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筆だって自分で文字が書きたい~人になりたいのに、異世界で神にされました。~  作者: 嶋田愛那
出会い~江戸編

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相談屋お筆はお出かけの準備をする



いつも通りに倉庫の端を借りて寝ようとしていたところ。



『なあ筆、櫛。たまには外に出てみねえか?』


『そういえば、外に出たことはないかもしれません』


『そうですねぇ。だいたいは店番と相談役ですから、筆さんが外に出る機会ってあんまりないかもしれないです』


『猫っつうのは自由気ままなもんだぜ。たまには店にいないときだって、あってもいいんじゃないかい?おれもたまには外に出たいもんだが、動けないからねえ』


『筆さん、町を散歩するだけでも楽しいと思いますよ』



どうやら、友人ふたつは出かけたいらしい。

もともと人のそばで仕事を手伝う役目をしていたわたしは、自分で考えてどこかへ出かけるということが思い浮かばない。



だが言われてみれば確かに、ずっと中にいるよりは外に出た方が新たな発見も多いだろう。

それに、友と話しながら出かけるのは、なんだか楽しそうだ。



『わたしは出かけるっていっても、どこに行ったらいいのかわからないので…。お二方とも、どこか行きたいところはあるんですか?』


『あたしは川原が見たいですねぇ。今の時期は河童(かっぱ)さんがいらっしゃるって、狐さんが言ってたんです。ぜひ見てみたいわ』


『鈴さんはどうですか?』



わたしが鈴にも水を向けると、鈴はややあって気まずそうに言った。



『お、おれはどこでもいいから、お前さんたちが行きたいとこに行きゃあいいよ』


『おや、鈴さんが外に出たいって言いだしたのに。遠慮してるんですか?』


『そうですよ鈴さん。らしくないですよ』



わたしたちふたつにそう言われ、鈴は不承不承打ち明けた。



『…あー、そのな。実はおれもあんまり外に出してもらったことがなくてよぉ。そこまでよく知らねえんだよなあ』


『なるほど。だから他出(たしゅつ)してみたかったんですね』


『それならちょうどいいんじゃないかしら?出かけるのが初めて同士、みっつで楽しみましょうよ』


『そうですね。では明日はお店をさぼって、お出かけすることにしましょう』



そういって、もう寝ようと猫の姿で丸くなると。



『ちょっと待ったぁ!』



けたたましい声とともにやってきた「念」の主。

誰あろう、猫又である。


『ああ猫又さん、こんばんは』


『おばんだぜ、猫又さんよぉ』


『お久しぶりですね、猫又さん』



猫又は最近長く姿を見せないことが多いが、たいていは夜にわたしが寝ている蔵へとやって来る。

鈴と櫛は、突然現れる彼女に最初驚いていたが、もう慣れたらしい。



今も平然とあいさつをしていた。



『鈴も櫛も久しぶりねえ。って違った、ちょっと筆、これはいったいどういうことなの?』


『これってなんのことですか?』


『すっとぼけないで。なにやら私に黙って外出しようとしてたらしいじゃない』


『あ、そのことですか。猫又さん、どこか手ごろな場所を知りませんか?なにぶん、わたしたちみっつとも外出が初めてなもので。櫛さんは川原の河童さんが見たいとおっしゃっていたのですが』



猫又に聞いてみると、彼女は少し機嫌を直したらしく、いつもの調子でひげを揺らした。



『川原の河童ねえ…。いいわ、私が案内してあげる』


『え』


『あらなによ筆。私が直々に案内してあげるのよ。文句でもあるのかしら?』


『いえなにも』


『あっそう。じゃあ決まりね』



猫又が満足そうに言うと、それまで黙っていた鈴と櫛がひそひそ言っているのが聞こえた。



『毎回思うんですけど、猫又さんと鈴さんの会話って、仲がいいのか悪いのかわかりませんよね』


『おめえさん、こういうのは痴話げんかって言うんだぜ』


『そうなんですか?』


『そうだよ、こいつら傍から見ると(つがい)にしか見えないからなあ』


『あら、でも筆さんの方が一回り小さいですよ?猫ってめすのほうが大きいんでしたか?』


『そうは言ってもな、陰からいつも助けてくれて、寂しくないように夜になると帰ってきてくれるなんざ、もはや旦那の仕事だろうがよあっあっ待ってくださいちりちりしないでえええ』



猫又が我慢の限界になり、鈴を前足でもてあそび始めた。

鈴が悲鳴を上げるが、自業自得である。大人しく怒られてほしい。


『…櫛さん、こうなってしまうので、鈴さんの言葉は話半分で聞いてくださいね』


『ふふ、やっぱりあなたたち、息ぴったりだわ』



櫛がのんびりと笑うのに、わたしは小さく息を吐いた。



『そういえばあんまり気にしてなかったけど、筆さんは男性なの?』


『えっ』



櫛の問いに、なぜか猫又がわたしの顔を見た。

なぜか、鈴も意識を向けている気がする。



『…性別なんて今まで考えたこともないですが、この姿は猫又さんを参考にしていますよ』



無難な回答だろう。わたしの本体が男か女かの前に、そもそも意識が浮上したのがこの前なのだ。

ちなみに猫に化けたときは猫又を参考にしているので、めすということになる。



『なるほど、だから「お筆ちゃん」なんですね』



そういうことである。



途中わけのわからない話になったが、とりあえずわたしたちみっつと1匹は、明日出かけることになった。



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