どうする。
こんな風に書いていきます。
分かりにくいけど、よろしくです。
身を乗り出した時、
生ぬるい風が通り過ぎる。
「もう死ぬのか?」
声がした。
その蠱惑的な声は、王子とも、その横で眠る妃とも違う。
不思議に思い、辺りを見渡す。
だれもいない。
『?』
「こちらだ。」
小さな光が窓をよぎり、その先を見ると…―
人が外壁に寄りかかっていた。
ここは三階だから、地に足がついていないのは明らかだ。
浮いているのだろうか?
暗くてよく見えない。
眼をこらすと、
黒いベールとドレスを纏った、すらりとした人影。
『魔女…?』
その人は、今まさに身を投げようとしている人魚に
知恵を与えた魔女を想い出させた。
「ふん。あいつと一緒にされては困る。
確かに私は魔法が使えるが。
それに、あいつは魔女じゃない。騙されたんだよ、きみは。」
『え…?うそ…。じゃあ、わたくしに薬瓶を渡したのは…?』
そこで人魚はもうひとつ、違和感に気づく。
『なぜあなたは、わたくしの声が聴こえるの?』
肉声は、人間になるために偽の魔女に与えた。
他人に聞こえるわけがない。
それにゆっくりと、黒いベールを横に振る。
「聴くんじゃない、文章で読むんだ。」
『…?』
わからなくて、小首を傾げる人魚に
少し困ったような声が落とされる。
「まあ、いい。それできみは、どうする。
…鱗以外のことは、元に戻ると言ったら。」
『…!戻るの?話せるの?
小鳥と、りすと、あの方と!』
興奮する人魚に、ベールの下から苦笑いを浮かべられる。
「戻せる。私について来るのなら、報酬はいらない。」
そこで、人魚ははた、と我に返った。
『でも、どうしてそこまで。』
「簡単に言ってしまえば、あいつは元、私の弟子でな。
せめてもの罪滅ぼしだ。」
言いにくいだろうことをさらっと答える黒い人に、
唖然とする人魚。
『…』
「どうする。このまま死を選ぶのか?
済まないが、時間がなくてな。
すぐに決めてもらわねばならないんだ。」
冷静に話す声に、全く焦りは見えないが
懐から時計を取り出す仕草から、本当なのだろう。
人魚は、考えるまでもなく返事をした。