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エピローグ

 先輩の墓前で、ようやく俺は報告することができた。先輩の恩人を殺した人物、そして先輩自身を殺した人物の正体を突き止め、捕まえることができたと。

 全ては半年以上も前に、先輩と出会ったあの日に始まっていたことだった……。犯罪組織ジェネラルと戦い続けていた夢幻博士と不死原聖龍。その二人ともが殺され、探求パズルを捜し求めていた的外のもとに姿を現してしまった先輩……俺を助けるために。

 それからしばらくして、先輩が出版した本を見て不死原聖龍が生きていると勘違いして動き出す的外。水戸先生と共にそのチャンスを狙っていた先輩だったが、あと一歩で正体をつかめるところで殺されてしまう。

 だがまたもパズルを手に入れられなかった的外。そして双生兄弟の事件で、俺の手にパズルがあることを知る……。そして俺との対決……。

 不死原聖龍、白神先輩、そして俺……。三人の人間に受けつがれた意志がようやく実を結んだのだ。

「何しけた顔してんのよ、ナイト?」

 レオナと舞がやってくる、手には墓に備える花を持って。

「レオナ……舞……」

「あんた、もしかしてまだ気にしてんじゃないでしょうね? 自分のせいで白神ユリアが殺されたとか?」

「……ありがとな」

「えっ?」

「前にお前がそれを否定してくれた時、嬉しかったぜ。誰かにそう言ってもらえなきゃ、俺今頃は……罪の意識で潰されてたかもしれない」

「別に……正しい答えを教えてあげただけでしょ? 慰めたわけでも嘘を言ったわけでもないんだから、お礼なんて言われる筋合いないわよ」

「ははっ、そうだな」

 悪態をつくレオナだが、その胸の内はやっぱり俺のことを元気付けてくれようとしているのがわかる。なんだかんだ言いながら……レオナは優しい奴なのだ。

 舞が墓に花を添える。俺はそれを見て、先輩の墓に話しかける

「先輩……本当は……こいつも今日返そうかって思ってたんですけど、返さなくていいんですよね?」

 俺は探求パズルを取り出す。

「先輩が俺にこいつを託したのは……先輩の無念を晴らすためだけじゃなくて、先輩の意志を受け継いでいって欲しかったからですよね? これからも人の力だけでは解決できないような事件が起こった時……このパズルの力を役立てる」

 そうだ……そのために俺は今生きている。ドリームランドの事件で一度死にかけて、的外に二度も殺されかけて、尚も生きていられるのは……そのため。

「そうね、その通りよ、ナイト。それが正解。パズルの代わりに私が答えてあげる」

 レオナのお墨付きをもらう。

「そういうわけでナイト、今日からあんたも夢幻探偵社に入れてあげる。一応私の命を救った人物っていうことで、入社と同時に名誉社員にしてあげるから」

「い、いや、それは別にいい……」

「遠慮しないでよ。なんなら情報調査部部長にしてあげてもいいから、時田の代わりに」

 それは時田さんがまたキレる原因になりそうなのでいい……。

「お、俺は部長とか興味ないからさ、まだ学生だし……」

「そんなこの私が推薦してあげるって言ってるんだからさ!」

「レオナ様は流石騎士、あなたともっと仲良くなりたいと言ってるのよ。だから申し出を受けなさい」

「は?」

「な、な、な、な、何言ってんのよ、舞!? 誰もそんなこと言ってないでしょ!?」

「ですがレオナ様は昨日……」

「わー、わー、わー、わー!!!!!! だだだだ、だから、昨日はまあナイトのことちょっとは見直したとか、助けてくれた時はカッコよく見えたかもとか、そんなことは言ったけど……って、何言わせんのよ、バカー!!!!!!!」

「ぐぼはああああああ!!!!」

 何故か俺が殴られることに……。っていうか、その本音をすぐ口に出す癖を直した方がいいと思うぞ、お互いのために……。

「な、ならさ……二人とも同じ高校なんだし、俺の部に入るってのはどうだ?」

「「えっ?」」

「パズル研究会。先輩がいなくなっちゃって、俺一人なんだ、部員が」

「知ってるけど、何する部なのよ、あれって?」

「まあ俺もよく知らないんだけど、何でもいいんじゃないか? 極端な話、何か事件が起きれば俺たち三人で調べる部でもいいと思う。このパズルがあるんだから」

 その名の通り、パズルを研究する部でなくてもいいと思う。水平思考パズルの力を役立てるような活動内容でも、きっと先輩は許してくれるはずだ。

「どうかな?」

「ま、まあいいけど、あんたが入部して欲しいって頼み込むなら」

 レオナはまだ真っ赤なままの顔を背けてそう言う。

「舞は?」

「……別に」

「それはどっちなんだよ?」

「レオナ様が入るなら構わない」

「あっそ……」

 どっちかって言うと俺はレオナよりこいつの方が苦手かもしれない。何考えてるか読めないし。まあこれから打ち解けていけばいいか。

「じゃ、決まりだな。パズル研究会、部員三人で新たなスタートだ」

「私も入りますぞおおおおおおおおおおおお!」

「ぬわああああああああ!」

 そばの茂みから飛び出してくる時田さん。いつから隠れていたんだよ……?

「な、何ですか、時田さん……?」

「レオナ様とプライベートでも仲良くなど、この私が許しません! 私も部員となって、貴様を監視させてもらう!」

 いかん、またちょっとキレかけてる……。

「あ、あの、時田さんはうちの生徒じゃないし……」

「それを狙って貴様、我が探偵社の部長の座を蹴って学校の部活でいちゃつこうと!? なんという知能犯! おのれえええええ!」

 ライフルを取り出す時田さん。げっ、まさか本物!? 屋敷で見たエアガンじゃなくて的外に使った実弾……!?

「いやいやいやいや、シャレになってないですって、時田さん!」

「問答無用!」

 俺はすぐに逃げ出すも、撃ちながら追い回してくる時田さん。

「全く、時田ってば……」

「レオナ様、やはり別の部長をそろそろ人選した方がよいのでは?」

「そうね……」

 逃げる俺と追い回す時田さんを見ながら、頭をかかえてやれやれと呟くレオナ。俺が生命の危険に曝されているのを見ても相変わらず興味なさそうな舞。そして必死で逃げ続ける俺。

 こんな三人で結成された新パズル研究会の活動が明日から始まる。どんな事件に出くわすか、どんな事件でも必ず解決してみせるさ。三人の頭脳と、この探求パズルの力さえあれば……。

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