雪の神様
童話を書いたのが初めてなので少し変な感じがするかもしれませんが暖かい心で読んでやってください。
「今日は天気が良いよ。ヨウ」
「今日は少し暖かいね。ユウ」
「ヨウ。雪が積もったよ」
「ユウ。雪は真っ白なんだよね」
「真っ白で美味しそうなんだよ」
「美味しそうでも雪は食べられないよ」
僕の双子の弟のヨウは生まれつき目がみえないんだ。
最近お母さんがヨウに「ごめんね」って謝るんだ。
そうしたらヨウが「どうして謝るの?」って聞くんだ。
それ聞いてお母さん、泣きそうになるんだ。
僕はそれを見ているだけなんだ。
何もできないんだ。
「ユウ。雪を触ってみたいな」
「雪はすごく冷たいよ?」
「でも、触ってみたい」
「じゃあちょっと待ってて」
僕は小さなボウルを持って外に出たんだ。
そのボウルに雪をいっぱいいれたんだ。
「ヨウ。雪を持ってきたよ」
僕はヨウにボウルを渡した。
「わぁ……すごく冷たいね」
ヨウは楽しそうに笑っていた。
「でもすぐ溶けちゃうね」
「雪はすぐ溶けちゃうんだよ」
「どうして雪は降るの?」
「お母さんが“雪の神様”が雪を降らせるんだよって言ってたよ」
「どうして降らせるの?」
「それは冬になると木についてる葉っぱが落ちてなにも無くなって木が可哀想だから雪を降らせて雪のお花を咲かせてあげるんだって」
「“雪の神様”は優しいね」
「そうだね。優しいね」
「……早く誕生日にならないかな」
「そうだね」
ヨウは8歳の誕生日の日、初めて外に出られるんだ。
僕と一緒ならどこにでも行けるようになるんだ。
そして待ちに待った誕生日の朝。
お母さんが「あまり遠くに行っちゃ駄目だよ」とか「ユウはヨウのことちゃんと守ってあげるんだよ」とか、すごく心配してた。
だから僕は「大丈夫だよ。僕に任せて」って言ったんだ。
「じゃあお母さん。行ってくるよ」
「気をつけてね」
僕は視覚以外の感覚だけで歩くヨウの手をしっかり握って家からどんどん離れて行った。
「ユウ。外はこんなにも寒いんだね」
「そうだよ。大丈夫?」
「うん。ユウと手を握ってるからあったかい」
僕たちは少し歩いて近くの公園で休憩することにした。
するとヨウが楽しそうにこう言ったんだ。
「あのね噂で聞いたんだけどね、雪の降る三日月の夜、山奥にある小さな祠に雪ウサギを作って持って行くと願いが叶うんだって」
「本当に叶うの?」
「わからない。噂だからね」
「ヨウは何をお願いするの?」
「僕はユウとずっと一緒にいられますようにって」
「ありがとう。ヨウ。僕も同じだよ」
ヨウはわざと目のことを言わなかったんだ。
僕が気にするから。心配しちゃうから。
「ヨウ! 今からその祠を探しに行こうよ!」
「えっ……でも、あまり遠くに行ったらお母さんに怒られちゃうよ?」
「すぐ家に帰れば大丈夫だよ! 行こう?」
「……うん!」
その日初めて僕たちはお母さんの言うことを聞かなかった。
でも、すごく楽しかった。
ヨウと一緒に無我夢中で祠を探しまわった。
「ヨウ、見つからないね」
「うん。見つからないね」
「もう帰ろうか」
「そうだね」
僕たちは諦めて帰ることにした。
ヨウは疲れたのか、すぐに寝てた。
その時僕は決めたんだ。
一度でいいからヨウに雪を見せてあげたい。
だから僕は…………。
雪の降る三日月の夜。
お母さんたちが寝たあと僕はこっそり家を抜け出したんだ。
遠くまで走って走って、祠を探して探して僕は疲れていた。
どこまで走っても、探しても祠は見つからなかった。
「……やっぱり噂かあ……」
「本当にあればな……」
「……お願い、ヨウの目を……」
僕はだんだん悲しくなってきた。いつの間にか泣いちゃってた。
祠が無いのにお願いごとを呟いてた。
そうしたらいきなり目の前が明るくなって祠が現れたんだ。
僕はびっくりしちゃって声がでなかった。
「ほ、本当にあった……!」
「あっ! 雪ウサギ作らないと!」
僕は急いで雪ウサギを作った。雪が冷たくて手が痛くなった。
それができたら祠にお供えしてお願いごとをいったんだ。
そうしたら…………。
「お願いします! ヨウの目が見えるようにしてください!」
その瞬間また目の前が明るくなって“男の子”が現れたんだ。
「そのお願いでいいの?」
「うああ!! 君は誰!?」
「そんなに驚かなくてもいいじゃないか」
「それに僕が誰だって君には関係のない話だ。ところで本当にそのお願いでいいの? 君のためにはならないよ?」
「あっ、えと……それでもいいんだ!! ヨウが嬉しいなら僕だって嬉しいから!!」
「そう……でも簡単には叶えてあげられないんだ」
「どうすればいいの?」
「君の目をその子にあげるんだ」
「えっ!?」
「その子にあげれば君は目がみえなくなる。それでもいいの?」
「……それでもいい! ヨウの目を……」
「わかった」
“その子”は僕に何か魔法みたいなものもかけた。
次に僕に向かってこう言ったんだ。
「これで君は明日の朝、目覚めると目がみえなくなってるはずだ。その代わりに君が言うヨウくんは目が見えるようになる」
「ほ、本当に!? ありがとう!!」
「……早く帰った方がいいよ。山奥には狼が出るから」
「うん! 本当にありがとう!!」
最後にみた“あの子”の顔はどこか悲しそうな顔をしていた。
朝、目覚めると目が見えなくなっていた。
**********
「ユウ! 目が! 目が見えるようになったよ!!」
僕は朝起きてすぐ双子の兄、ユウの所に走って行った。
だけどユウは僕の方を見てくれなかったんだ。
「本当!? 良かったね! ヨウ!」
「ユウ……僕の方ちゃんと見て?」
「……見てるよ……」
「僕は今ユウの側にいるんだよ? そっちじゃないよ?」
ユウの見ている方向は部屋の入り口の方だったんだ。
それで、僕はこう思ったんだ。
「もしかして……目が見えないの?」
「…………」
「なんで? 僕のせい? 僕が見えるようになったから?」
「違うよ! ヨウのせいじゃないよ!」
「じゃあ、どうして?」
「それは……」
「教えてくれないの?」
「…………」
その日は目のことをお母さんに話しても信じてもらえなかったから僕はユウのフリして、ユウは僕のフリして過ごした。
それで、僕はこう思ったんだ。
このままじゃユウは目が見えなくなったままだ。僕と同じ思いをすることになる。
だから僕は…………。
次の雪の降る三日月の夜。
お母さんたちが寝たあと僕はこっそり家を抜け出したんだ。
遠くまで走って走って、祠を探して探して僕は疲れていた。
どこまで走っても、祠は見つからなかった。
「……うっ、見つからないよぉ~」
「うわーん! 僕のせいでユウの目があ!!」
「……お願い、ユウの目を……」
その時、目の前が明るくなって小さな祠が現れたんだ。
「ほっ祠だ! えっと……あっ! 雪ウサギ!」
僕は慌てて雪ウサギを作ったんだ。
それをお供えした瞬間、また目の前が明るくなって……。
「うわああああ!! おっ“男の子”がっ! い、いきなり!!」
「そんなに驚かなくてもいいじゃないか」
「君は誰!?」
「そんなの関係ないじゃないか。それよりお願いは?」
「あっ! ……その前に、ここにユウ……僕に似た子がこなかった?」
「来たよ」
「あっ! あのね!!」
「落ち着いて」
「う、うん……」
「…………」
「えっと……ユウ……その子に目を返したいんだ」
「どうして? せっかく目が見えるようになったのに?」
「うん……このままじゃあユウが僕と同じ思いをしちゃうから」
「返したら君はまた目が見えなくなるんだよ?」
「えっ! ……それでもいい……」
「本当に?」
「ユウに悲しい思いをしてもらいたくないんだ!!」
「……わかった」
“その子”は僕に魔法のようなものをかけた。
そしてこう言ったんだ。
「朝、起きたら君は目が見えなる。その代わり君が言うユウくんは目が見えるようになってる」
「本当!? ありがとう!!」
「あっ! ……ちなみに僕とユウ、どっちの目も見えるようにするのは……」
「無理」
「そう……でも、ありがとう!!」
「早く帰りな。狼が出るから」
「うん!!」
最後にみた“あの子”の顔はどこか呆れた顔をしていた。
朝、目覚めると目が見えなくなっていた。
**********
「……ヨウ……」
「あっユウ、おはよう」
「祠のある場所に行ったんだね……」
「それは……」
「ヨウのバカ!! どうして僕に目を返したの!?」
「だって、ユウに悲しい思いをしてもらいたくなかったから……」
「……僕ことなんか気にしなくていいのに……」
「えっ?ユウ、今なんて言ったの?」
「ヨウなんか知らない!!」
僕はそう言ってヨウの部屋を出た。
ヨウとけんかしちゃった……ヨウは嬉しくなかったのかな?
僕が悪かったのかな?
僕はまたヨウの目を見えるようにしてもらうために……。
祠のある場所に行った。
朝だし、三日月じゃないから祠はないかもしれないのに一生懸命走った。少し、粉雪が降っていた。
祠のある場所に行くと“あの男の子”がいた。
「えっと……ヨウ? あっ違う。ユウか。兄の方?」
「そうだけど……何で僕のこと知ってるの?」
「昨日、ヨウくんが来たよ」
「やっぱり!」
「で、今日は何しに来たの? だいたいわかるけど」
「あっ! またヨウの目が見えるようにしてもらいたいんだ」
「……君は間違ってると思うよ?」
「確かに、ヨウとけんかしちゃったけど……」
「そうじゃなくて。ヨウくんは君からまた目をもらって嬉しいのかな? ……ヨウくんだけ見えるようになって嬉しいのかな?」
「どういうこと?」
「喧嘩までして……ヨウくんは君を悲しませたくないんだよ」
「僕はヨウがよければそれで……」
「多分、ヨウくんも同じ気持ちだよ」
「…………」
「……ちょっと待ってて。今ヨウくん呼ぶから」
「えっ?」
そう言って“その子”は雪ウサギを作り始めたんだ。
**********
「ユウ……どこに行ったんだろ」
僕はユウとけんかしたことを後悔してた。
せっかくユウが僕のために頑張ってくれたのに……。
……ん? 何か窓の方から物音が……。
僕は触って確かめる。ひんやり冷たい雪の感触……。
「ってこれ、雪ウサギ!? ……なのかな?」
そうしたらいきなり声が聞こえたんだ。
ーヨウくん、今から僕についてきてほしいー
ー僕が君を背中に乗せて行くからー
「えっ?背中?」
ー僕の背中に手を置いて?ー
「うん……」
雪ウサギの背中に手を置くと僕は小さくなったんだと思う。多分だけど。
だって、今僕は雪ウサギの背中に乗っているから。多分だけど。
**********
「ねぇ。ヨウを呼ぶってどういうこと?」
「まあ、少し待ってて。もう少しで来るから」
「うん……」
“その子”は空をずっと眺めたままだった。
僕は“その子”が見ている方を見た。何も無かった。
するといきなり“その子”が、
「……来たよ」
「えっ? …………えっ? え……ええええ!?」
空から雪ウサギがやって来たんだ。……雪ウサギが動くんだよ!?
僕はびっくりしちゃって口があいたままになった。
「おかえり」
「え……雪ウサギって動くの?」
「これは僕の使者なんだ」
「へえ……って上に乗ってるのってヨウ!?」
「おお。見事に小さくなってるー」
「なってるーじゃなくて、何とかしてよ!!」
「まあ落ち着いて。今戻すから」
そう言って“その子”はヨウに魔法をかけた。
雪ウサギは消えて、ヨウはもとのサイズに戻った。
「えと……ユウ?いるの?」
「うん。いるよ。今ヨウ、雪ウサギに乗って来たんだよ」
「そうなんだ……びっくりした」
「さて……そろそろいいかな?」
「あ、うん。なんで僕を呼んだの?」
「ユウくんがまた君に目をあげようとしたんだ」
「え……いっ、いらないよ!!」
「ほら、こう言ってるよ?」
「でも、ヨウ! 色んなもの見てみたいでしょ? 雪を見てみたいでしょ?」
「この間見せてもらったからもういいよ。それに僕にあげたらユウの目が見えなくなっちゃうでしょ」
「僕はどうだっていいんだ!!」
「そんなことないよ!!」
「はい。というわけで僕に良い提案があるんだ」
「なに?」
「ユウくんの目をヨウくんに譲る」
「それじゃあユウが……」
「といっても片方の目だけを譲ることにする」
「そうしたらお互い片方みえないけど、もう片方の目は見えるようになる。生憎この魔法は物々交換じゃないと成立しないんだ。だからこの方法しかない」
「…………」
「それでもいいんなら魔法をかけるけど?」
「どうする? ヨウ」
「どうする? ユウ」
僕たちは少し考えてから“その子”にこういった。
「じゃあ、そうする」
「お互い見えてるなら片方見えなくてもいいや」
「あまり欲張り過ぎるのもよくないからね」
「じゃあ、魔法をかけるよ?」
「「うん」」
その瞬間、周りが光って僕たちは気を失った。
目がさめると僕たちは片方の目だけが見えない状況だった。
「目が覚めたみたいだね。早く帰った方が良いよ。お母さんに怒られちゃうよ?」
「あっ! そうだった! 何も言わないで出てきちゃったんだ!」
「早く帰ろう!」
「じゃあね。バイバイ」
「うん。バイバイ。ありがとう!!」
「あっ、最後に聞いて良い?」
「なに?」
「なんで僕たちに優しくしてくれたの?」
“その子”は目をそらしてこう言ったんだ。
「……暇潰しかな?……」
「「えっ」」
そう言って“その子”は消えちゃった。
最後にみた“その子”の顔はどこか嬉しそうな顔をしていた。
家に帰るとお母さんにこっぴどくしかられた。
僕たちは一生懸命今まで起きた不思議な出来事について話した。だけど信じてもらえなかった。
あっ、でも、目のことだけは何とか信じてくれたんだ。
あれから数日後。
僕たちはまたあの祠があった場所に行った。
「ねぇ。ユウ」
「なに? ヨウ」
「“あの子”は“雪の神様”だったのかな?」
「そうかもしれないね」
「……雪ってこんなにきれいだったんだね」
「そうだよ。ヨウ」
「そろそろ帰ろうか」
「うん……」
「やっぱり“雪の神様”は優しいね」
「そうだね。優しいね」
僕たちはあの祠のあった場所に雪ウサギを作って置いた。
こんどは“その子”が現れなかったけどこう祈ったんだ。
ーずっと二人で仲良く過ごせますようにー
って。“雪の神様”はちゃんと聞いてくれたかな?
至らない点が多々あったと思いますが最後まで読んで下さり有り難う御座いました。
もし、よろしければコメントなどお願いします。