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還ります。
さよなら、
私の愛しいお方。
貴方はきっと、
幸せになって。
隣の方を大事にしてね?
キングサイズのベットで、
眠る王子を愛おしそうに見つめる瞳。
すぐにその眼は、決意の光を宿して外を見る。
眼下には、暗闇。
しかし、さざ波の音が下は海だとを伝えてくれる。
ああ、やっと帰れる。
懐かしい場所へ。
帰れるわけがないと、捨てた故郷へ。
泡となっても
帰れるならもう、
他は何もいらない。
姿は見えなくても
ねえさまたちはきっと
私のために歌を歌ってくださるわ。
ねえさま、かあさま、そしてとうさま。
あんなに手を尽くしていただいたのに、
こんな結果でごめんなさい。
私は、還ります。
母なる海の、その中へと。
開け放した窓枠に手をかけ、身を乗り出した。