホ、ゲホ、と言いながら、辺りを見る。

白い煙は次第に収まり、やがて黒い影が見えた。


「そ、そんな、力があったのねぇ…」


彼女の姿だった。

彼女が見る。


「もー、アンタなんか、絶対、絶対、頼らないからー!!!」


覚醒したのは、彼女の方だった。

戦闘員たちは、まだ倒れている。


酷いなぁ、この小説・・・


-完-

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] やる気のないヒーローと彼女との夫婦漫才笑えました。 [気になる点] このタイトルだと二次創作と誤解されてしまうのではないでしょうか? [一言] あまりやらない方がいいのは分かっているのです…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ