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転生王子と星輝祭 後編

2014年クリスマス企画の後編です。

白虹の賢者編読後の閲覧を推奨します。




 城で脱力している筆頭達のことはつゆ知らず、その主は一人雪が積もった城下町を歩いていた。寒さから身を守る厚手のコートを着込み、ブーツで白い雪に足跡を残し、手には空になったバスケットを持って意気揚揚と城への帰り道だった。


「みんな喜んでくれてよかったー。」


 そうハーシェリクはご機嫌で独り言を呟く。


 そんな彼は今まで孤児院にいた。星輝祭は家族と過ごす祭日だが、孤児院に住む子供達は皆家族を失っっていたり、わけあって一緒に暮らせなかったりする者が多い。

 兄達から星輝祭の話を聞いた時、彼らは寂しく過ごすことになるのではとハーシェリクは思い至った。


 そこで彼はセシリーにお願いして、自分でも出来るケーキの作り方を教えてもらい、それを贈り物として届けようと考えた。

 セシリーが教えてくれたのは作るのも配るのも簡単なカップケーキ。だが一人で作るには中身は兎も角外見七歳児のハーシェリクはなかなか難しかった。しかしセシリーとすぐ側にいたアーリアとレネット、そしてユーテルも協力を申し出てくれた為、順調にカップケーキを作り、そして届けることが出来た。


 もちろんハーシェリクは孤児院の子供達だけでなく、家族達に配分も用意した。父はもちろん兄も姉も妃様達もみな喜んでくれた。


(星輝祭の贈り物としてはしょぼいけど、喜んでくれたからいいよね。)


 皆の笑顔を思い出すと、ハーシェリクも自然と笑顔になる。


 ハーシェリクは王子だが自分の自由になるお金はほとんどない。まだ子供だということと、年長の兄達のように働いていないからだ。

 だが王子という立場で命令をすれば、もっと豪華な贈り物を用意できたとは思う。


(それじゃだめなんだよね。)


 それで手に入れた贈り物は国民の血税なのだ。それで価値ある物を手に入れて送ったとしても、なにか違う気がした。

 ただ突き詰めれば、今回用意したカップケーキの材料も税金であることは変わりない。

 税金で作ったケーキを贈って、自己満足に浸っているだけではないのか、とも思えてしまう。


(……気にしすぎかな?)


 ハーシェリクは苦笑を漏らす。考え始めたら、どこまでも考えてしまいすぎるのは悪い癖だった。 


 世の中もっと単純でいいのではないか。

 用意したケーキは孤児院の子供達も、家族も、とても喜んでくれた。

 その笑顔がもっともっと増えればいいと思う。


 ふと鼻をくすぐられるような感覚を覚える。そして堪える間もなくハーシェリクは大きく息を吸った。


「ハッ…………ハックショーイッ、とくらあッ」


 王子としてあるまじき盛大なくしゃみをする。

 冬は日が落ちるのが早い為、気温も急に下がり始めたようだった。身を刺すような寒さを感じ、ハーシェリクは両手を合わせて擦ってみるが、熱を持ったのは一瞬ですぐに冷たくなってしまう。


「寒いし暗くなってきたし早く帰ろう……」


 既に外灯の明かりがつき始めていた。当たりには人気もなく少々心細くなったハーシェリクは小走りに駆け出した。


 しかしそんな彼の前に突如影が出現する。

 ハーシェリクが足を止め訝しげに見上げれば、深くフードを被った薄汚れた男だった。


(……なんだろ?)


 特に話しかけてくるわけでもない男を不審に思いつつも、ハーシェリクは横を通り抜けようとする。男の真横を通り過ぎても動く気配がなかった為内心安堵したのもつかの間、次の瞬間太い腕がハーシェリクの身体を攫い、口と鼻に布が押し当てられる。


(ハァッ!?)


 手に持っていたバスケットが雪の積もった地面に転がったのを視界に捕えつつ、ハーシェリクは宙に浮いた足をばたつかせる。

 しかし華奢な身体は腕一本で抑えられ、ハーシェリクが暴れようにも男は微動だにしなかった。そして急な眠気がハーシェリクを襲う。その原因が口に当てられた布だとわかったが、ハーシェリクは抗うことが出来ずそのまま意識を手放した。


 動かなくなったハーシェリクの身体を男が持ち直す。その男に近寄った別の男がいた。


「おい、もう出るぞ。さすがにこれ以上国境を軍に固められたら出られなくなる。」

「わかった。最後に上玉も手に入れたしな。コイツは高く売れるぞ。」


 そう言って男達は、ハーシェリクを担いだまま路地裏に消えて行った。







 夜七時を回った外宮の第七王子の自室。執事と騎士は難しい顔を突き合わせていた。ちなみに魔法士のみ読書を継続している。


「どうする?」


 オランがクロに問うが、クロは苦虫を噛み潰したような表情で沈黙したままだった。


 彼らの主は度々筆頭達の目を盗んでは一人で外出してしまうこともある為、うっかりに騙された三人はさほど心配はしていなかった。だが既に時刻は夜の七時を回っている。いつもなら一人で外出したとしても六時前には戻るのだが、今日はまだ戻らずにいた為、さすがに何かに巻き込まれたのでは、思い始めたのだ。


 そんな沈黙を破るかのように部屋の扉が開かれた。


「失礼する。」


 ノックもなく現れたのは険しい表情をしたマルクスだった。後ろのにはウィリアムが続き部屋に入室する。


「ハーシェは戻っているか?」


 マルクスの問いに答える人物は室内にいない。その様子にマルクスはウィリアムに頷くとウィリアムは彼らに一つの籠を掲げて見せた。


「それは?」

「見回りの警邏が道に落ちているのを見つけたものだ……ハーシェが城を出る時に、同じ物を持っていたという門番の証言もある。」


 筆頭達の顔色が変わる。そんな彼らにマルクスは言った。


「それに警邏局に子供が行方不明の届け出があった。今日だけで五件だ。どうやら地方で人攫いをしていた連中が、軍を地方に派遣して手薄になった王都まできていたらしい。」


 裏をかかれたと苦い表情のままマルクスは言い、更に言葉を続ける。


「ハーシェも他の子供達と同様攫われた可能性がある。」


 マルクスの言葉を聞き終えると同時に、すぐさまクロが部屋から飛び出していきそうになる。しかしそれをオランが反射的に腕を掴んで止めた。


「どこにいるかもわからない連中相手にどうする気だ?」

「……手遅れになってからでは遅い。」


 オランの手を言葉と同時に払いのけるクロは、声は冷静を装っているが行動は冷静さに欠けていた。そんな彼をオランは宥めるように言う。


「とりあえず落ち着けよ。冷静さを失って判断を誤ったら元も子もないだろう。」

「十分冷静だ。俺は行くぞ。」

「だから待てって言っているだろうッ」


 出て行こうとするクロと、それを引きとめるオラン。執事と騎士の視線が交錯する中、それを遮るように今まで読書をしていた魔法士がバンッと本を閉じた。そして一人立ち上がり、部屋を出て行こうとする。


「ヴァイス、お前まで……」


 オランが溜息を漏らしつつ引きとめようとすると、シロは足を止め肩越しに振り返り同僚達を見る。


「ハーシェの居場所がわかればいいんだろ?」


 それだけ言ってシロは部屋を後にする。その後を慌てて筆頭達と王子達は追った。


 シロが向かったのは王城でも一番高い、見晴らしのいい高台だった。


「居場所がわかるのか?」


 無言で進むシロの背中にマルクスが問いかける。シロは振り返りはせずに高台の露台に立つとあたりを見回しながら口を開いた。


「ハーシェには私が作った魔法具を持たせてある。その中にはハーシェがどこにいても居場所が特定できるものもある。攫われて短時間ならまだ身に着けているだろうし、取りあげられても見た目は貴金属だからすぐには捨てられてはいないだろう。それにもしそれを持っていなくても、私ならハーシェを見つけ出せる。」


 淡々とだがほくそ笑みながらシロは言った。そしてそう話しながらも、彼の純白の長い髪は薄い緑色に光りを帯び始めた。


 自分の魔力を風の属性に変換し、感知と同時に探索の魔方式を構築していく。薄い緑色の光球が彼の周りを踊るかのように舞い、風がないのに彼の光が帯びた長い髪が煽られた。


「……その魔法具についてハーシェは知っているのか?」


 魔方式構築を行っているシロの後姿をみながら、ふと疑問に思ったことをウィリアムが呟く。ハーシェリクの性格を考えると、首に鈴を付けられるようなことは嫌うはずだと思ったのだ。


 その問いについては、シロは無言を貫き通した。







 ハーシェリクは頭に強い衝撃を受けて意識が覚醒した。目の前には木の床が広がり、明かりは窓から零れる月明かりのみで暗かったが馬車の中だとわかった。

 現在馬車は動いておらず、停車した拍子に倒れて頭を打ったのだとわかった。

 床に打ち付けた頭が痛んだが、その痛みのおかげで無駄に混乱せずに済んだ。


(……えーと、つまり攫われた?)


 それは至極簡単な事だった。

 思い出せるのはフードを被った薄汚い男に布を口に当てられたところまで。現在は手は後ろでで縛られてはいるが服は脱がされた形跡はなく、シロに渡されている護身用の魔法具も取られていないことから、薬で眠らされたあとそのまますぐ攫われたと推測する。


(とするとこいつらは地方で問題になっていた人攫いの連中か。)


 そういえば一週間前のセシリーの試食会でそんな話を、年長の二人がしていたことを思い出しハーシェリクは結論づける。あの時は既に軍が動いていた為、ハーシェリクは出る幕なしと深く考えていなかったが今回はそれが裏目にでた形だった。


(王都にいたってことは、彼らを匿った人間がいるということ……共犯者がいたか。)


 ハーシェリクは内心舌打ちし、考えを纏めつつゆっくりと体を起こした。両手を縛れれている為、うまく起きられず思った以上に時間を要した。


「……大丈夫?」


 やっと起き上がったハーシェリクにすぐ側にいた少女が声をかける。ハーシェリクが視線を動かすと、同い年くらいの少女が心配そうに見ていた。周りを見れば三畳くらいの広さの馬車の中には五人の子供達がいた。下は五歳、上は七歳の年端もいかぬ子供達だ。五歳くらいの少年と少女は小声ですすり泣いている。年が上がるにつれ声を上げてなくことはないが、みなが瞳に涙を溜めていた。


「僕は大丈夫……みんな怪我はない?」


 そうハーシェリクが問うと、皆がおずおずと頷くのを確認し、ハーシェリクは安心させるように微笑んで見せる。


「大丈夫だよ。すぐに助けが来るから。」

「……どうやって助けがくるんだよ。そんないい加減なことを言うなよ!」


 ハーシェリクの言葉に一番の年長の男の子が声を荒げた。

 不安を解消しようとしたがそれが裏目に出てしまった。年長の男の子はハーシェリクよりも大柄で背も高い。それ比べて小柄で華奢な自分が言っても不安にしかならないだろうと考え至り、ハーシェリクは己の失敗を悟る。


「もう、家には帰れないんだ!」


 そう男のが叫ぶと、馬車の扉が外側から蹴られ車内に音が鳴り響いた。不快な音が馬車の中に響き渡り、ハーシェリクを除く子供達はビクリと肩を震わせ扉を見る。


「うるせえッ 静かにしろガキどもッ」


 男の怒鳴り声が響いた。

 そのせいで、恐怖の限界を突破した一番下の五歳くらいの少女が泣きだす。

 その声に反応して再度馬車の扉が蹴られ馬車が揺れると、、今度は最年少の男の子が泣きだした。


 泣き声が止まないことに業を煮やしたのか、扉が勢いよく開かれた。


「いい加減にしろッ ぶっ殺されてえのか!!」


 無精髭を生やした鬼のように目を吊り上げた男が馬車を覗き込んで怒鳴る。


「いい加減にするのはお前達だ。」


 年不相応の落ち着いた、そして威圧的な声でハーシェリクは男に言った。そしてハーシェリクは立ち上がり、子供達を守る様に男の前に立ちはだかる。

 馬車と地面の高低差で、ハーシェリクは真っ向から男を見据え、決して視線を逸らさない。


「この国では人身売買は禁止されている。発覚した場合、関与した者は皆死罪。今から私達を元の場所に送り届け警邏へ出頭し、知っていることを洗いざらい証言するなら、死刑よりはマシな処遇になるかもよ?」


 そう言い切ったハーシェリクは、目の前の男と、その後ろでたき火を囲っている男達を見渡す。。

 男達の人数は全員で八人。その全員がハーシェリクの物言いに呆気にとられ動きを止めていた。


「……生意気な口を聞くんじゃねえッ」


 だがすぐ我に返った目の前の男が、ハーシェリクの胸倉をつかむと馬車から引きづりだした。

 軽いハーシェリクの身体はいとも簡単に馬車から外へ出されると、地面に叩きつけられた。、その衝撃で息が詰まりせき込む。


 苦しそうに咳き込むハーシェリクに跨り上から見下ろした男は、首筋に取り出したナイフを当て、そして残忍な笑みを浮かべた。それは彼が攫った子供達にしてきた、相手を恐怖で支配する為の常套手段だった。


 周りの仲間から商品なんだから大切に扱え等の野次が飛んだが、男はナイフを退けることはなかった。


「お前は顔が綺麗だからいい額になるぜ。女じゃないのが惜しいが、そういう趣味の変態は多いんだよ。」


 そう脅せば、どんな生意気で強がった子供でも泣き出し、そして助けを請うのがいつもだった。


 だが今回の相手は違った。


「へえ? でも残念。おじさんの期待には添えないと思うよ。」


 そう言ってハーシェリクは不敵に笑い、視線を男のさらに上に向ける。


 視線の先は馬車の上。そこには二つの『影』がいた。


「ね、二人とも。」


 ハーシェリクが言うのと同時、男の身体は宙を舞った。否、すぐに地面に叩きつけられる。男がせき込み激痛に耐えながら起き上がると、そこにはハーシェリクを助け起こす、漆黒の服を来た黒髪の青年と、白い騎士の制服を来た橙色の髪の青年がいた。

 二人の容姿に共通点はない。ただたき火に照らされる瞳には静かな、だが確かな怒りが灯っていた。


「黒犬、いいか。殺しすぎるなよ。」


 騎士の言葉は彼に言っているようで、自分に言い聞かせているようだった。相手が微かに頷くのを確認し、騎士は剣を抜く。


「クロ、オラン。投降する者は生かす事。反抗した場合は必ず半数は生かして捕えて。」

「我が君のお心のままに。」


 ハーシェリクの命令に二人は声を揃えて答え、そして剣やナイフを手にした男達と対峙した。


 そんな状況を尻目にハーシェリクは解放された手をさすりながら、扉が開けっ放しの馬車に近づく。覗き込むと中には泣くことを忘れて固まってしまった子供達がいた。そんな子供達に先ほどと同様を安心させるように笑いかける。


「ね、大丈夫って言ったでしょ。じゃあちょっと待っていてね。」


 そう言ってハーシェリクは扉を閉める。これから始まることは子供にはトラウマを与えかねないからだ。


「……ハーシェ、解っているな。」


 扉を閉めた彼の背中に、クロが口をぼそりと言った。その意味を理解し、ハーシェリクは震えだす。


 ハーシェリクは解っていた。


 いつも助けてくれる彼らを驚かせたくて、他愛無い嘘をついて一人で行動してたことを。


 それが原因で人攫いに攫われ、うっかり売られちゃうところだったことを。


(……今日は何時間コースだろう。)


 すぐ背後で開始された戦闘など意に反さず、帰った後の事を考えてハーシェリクは遠い目をした。






 無事に王都に戻ったハーシェリクはまず父に心配され、その後兄達にも心配されつつ説教され、そしてその後筆頭達……主に執事に説教され全てを終えた時は既に深夜を軽く過ぎていた。


 あの後、ハーシェリクの指示通り半数生きて残された人攫い連中は、後から追いついた騎士達により捕縛されその場で取り調べを受けた。彼らは二人の筆頭達に死の恐怖を味合わされた為すぐに口を割り、騎士達はそのまま共犯者の商人と貴族の元に向かい捕縛した。あの場にいた子供達は後日事情聴取されるが、すぐに親元に帰された。そして彼らが攫った他の子供達も、国境側の共犯者の元に囚われていることがわかり、すぐに軍が急行する手筈となっている。


 ある意味ハーシェリクが捕まったおかげで、電撃の解決となった今回の人攫い。そのある意味一番の功労者であるはずのハーシェリクは、多くの心配をかけた人々に説教され、気力が尽きようとしていた。


「本当に私が悪かったから……」


 ソファにグッタリ項垂れながらいうハーシェリク。そんな彼の正面にはまだ言い足りないであろうクロ、そんなクロを宥めるオラン、そして一人我関せずソファに座り本を読みながらちらりとハーシェリクを気にしているシロ。


 ふとハーシェリクは思い出しがばりと体を起こす。


「忘れてた!」


 そう言ってハーシェリクは小走りに部屋を出ていき、しばらくすると戻ってきた彼の手には、少々形の悪いカップケーキが三つの乗った皿を持っていた。


「もう時間過ぎちゃったけど、星輝祭の贈り物。私が作ってみた。」


 そう言いつつ三人にケーキを一つずつ渡していく。


 クロには干した果物を細かく刻んでいれた甘さ控えめのお酒のきいたケーキ。

 オランにはナッツが入った芳ばしい香りのするケーキ。

 そして実は甘いものがかなり好きなシロには、チョコレート生地の中にはチョコチップを入れて焼き、粉砂糖を振りかけたケーキ。


「ハーシェが作ったのか?」


 クロの問うにハーシェリクは照れたように笑う。


「うん、形悪いけど味は食べられるよ。」


 セシリーの試食会から一週間、ハーシェリクは孤児院の子供達や家族にケーキを作った。だがそれは手伝ってもらいつつだった。だけど彼らのケーキだけは全部自分で作った。だから他のと比べて見た目が悪い。


(まあ前世も料理は得意じゃなかったけどね……)


 女子力が低い前世を恨みつつ、ハーシェリクは筆頭達を見渡す。


「いつも、私を助けてくれてありがとう。」


 極上の笑みを浮かべて笑う主。そんな主、筆頭達は各々微笑んだのだった。


 こうしてハーシェリクとその筆頭達の星輝祭は幕を閉じた。






 後日、ふと不思議になったハーシェリクは筆頭達に聞いてみた。


「そういえばなんであの場にシロいなかったの?」


 さも不思議そうにいう彼に答えたのは、そっぽを向いているシロではなく少々疲れた顔をしたオランだった。


「……遠距離魔法でハーシェ以外一掃するって言ったから、縛って置いてきた。」


 ハーシェリクは無言になる。その沈黙がオランの判断を支持していた。そしてもう一つ引っかかることがあった。


「あと、なんで私の場所わかったの? 助かったけど。」


 それがハーシェリクは不思議だった。必ず助けにくるとはわかっていたが、あれほど短時間だとは思っていなかったのだ。するとクロとオランの視線がシロに向かう。


 少しの沈黙の後、シロが振り返った。女神のような微笑みでハーシェリクに言う。


「ハーシェ、ケーキとても美味しかった。また作って欲しい。」

「わかった!」


 珍しくシロに褒められて嬉しそうに返事をするハーシェリク。すでにさきほどの質問は記憶の彼方である。


「絶対誤魔化したよな。」

「ああ。絶対誤魔化した。」


 そんな主と筆頭魔法士のやり取りをみた執事と騎士は小声で言いあったのだった。




クリスマス企画、星輝祭でした。

突発企画にお付き合い頂き、ありがとうございました。


いつも通り主人公がいろいろと猪の如く行動し巻き込まれていますが、平常運転です。

一人で出歩くことをやめられない主人公。時たま一人になりたくなるようです。


さて少々国の設定が出てきましたが、グレイシス王国は周辺諸国と違い人身売買が法律で禁止されている国です。またそれに伴う奴隷制度もありません。またその法を犯した場合は死刑という厳しい罰があります。

なぜ大国なのに奴隷制度がないのか、はまた本編でお披露目できたらと思っています。


それでは良いクリスマスを!


2014/12/25 楠 のびる



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