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脱、現実。

初投稿でふ。至らぬばかりですが、誤字脱字、文章構成など「なってねぇな!!」と感じられたところがございましたら伝えてくださると光栄です。


ツインテールの片方くってサイドテールにしてぇ

現在のライトノベルやアニメを見て分かる通り、異世界に行くのが流行りだ。突拍子も無い話だが、俺も無理矢理でも異世界へと乗り込もうと企てている。というかほぼ絶対行ってみせる。


異世界……格好いい言葉だ。なんかこう…心の奥底の何かが燻ぶる感じがする。下手すれば突然、古代の聖剣の名前を叫びたくなったりする魅力的な魔力さえも感じる。


更に、この異世界へ行くとダメでオタクでモテないヤツでも強くて優しく逞しい男になり、そして美女達とのハーレム生活というおまけ付きというハッピーセットな人生が歩めるという夢と希望のユートピアなのだそうだ。


行きたい。実に行きたい。異世界にさえ行ければなんか凄い能力的な何かを授かって、無双して、気がつけばハーレム生活が送れるのだ。この俺も例外では無いだろう。そう考えるとやはり、是が非でも行ってみたい。


このように薄汚れた煩悩を抱え、日々を悶々と過ごしているのは俺だけではない筈だ。しかしこんな燻った煩悩を放置するのは身体に毒となる。事実、異世界への憧れから高校の授業中に「エタノール・ショウドク・ブリザード」やらなんやらの文字通りブリザード級にサムい言葉を腹から発声しそうになっている。くっそイタいポーズ付きで。流石に16歳の男が中二病というのは笑えない。笑うのは周りの子達だけだ。…周りにすら笑われない気もするが本題から脱線するので切り上げる。


異世界へ行きたいと言っているが、俺は学校でいじめられてる訳では無い。…「エタノール」のくだりを実際にやっていればいじめられっ子になっていただろうがそこまで中二病パワーが蓄積されていなかったのと、理性によるストッパーによって防がれていたので我が学生生活は守られた。


異世界に行く系のゲームやラノベでは大抵主人公は何かしら重たい設定があるらしい。例えば先程挙げた、いじめ、家庭環境、そして生まれ持った異世界適性などだ。我が家族は母親、父親、そして生意気なガキの弟がいる平均的な収入の上で成り立つ家庭だ。無論、そんな平凡な家庭に生まれた人間に非凡な能力が授かる訳もない。つまりここまで異世界フラグを一つも立てることなく生きてきたのだ。ただ、普通に。


何の刺激も無く、目標も無く、のうのうと日々突き付けられる変わらない、そして写り映えしない日常を必死にひょこひょこ飛び越えて行くだけの人生に嫌気とまではいかないが「飽き」が来ているのは確かだ。だがそれだけじゃない。俺自身薄々気が付いている恐怖感から、ただ逃げ出したいだけなのかもしれない。


このまま成人となり、今と変わらないような生活を送る恐怖感。いや、それすらも叶わずに親のすねを齧るという可能性に対する不安感。そして何よりも何一つ生きていた証を残せず一人の「モブキャラ」として一生を終えることとなる将来への失望感。単なるワガママだが、俺は嫌だ。折角、こうして「俺」として生まれたのだから「モブキャラ」としてこの人生を終わらせたくない。折角ならば、ドカンと生きてみたい。


そんなことを考えている間に舞い込んできたのが「高校生集団失踪事件」、別名「現代版神隠し」だった。初めは、夜遊びを繰り返すキャピキャピ(笑)したギャルや近寄り難い、むしろ近づきたくないような強面のヤンキー達が居なくなるという東京の行方不明事件だったのだが、いつの間にやら行方不明になる人間のストライクゾーンが広がっていく怪事件にまで発達してしまっていた。


気がつけばつい先日まで話をしていた友人が消え、東京のみだった事件の舞台が群馬や千葉にまで広がりを見せるなんて事態になっていた。学校では部活動の中止、今俺が住んでいる東京都ではお巡りさんが朝でも深夜でも徘徊させられている。可哀想だ。こうして、少しずつ俺達の日常に浸透し始めた神隠しは遂に俺の友達すら丸呑みにしてしまった。


九重 悠。俺の親友。三日前、変な中二病チックなメールを残して消えた、俺の大事な親友。おとなしいが面白く、俺が一度も貰ったことのないバレンタインチョコという神具を手にした事もあるやつだ。そんな奴から

「おれ、異世界救いにいく。もどらない。周りに宜しく。」

という頭がハッピーになったようなメールが送られて来た挙句、実際に行方不明になってしまったら、どんなバカでもタチの悪い冗談ではないことくらい分かるだろう。


つまり、今現在行われている「現代版神隠し」にあえば少なからず異世界へ行ける希望があるわけだ。そうとなれば実践するしかない。噛み付いてでも異世界へ行ってやる。そんでもって俺TUEEEEやってハーレムつくって、

このアインシュタインもびっくりの事実を教えてくれなかった悠の奴をゲラゲラ笑ってやるのだ。悠、覚えとけよ。


そして今日、作戦を実行する時が来た。予定時刻は2時半。ちょうど今だ。神隠しは大抵深夜遅く、特に外をウロウロしている「高校生」が狙われる。何故高校生なのかなんて知ったこっちゃないが、これは好都合だった。理由なんて神様がJK好きの変態だったくらいしか思いつかない。大事なのは俺が高校生だという事実だ。二、三日に一人神隠しにあっているので上手く行けばサクッと神隠しにあうだろう。


という訳で、パジャマのまま家の前の道路にスマートフォン片手にやってきた。もし異世界へ行けなくとも神隠しの正体を激写してTwitterで拡散してやる。無論腹いせにだ。…周りに気をやると深夜のしんとした静寂に時折聞こえる車の音が少し不気味だ。だが、外で夜遊びなんてしたことが無かった為、何故か少し新鮮に感じてしまった。不思議な感じがするのだ。具体的に言えば、周りから全く生気を感じないような、地球に居るはずなのに切り離されてしまったような…そんな感覚だ。同じ夜でも8時と2時半の格の違いを味わされた気分だ。我ながら情けない。


しかし、そんな新鮮味も数十分で消え失せてしまった。むしろ数十分何もしないでぼーっと出来ただけ凄い。寿命を無駄遣いした気分だが。仕方無いのでスマートフォンでパズルでドラゴンなゲームをやろうとするが、なぜかロック画面が表示されない。バッテリー切れか?いや、まさか。60%以上あるバッテリーがすっ飛ぶわけが無い。急いでモバイルバッテリーを取り出すが全く反応が無い。…絶句だ。家から出る直前まで充電していたバッテリー残量が一瞬で翔華してしまっている。これは間違いない。今現在、自宅前が電力を吸い取るホラースポットに進化したか、神隠しのような超常現象が起きようとしている、この二択だ。


これってかなりやばくない?もしかして家に帰ったほうがいいか?そんなことを土壇場で考え始めた自分の思考回路をショートさせたい。ここまで来たなら引き返す訳には行かない。しかし何故だ?神隠しにあうときバッテリーが切れたりするなら、なんで悠はメールを送れたんだ?おかしい。ついでに言うと怖い。こんな無駄なことを考えるだけでも時間は勝手に進んでくれるのが今の心の支えだ。そしてその心の中で「このまま朝になってしまえばいい」と考え始めたので、この自分のピュアハートを叩き割ってしまいたい。





3時。本格的な闇が俺を包む。心做しからか車の音すら聞こえなくなってしまった。今からでも帰るのは遅く無いだろう。そもそも異世界へ行けると限った訳では無いだろう。ただ悠が怪しいクスリを飲んでハッピーになって飛び出していっただけかも知れない。…それはそれでヤバいか。クソッ、華の金曜日の夜を馬鹿なことに使ってしまった。これだけ時間があれば結構ゲームが出来たはずだ。そうと決まればさっさと帰る。なぁーにが引き返す訳には行かない(キリッ だ馬鹿野郎。んなもん死ぬより数万倍マシだ。





4時。おかしい。ひたすらにおかしい。なんで走っても走っても自宅に近付かない!?今の状況を説明するならば、自宅の目の前でルームランナーに乗って全力疾走しているようなものだ。口からは吐息が漏れ、全身からかく汗がパジャマに染み込む。疲労が足にへばりつく。足が棒になるなんてもんじゃない。足と岩が引っ付いたみたいだ。しかし、目の前の景色は数ミリすらも変わらない。だが、それでも走ることは止められなかった。止まってしまえばそこで、この世界から引きずり出されてしまう気がしたから。


違う。明らかに違う。俺の知っている異世界への行き方ではない。俺の知っている異世界への行き方は、もっとゲームチックで、神様が出てきて、自分で自分をリメイクしたりするものだと思っていた。この導入方法は明らかに「ら○ん」とか「リ○グ」とかだろ!どうせ白い服の黒髪お姉さんが来るんだろ!きっと来るんだろ!


…俺はやっぱり馬鹿だった。何をやっても中途半端で、消える時まで中途半端なんて、馬鹿丸出しだ。せめて書き置きくらい残して置くべきだった。今になって考えると、俺は何の刺激も無い日常に「神隠し」に会おうとするという非日常的なスリルを体験がしたかっただけだったのかも知れない。そう、ただパサパサに乾き切った日常に潤いを与えたかっただけ。…やっぱり馬鹿丸出しなぁ、俺。こんなしょうもないことで神隠しにあうなんて。





4時36分。ようやく「走る事」を諦めた少年の身体は、アスファルトの道路の中に吸い込まれる様に消え去った。ゆっくりと、されど水の中に落ちたように、真っ直ぐと。アスファルトの海に沈みながら、疲労困憊を露にし恐怖しながらも、何処か決意をした表情という滑稽な少年の顔を確認出来た者は誰一人として居ない。


タールのような夜の中、アスファルトに綺麗な円い波紋が生まれた頃、辺りには、画面の割れたスマートフォンと傷の付いたモバイルバッテリーだけが転がっていた。



他の方の作品を見ると自信がガッツリ持ってかれましたが大丈夫です。ギャグセンスを街ゆく人々から吸い取る能力者になりたいです。それか、美少女が空から湧く能力者になりたいです。


\おれがサイドテールだ!/

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