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ひととけもの  作者: 亀山
まつり編
12/28

まつりもの

「エ、昨日ユノさんのお兄さんが来ていたんデスカ?」


レオンが驚いたように言う。台所でレオンの手伝いをしていたユノはそうそう、と頷いた。


「今日はなんか部屋にこもって本読んでる。いい資料が見つかったんだって」

「へェ・・・さすが王宮務メ。責任感あるんデスネェ」

「いや、なんか『もうめんどくせー上司の鬼畜ー過労で倒れて一ヵ月くらい病室に監禁されればいいのにー』っていってたよ」


その時の上司を倒れさせてやろうと計画を練るノクスの顔はとても楽しそうだった、とユノは語る。

ちょっと共感シマス、とレオンが言う。


「仕事とか無性に休みたくなる時はありマスヨ。休憩が充分取れないとそう思うのも当然じゃないデスカ?」

「今日昼まで寝てたけど」

「アア・・・」


フォローの仕様がない、とレオンは肩をすくめる。

ユノは皿を拭きつつレオンを見上げた。


「仕事とか・・・てレオン仕事してたの?」

「エ、・・・ああ計算とかデスネ。そういえばそのお兄さんなんでけものを探しているんデスカ?」


ほほ笑むレオンの顔はどこかぎこちない。さりげなく話題を変えられたことにユノは気づいたが、何かあるのだろうと気づかなかったふりをしてレオンの質問に答えようと口を開いた。


「んーと上司が探すから下っ端の俺が探すんだっていってたよ」

「上司って王子様デショ?下っ端って感じじゃないですがネェ」

「大人の事情ってやつでしょ」


そういうとユノはレオンに背を向けて拭き終わった食器を食器棚にしまい始めた。

レオンが何か言おうとして口をつぐんだ姿はユノからは見えない。


食器をしまってしまうともうやることがなくなってしまった。

ユノは手持ち無沙汰にかんがえ、ふと思いついてレオンを振り返った。

レオンはいつも通りの笑顔でどうしたんデスカ?と問いかけてくる。


「今日って何日だっけ」

「確かウーノの24日デス。けもの祭りまであと7日デスネ」


けもの祭りというのはトレー月の初めに行われる祭りで、けものが大干ばつだったこの国に雨を降らし、作物が大豊作になったという伝説に基づいている。早い話が、収穫祭だ。

このとき国中が3日3晩盛り上がる。祭りらしい祭りのないこの国の唯一国が上げて祝う行事だ。


「え?もうそんな時期?じゃあディアンの誕生日もあと7日じゃない」

「ディアンさんって誕生日あったんデスカ?」


レオンが首を傾げる。ユノは財布の中身を確認しながら答える。ぎりぎり予算には足りそうだ。


「うん。いくら聞いても答えてくれないから私が勝手につけたの。私が館にボール放りこんでディアンに『消えろ』って言われた日よ」

「素直に初めて会った日だっていいマショウヨ・・・」


レオンが呆れたように言う。そして自分の財布を手に取った。


「俺もディアンさんにはお世話になってますカラネ。一緒に贈り物を選びマショウ」


ユノは嬉しそうにうん、と勢いよく答えた。






「あれ?ノクス兄さんもう飽きたのかな」

メリクリス家の前を通ると双子のはしゃいでいる声がよく聞こえた。双子を追いかけまわしているであろうノクスの声も。 


「ねえ、ちょうどいいから会っていく?」

「ンー・・・やめておきマス。嫌な予感がするンデ」


てっきり肯定的な返事がくるとおもっていたユノは目をぱちくりとさせた。レオンはそんなユノのことを気にせずさわやかな笑顔でさあ行きマショウとユノを急かした。

昨日のことをディアンから簡潔ながら聞いていたレオンはシスコンの鋭い目を向けられてはかなわないと足取りはいささか早くメリクリス家の前を通りすぎたのだった。





通りはもう祭りの準備にはいっているところがあるのか、とんかんとあちこちから金槌の音が聞こえてきた。


ユノはいろんな店をめぐったが、これというものはなく、少々落ち込んでしまった。

レオンに聞いてみるともうすでに買ったらしい。

見せて、とねだるとダーメとユノが届かない位置まで包みを持ち上げられてしまう。

意地悪、と頬を膨らませたユノをみるレオンは心底楽しそうで、ユノは完全にへそを曲げてしまった。


もういいとわざとレオンを振り払うと自分は複雑な路地裏を闇雲に進んでいく。

わき目も振らずにずんずんと気が向くままこっちを曲がりあっちを曲がり。


気づいたらユノは見たことのない場所まで来てしまっていたのだった。




※補足 月

ウーノ 四月 トレー 五月 トレス 六月 セウロ 七月 ミリス 八月 メリ 九月 ビス 十月 チョネ 十一月 ヴェイネ 十二月 レーレ 一月 ユウセ 二月



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