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転生王子の世直し道中 前編

ハーシェリク(転生王子)シリーズ四巻発売記念短編。

時間軸は『黄昏の騎士』から『白虹の賢者』の間のお話です。

黄昏の騎士読後をお勧めします。また白虹の賢者より前なので、それ以降のキャラはでてきません。

文字数が多くなってしまったので、前後編にわけました。




 生い茂る木々がざわめく森で、二人の子どもが藪の中で蹲っていた。

 一人は森のすぐ傍の町の酒場の一人息子フィン。もう一人は、フィンの友達で小さな商店の息子ミコラ。

 彼らは今、恐怖の真っただ中にいる。


(ど、どうしよう……)


 フィンは泣きそうになったが、歯を食いしばって耐える。横目で友人を見れば、彼も眉間に皺を寄せ自分と同じような表情をしていた。

 そして目の前には、藪の隙間の向こうには、小屋の前で複数の男たちがたむろしている。彼らは、ここ最近この周辺を荒らしまわっている盗賊の一味だった。

 なぜこういう状態になってしまったかは、怪しい男二人組の後を追ったせいだった。


 フィンは家の酒場の手伝いをするため、それなりに人の顔を覚えている。だが昨日、見たことがない二人組が酒場を訪れた。フィンが愛想よく出迎えてもにこりとも笑わない、料理や酒にケチをつけ金払いもよくない。嫌な意味で印象に残った男たちだった。

 そのせいか、日中ミコラと一緒にいたフィンは、町の暗がりでこそこそとしている男たちをみつけた。もしかしたら悪だくみをしているのかもしれない! と子どもながらの正義感で、二人を追いかけた。

 結果、フィンの予想は的中し、盗賊たちの森の中の隠れ家を突き止めた。


 でも二人の威勢もそこまでだった。盗賊たちの腰や手に剣や槍を持っているのを見て、恐怖が湧き上がり、動けなくなってしまったのだ。盗賊たちはどうやら町で次の獲物となる行商の情報を集めていたらしく、どう襲撃するか話し合っていて、自分たちには気がついていない。

 ばれたら、自分たちは殺されてしまうだろうと、幼い二人でも理解できた。


 ふと、二人の口抑えられた。悲鳴を上げようとしても口が押えられているため声は出ず、恐怖のため動くこともできない。


「動くな」


 若い男の声が耳元で聞こえた。二人して目だけ動かせば、黒髪の青年が、血のような紅く暗い瞳が見下ろしている。


「そのまま声を出すな。俺が手を外したら、自分で口を押えろ。声を出したら命の保証はしない」


 二人は何度も首を縦に振った。そして自分の手で口を押える。黒髪の青年は声が漏れないことを確認すると二人を抱え、その場を脱出した。

 子どもを両脇に抱えているというのに、青年は風のように木々の間を抜ける。

 そして街道へ出る直前で足を止め、二人を地面に降ろすとついてこいと、顎をしゃくってみせた。二人は頷いて、一言も喋らず、彼の後を歩く。


 そんな三人を出迎えたのは、街道の脇に止められた馬車の前で待つ、青年と少女の二人組だった。

 二人組は向かい合っていて、少女は背を向けていた。


 青年は背が高く、金が混じった橙色の癖毛で、やや垂れた蒼い瞳の整った容姿の青年だ。青年の腰には剣がある。

 青年が三人に気がついて、少女に視線で合図を送ると、彼女が振り返った。


「クロ、おかえり。どうだった……え?」


 微笑みを持って出迎えた少女は、青年だけでなく少年二人がいることに瞳を丸くして驚き、言葉を切る。

 少年たちもまた、彼女の容姿を見て言葉を失った。


 少女は腰まである淡い色の真っ直ぐな金髪、春の新緑のような碧眼。瞳の合わせたであろう新緑色と白のドレスを纏い、身長は低く華奢。まるで一級の職人が己の生を駆けて作った、精巧な人形のように美しい少女であった。

 彼女はまじまじと二人をみたあと、青年――クロに話しかける。


「この子たちどうしたの、クロ」

「盗賊の住処の傍の藪に隠れていた。見つかるのはまずいと思って連れてきた」


 簡潔に要件を述べるクロの声に、二人はビクッと肩を揺らした。藪の中で声かけられたときの恐怖を思い出し、二人は今更ながら震える。盗賊たちへの恐怖もあったが、クロに「命の保証はしない」と言われたときも怖かった。


 震える二人の様子に、少女は眉を顰める。


「なんでこんなに怯えているの? 大丈夫?」

「さあ?」


 すっとぼけるクロに、もう一人の青年――のちに少女にオランと紹介される――がわざとらしくため息を漏らす。


「どうせ黒犬が声を出したら殺すって脅したんだろ。子どもくらいには優しくしろよ」

「子ども相手に物騒なことを言うわけがないだろう、不良騎士」


 近いことは言った! と二人が目で抗議するが、クロがその視線を受けて冷たく見下ろす。その視線に二人は自主的に口を閉じた。


 少女はため息を漏らし、オランは苦笑いして少年たちに歩み寄る。そして二人の頭に手を置いた。


「どうせ近いことは言ったんだろ……悪かったな。怖かっただろ?」


 そう言ってくしゃりと頭を撫でる。

 温かい手に、二人はやっと恐怖から脱し、助かったのだと実感した。自然と涙腺が緩み、嗚咽が込み上げる。

 そんな二人を、オランはさらに髪の毛をかき混ぜた。


 二人が落ち着いたところで、少女が提案をする。


「とりあえず事情を聴きたいから、移動しよう? 君たちはこの近くの町に住んでいるのかな?」


 頷く二人に少女は馬車に乗るように促す。馬車は外観からも一般人が乗るような辻馬車ではなく、貴族がのるような馬車で、中の座席も少年たちが座ったことがないような柔らかな感触だった。ちなみに青年二人は御者台である。

 座り居心地は最高なはずなのに、二人は場違いな気がして居心地が悪くそわそわし、所在無げに視線を彷徨わせる。

 二人と向かい合うように座った少女は、にこりと微笑んで見せた。


「私はリョーコ。二人は?」


 少女の微笑みのせいか、それともまだ名乗っていなかったことに羞恥を覚えてか、少年二人は顔を朱に染めたのだった。

 微笑みを浮かべたリョーコ――女装をしてお忍び中のこの国の第七王子ハーシェリクは、一波乱ありそうだと予感がしていた。






 開店前の酒場で、その一角を占領して七人の人間たちが顔を突き合わせていた。

 内訳はフィンとミコラ、フィンの父親であり酒場の店主、ミコラの父親の商店の店主、そして女装したハーシェリクとクロとオランである。


「この度は貴族のお嬢様にご迷惑を……」

「息子たちを助けて頂き、ありがとうございました……」


 経緯を聞いた父親たちは恐縮し、テーブルにつきそうなほど頭を下げる。

 そんな二人に、ハーシェリクは両手を振って答えた。


「気にしないでください。偶然通りかかっただけですから」


 と言いつつハーシェリクは、内心訂正する。

 あの場を通りかかったのは偶然だが、盗賊の住処までクロが行ったのは偶然ではなかったからだ。


 この町に向う途中、クロが怪しい人影を見つけた。その人影は馬車が通り過ぎると、森の中へと消えていったため、クロが追ったのだ。

 すると盗賊の住処に辿りつき、子どもたちを保護することになった。


 盗賊たちは獲物を見つける手段として、町で情報収集する他に、ああやって街道で潜んで裕福そうな馬車に目星をつけているのだろう。特に街道で護衛の数がわかれば、対処もしやすい。計画的な犯行である。


 とりあえず盗賊たちのことは置いておき、無茶をした子どもたちのことが先決だと、ハーシェリクは頭を切り替える。


「なぜ君たちはあんなところに? 相手は子どもだからって、見逃してくれるとは限らないよ」


 ああいった輩に慈悲があるとは、ハーシェリクは思えない。殺されなくても、殺されるより酷いことをされる可能性だってあるのだ。


「だって……だって母ちゃんが!」

「フィンッ、やめないかッ!」


 ハーシェリクの言葉に、フィンが声を上げ、そんな息子に父親の叱責が飛ぶ。


「お見苦しいところを、申し訳ない……」

「事情を窺ってもいいですか?」


 謝罪をする父親に、ハーシェリクは先を促した。


 父親は数瞬迷ったあと、重々しく口を開いた。


「実は家内が、病を患っていまして……」


 曰く、フィンの母親でもある酒場の女将は病を患っていた。もともと王都から離れた地方には医者が少なく、満足な治療を受けられないことも原因だった。都の腕のいい医者の治療を受けようにも、旅費や高額な治療費を用意ができずにいた。だが薬を飲めば症状が緩和し、生活もできたため、薬でしのぎながら、金を溜めていた。


 だが盗賊が出没し、行商が襲われるようになって、薬を入手することが難しくなった。薬が届かないことはもちろんのこと、届いたとしても商人は護衛を雇う人件費や領主の街道への治安維持費の名目での上納により運搬費用がかさみ、薬が高額になって手が出せなくなった。


 そして薬を摂取できなくなった女将は、ついに臥せってしまっていた。


「……薬だけではないんです」


 ミコラの父親も、暗い声音で続ける。

 薬だけでなく、生活必需品も高騰していると。商人たちだって慈善事業ではない。利益が出なければ、彼らが困窮するのだ。だからと言ってこの町を無視すれば、この町が困窮する。今この町を訪れる商人は、命の危険に晒されながらも、護衛を雇い、領主へ金を治めてもなお、町に商品を運んでくれる人々だ。中にはぼったくる商人もいるが。

 ミコラの父親はそんな商人たちから商品を購入している。己への利益を最小限にしても、限界があるのだ。


「フィン、怒鳴って悪かったな……お嬢様、お付の方々、息子を助けていただき本当に、ありがとうございました」


 再度深々と頭を下げる父親たちに、ハーシェリクは頷く。


「……事情は、わかりました。あと言い難い話をして頂き、ありがとうございました」


 そしてハーシェリクは、子ども二人を交互に見て口を開く。


「君たち、これからはあんな真似はしちゃだめだよ。ああいうことは、大人が対処するべきことだから」

「だけど、フィンの母ちゃんが! 町だって!!」


 ミコラが声を荒げる。彼も友達の母親が心配だろうし、両親が毎日苦労しているのを見ているのだ。

 なにかしたいという気持ちは、本物だった。


 ハーシェリクは二人の内心がわかったため、諭すように言葉を紡ぐ。


「君たちが心配するのと同じように、ご両親も君たちが心配で大切。もし君たちになにかあったら、ご両親は絶対悲しむ。それでいいの?」


 ハーシェリクの言葉に、二人ははっとして、お互いの父親の顔を見る。そして項垂れ、小さな声だったが謝った。


「大丈夫、悪い奴らは絶対に後悔させてやるから。心配しないで……ね?」


 そう言ってハーシェリクは首を傾げて、微笑んでみせる。だがそれはニコリというよりは、ニヤリと表現するような、邪悪な笑みだった。






 昼過ぎ、フィンとミコラはいつものように、二人並んで町中を歩いていた。

 フィンは酒場の開店準備が始まる前、ミコラは商店の昼休みの自由時間である。


「リョーコちゃん、可愛かったなー……当分ここにいるんだったっけ」


 そう言ったのはミコラだった。


 彼女と出会ってから三日が経った。王都からやってきた金髪碧眼の貴族の美しく愛らしい令嬢の噂は、翌日の夜には町中に広がった。さらに当の本人は貴族なのに平民を見下すこともせず、愛想よく対応するため、町を歩けば様々な人々に話しかけられ、お菓子や花を貢がれていた。

 なかには下心ありで近づこうとする者もいたが、そんな輩は付き人の黒い青年か、護衛の青年に追い払われている。そんな青年二人も容姿が整っているため、町娘に騒がれている。


「おまえの母ちゃん、大丈夫か? 起き上がれないんだろ?」

「……うん」


 ミコラの言葉に、フィンは表情を曇らせた。

 母親はいつも寝てれば大丈夫だから心配するなと気丈に言うが、日に日に弱っていっている。


 盗賊の住処については、町の警邏に報告しようと思ったが、それはリョーコに口止めされた。彼女にはなにか考えがあるらしい。自分よりも年下の女の子なのに、なぜか気圧されて言うことをきいてしまった二人だった。

 二人が当てどもなく街の中心地、市場などが並ぶ広場まで来たとき、異変が起こった。


「おい、また盗賊がでたぞ! 今度は北の街道だ!! すぐ近くで商隊が襲われたらしい!」


 そう男が叫びながら広場に駆け込んだのだ。


「なんだって!?」

「数も多いらしいぞ!」


 男を中心に騒ぎが広がっていく。


「ここの警邏で大丈夫か? 領主に私兵を出してもらったほうが……」

「あの領主が出してくれるか!? 自分の安全を優先するやつだぞ!」


 口々に心配な声が上がり、怒号が交錯する。


 国から配された警邏は町に駐屯しているが、人数はそう多くはない。

 領主は条件はあるが、治安維持の目的のために私兵を雇うことを認められている。しかし盗賊が出没するようになってから、町民が何度も領主に願い出たが、なにかと言い訳をして私兵を出すことはなかった。丸々と肥えた領主は、盗賊が怖くて自分の身しか守る気がないのだと町民の共通認識である。

 むしろ盗賊がいれば、商人から金を巻上げられると思っているのでは、と邪推する人々もいた。


「俺が行こう」


 混沌とした広場に、青年の声が通った。驚いて皆が視線を向ければ、夕焼け色の髪の青年がいた。傍には噂の美少女と黒髪の青年もいる。


「に、兄ちゃんがいってくれるのかい?」


 皆の気持ちを代弁するかのように、傍にいた男が問いかける。

 青年――オランは、安心させるかのように笑ってみせ、佩いた剣の柄を軽く触った。


「ああ、それなりに腕はある。馬を貸してくれないか」


 頷く男に、オランも頷き返した。

 そんなオランの主であるハーシェリクが口を開く。


「オラン、気をつけて。クロも行ってくれる? 私は一人で宿屋に戻れるから」

「筋肉馬鹿一人で問題ないだろ」


 クロが眉間に皺を寄せる。一人にさせるなんてもっての他だ、と言葉以上に表情が物語っていた。

 オランが呼ばれように眉を顰めたが、クロは無視する。


 そんなクロに、ハーシェリクは声を潜め、諭すように言葉を続ける。


「オランだけでも大丈夫だと思う……それに、これはいい機会だよ」


 主の言葉の意図はわかっていたが、クロの表情は変わらない。


 ハーシェリクは過保護な彼をどうするか悩み、視線を巡らす。そして、フィンとミコラを見つけた。

 彼らと目が合うと、ほころぶ花のような笑みを浮かべ、駆け寄る。


「フィン君、ミコラ君、申し訳ないんだけど、宿まで送ってもらってもいい?」


 ハーシェリクはこてんと首を傾げ、上目遣いにお願いをする。二人は真っ赤になりながらも、無言で激しく首を縦に振った。小悪魔に転がされる哀れな少年である。

 二人の答えに満足し、ハーシェリクは己の従者に振り返った。


「ね、この子たちに宿屋まで送ってもらうし、町にいれば大丈夫だよ」

「……わかった」


 クロは渋々、嫌々で頷く。


「さっさと行って片付けてくるぞ、黒犬。おまえたち、リョーコを頼むな」

「はい!」


 オランの言葉に、少年たちは我に返って、声を揃えて威勢よく返事をする。

 彼らはオランに最初のこともあって、クロよりオランに懐いているのだ。


 二人と別れたあと、ハーシェリクはフィンとミコラに挟まれて、宿屋へと向かって歩き出す。

 途中何度か大人たちとすれ違うが、盗賊騒ぎのせいか慌ただしく、子どもたちの存在を気にも留めていなかった。


「急にお願いしてごめんね」


 宿への道中、ハーシェリクは二人に謝る。クロを行かせる苦肉の策だったとはいえ、私情に巻き込んでしまったからだ。

 申し訳なさそうにいうハーシェリクに、フィンとミコラは慌てる。


「べ、別にいいよ!」

「う、うん!それに女の子一人じゃ危ないかもだし!」


 そう口ぐちに慰める二人。ハーシェリクはお礼を言いながらも、少し遠い目をしたのだった。


 宿まであと少し。何事もなかったと安心した瞬間、ハーシェリクは背後から肩を掴まれ、建物と建物間の狭い脇道に引きずりこまれる。

 声を出そうにも、大きな手で口を塞がれ、腰に腕が巻きつき、地面と足が離れた。

 あっと言う間に明るい表通りから、暗い脇道を通り、人通りのない裏道へと運ばれる。見上げれば、人相の悪い男の顔があった。


「リョーコちゃん!!」


 フィンの声が聞こえた。このまま連れ去られてなるものか、とハーシェリクは自由な両手足をばたつかせ、暴れる。


「むー! むー! むー!!」

「くそ、暴れるな!」


 男が舌打ちして、抑え込もうとするが、ハーシェリクは暴れるのをやめない。

 そうこうしているうちに、フィンとミコラが追いついた。


「リ、リョーコちゃんを離せ!」

「うるせえ、殺すぞ、ガキどもッ!!」


 ミコラが叫ぶ。しかし相手が悪かった。人相が悪いならず者相手に、まだ年端も行かない子どもたちが対抗する術はない。

 二人は一喝されて口を閉じてしまい、その容姿に男は満足そうに頷く。


「そのまま黙っていなくなりゃ、見逃してやる」

「むむむー! むむむーむ!!」


 ハーシェリクは黙らなかった。彼の目的はハーシェリクの誘拐だろう。なら自分が危害を加えられることはない。ならばここで暴れて時間を稼ぎ、大人が通りかかるかもしれないからだ。

 だがその希望も潰える。


「嬢ちゃんも黙れ! おまえの代わりに、このガキどもを殺すぞ」


 ハーシェリクはそう言われ、動きをピタリととめた。

 自分については問題なくても、少年たちのことを引き合いに出されれば、言うことを聞くしかない。彼にとって少年たちは、自分のように生かす価値はないのだ。


 急に大人しくなったハーシェリクに、男は数瞬考えた後、厭味ったらしく口角を上げて嗤った。

 その表情に、ハーシェリクは嫌な予感を覚える。


「……おい、おまえらどっちかついてこい。この穣ちゃんを使って大金が手に入ったら、解放してやる」


 約束通り一人は見逃してやるよ、と男はニタニタと笑う。

 ハーシェリクはキッと男を睨んだあと、二人に首を振ってみせた。彼が約束を守る保証はないのだ。


「……僕が行く!」

「フィン!」


 だが数拍の沈黙のあとフィンが言い、ミコラが友の名を呼ぶ。だがフィンはちらりと友に視線を送っただけで、決意は変わらない。


「ついてこい」


 男の言葉にフィンは従う。ハーシェリクは口を押えられたまま、運ばれた。

 三人がいなくなったあと、ミコラは立ち尽くす。だがすぐに踵を返して走り出した。






後編に続きます。


蛇足:口を押えられたハーシェリクはなんと言っていたか


「むー! むー! むー!!」(訳:「はー! なー! せー!!」)


「むむむー! むむむーむ!!」(訳:「だまれー! ロリコーン!!」)


以上です!(どうでもいい)


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