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十三月の物語

四月の迷子

作者: アルト
掲載日:2015/04/01

 四月は何かと迷う。

 新年度の始まり。

 新作ゲームの発売。

 冬の冷気を耐え抜いた草花の芽吹き。

 さまざまなものに目を奪われる。

 だから迷うのだ。


 肌を潤すような陽気が降り注ぎ、草木が新緑の若葉を躍らせる。

 花が咲き、蝶が舞う。

 それに目を奪われ、歩くうちに道に迷う。

 這々の体で見覚えのある場所に出れば、気を抜いてまた迷う。

 歩き回って方向感覚を失念し、挙句は警察に不審者と間違えられて職質される始末。

 意地を張って迷子では断じてない、そう言い張る。

 そして迷いながら歩く。


 しかしながら、迷うことで見つけたものもある。

 日頃のストレスの溜まる迷いとは違う迷い。

 長閑で静かで温かい春の日。

 空にかかる真っ白な雲。

 いろいろと見つけながら歩く。

 そして気づけば全く人気のない場所に……。

 迷子ではない。方向音痴でない。

 ないったらない。絶対にない……って言えない。


 ふと気づけば、黒い猫がいる。

 よく見慣れた黒猫だ。

 ついてゆこう。

 これで迷子ではなくなるだろう。


 その黒猫はときおり振り返り、まるで道案内をしてくれているようだ。

 距離が開けば立ち止まり、曲がり角で立ち止まり、細い路地で立ち止まり。

 そうして見慣れた我が家にたどり着いた。

 いい経験だった。


 そのとき見た物は後年、拙文を書く際に役立っている。

 つまりあれは迷子でなく散歩だったんだよ。

 そうなんだよ。断じて迷子ではなかったんだよ。そうに違いないんだ。


 人が本当に迷うのは進む道を決めた時じゃないんだろうか?

 本当にその道が正しかったのか、このまま進んで自分の求めるものはあるのか。

 そういうことで迷うんじゃなかろうか。

 迷うなら迷えばいいだろう。

 だって、迷ったからこそ今の自分があるのだから。

 迷子になって迷えば迷うほどに、さまざまなものが目に入って視野を広げてくれるのだ。


 だから迷うなら四月がいい。

 なにしろ、いろいろなものが新しいのだから。




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