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婚約破棄のショックで震えている? いいえ、空気椅子の限界なだけです。~か弱き聖女を選んだ王子様へ。私を追放するなら、ついでにドレスの下に仕込んだ「重り」も回収してくれませんか?~

作者: おーあい

「アレクサンドラ! 貴様のような可愛げのない女との婚約は、今ここで破棄する!!」


 王城の舞踏会場。  音楽が止まり、静まり返った広間の中心で、フレデリック王子の絶叫が響き渡った。


 私は、その宣告を聞いて――プルプルと激しく震えていた。


「ふん、見ろ。あまりのショックに言葉も出ないようだな」


 王子が勝ち誇ったように鼻を鳴らす。  隣には、儚げな男爵令嬢リリアがしなだれかかっていた。


「アレクサンドラ様……かわいそう……」


「気にするなリリア。悪いのは、私の愛を受け入れようとしなかったこの『鉄の女』だ」


 周囲の貴族たちが、憐れむような視線を私に向ける。  可哀想な公爵令嬢。婚約破棄を突きつけられ、屈辱に打ち震えている……と。


 だが、彼らは知らない。  私が震えている理由は、悲しみではない。


(……くっ、キツい……! 今日のドレス、伸縮性がゼロすぎる……!)


 私は今、ドレスのふんわりとしたスカートの中で、見えない椅子に座る姿勢――**『空気椅子』**を維持していた。


 しかも、ただの空気椅子ではない。  太ももの上に、パーティーの立食テーブルからこっそり拝借した**『豚の丸焼き(推定15キロ)』**を皿ごと乗せているのだ。


 退屈なパーティーの時間を利用した、極秘のトレーニングである。  震えているのは、豚の丸焼きの脂が熱いのと、太ももの筋肉が悲鳴を上げているからだ。


「おい、なんとか言ったらどうだ!」


 無視を決め込んでいる(ように見える)私に腹を立てたのか、王子が大またで近づいてくる。  そして、私の肩をドンッ! と突き飛ばそうとした。


 ガシィッ。


「……痛っ!?」


 悲鳴を上げたのは、王子の方だった。  彼は自分の手首を押さえて涙目になっている。


「な、なんだ!? 貴様の肩、岩でも入っているのか!?」


「失礼な。肩の筋肉(三角筋)です」


 私は冷静に答えた。  毎日、庭石を持ち上げて鍛え抜いた私の肩は、生半可な衝撃など弾き返す。王子の貧弱な「手押し」など、蚊が止まったようなものだ。


「き、貴様……! リリアを見習え! このマシュマロのように柔らかい二の腕を!」


「マシュマロ……?」


 私はリリアの腕をチラリと見た。  細い。あまりにも細い。  あれはマシュマロではない。**『乾燥したパスタ』**だ。少し力を入れたらポキッといきそうだ。


(危ないわ……あんな腕で重いティーカップを持ったら、骨折してしまう)


 私は本気で心配になった。  この国の未来も心配だが、リリアの骨密度の方がもっと心配だ。


「ふん、強がるのもそこまでだ。貴様には『北の辺境』への追放を命じる!」


「北の……辺境?」


 私の目が輝いた。  北の辺境といえば、一年中雪に閉ざされた極寒の地。  そして、そこに生息する「雪男イエティ」の肉は、牛ヒレ肉の倍以上のタンパク質を含むという伝説の食材だ。


「……本当によろしいのですか?」


「はっ、今さら泣きついても遅いぞ!」


「いえ、感謝いたします。王都の肉は脂身ばかりで飽きていたところでした」


「は?」


 私はニッコリと微笑んだ。  嬉しさのあまり、無意識にガッツポーズを取ってしまう。


 バツンッ!!!


 爆発音がした。  私のドレスの背中が、弾け飛んだのだ。


「えっ」


「きゃあっ!」


 会場が騒然となる。  背中が大きく開いたドレスから露わになったのは、白魚のような肌……ではなく、鬼の顔のような凹凸が浮かび上がる背中の筋肉だった。


「み、見ろ! ドレスが自壊したぞ!?」


「なんて筋肉だ……まるで解剖図だ……」


 貴族たちが青ざめる中、私は「あちゃー」と舌を出した。  やはり、既製品のLサイズでは私の広背筋を収めるには狭すぎたようだ。


「……お見苦しいところをお見せしました」


 私はスカートの中に隠していた「豚の丸焼き」を片手で軽々と持ち上げた。  皿に乗ったままの豚を見て、リリアが白目を剥いて気絶する。


「お弁当も確保できましたので、これにて失礼いたします」


 私は豚肉を小脇に抱え、優雅にカーテシー(お辞儀)をした。  その際、ドレスの裾を踏んづけてしまい、バランスを崩しかけたが――


 ドゴォン!!


 転ばないように足を踏ん張った瞬間、床の大理石が蜘蛛の巣状に砕け散った。


「ヒィッ……!?」


「地震か!?」


 腰を抜かす王子を一瞥し、私は瓦礫と化した床から足を抜いた。


「それでは殿下、お達者で。……リリア様を抱く時は気をつけてくださいね。殿下の細い腕では、リリア様の重さに耐えきれず、二人まとめて転倒するのがオチですから」


 捨て台詞を残し、私は会場を後にした。  背後で「化け物だ……」「ゴリラ令嬢……」という声が聞こえたが、褒め言葉として受け取っておくことにした。


 さあ、北へ行こう。  そこにはきっと、私を満足させてくれる**『重い石』と『強い肉』**が待っているはずだ。


          ◇


 王都を追放されてから三日。  私は北へ向かう街道を進んでいた。


「はぁ……はぁ……! アレクサンドラ様、お願いですから乗ってください! 馬が……馬がビビって泣いてます!」


 御者が涙声で叫んでいる。  だが、私は首を横に振った。


「何を言うの。これは絶好の『有酸素運動』よ。それに、ただ走るだけじゃ負荷が足りないわ」


 私は、馬車の後部にロープを括りつけ、それを腰に巻いていた。  そして――馬車を後ろから押していた。


 本来なら馬が引くはずの馬車を、私が後ろから押し、馬は私が押すスピードに合わせて必死に足を動かしているだけだ。実質、私が馬車と馬と御者をまとめて運んでいることになる。


「ふんっ! ふんっ!」


 地面を蹴るたびに、街道の土が爆ぜる。  私の足跡だけ、やけに深い。


「見て、御者さん! 私のふくらはぎ、今すごくカチカチじゃない!?」


「見てます! 見てますから、もうこれ以上スピードを出さないでぇええ!!」


 私の追放の旅は、実質的な「強化合宿」と化していた。


 やがて、気温が急激に下がってきた。  吐く息が白くなり、周囲は銀世界へと変わる。  北の辺境、マッスルヘイム領に入ったのだ。


「ひぃぃ、寒い……凍えそうだ……」


 御者が毛皮にくるまって震えている。  しかし、私は袖のないドレス(半袖ですらない、ノースリーブ)一枚だ。


「あら、涼しいわね。筋肉が熱を持っているから、ちょうどいい冷却アイシングになるわ」


 その時だった。  街道の横の雪山から、白い巨体が転がり落ちてきた。


 ガァアアアオオオッ!!


 全長三メートルはある「ホワイト・ベア」だ。  狂暴な爪と、分厚い脂肪に覆われた北の捕食者。御者が悲鳴を上げて馬車の下に隠れる。


 だが、私は目を輝かせた。


「かわいい……!」


 私は熊に駆け寄った。  熊が威嚇のために立ち上がり、私に向かって巨大な腕を振り下ろす。


 ドスゥン!!


 私はその腕を正面から受け止めた。  熊の目が点になっている。


「いい毛並みね。それにこの重量感……あぁ、今の私に足りなかったのは、この『もふもふした重り』だったのよ!」


 私は熊の胴体に腕を回した。  いわゆる「ベアハグ(鯖折り)」の体勢だ。


「さあ、一緒にスクワットしましょうねー!」


「グ……グマ……ッ!?」


 私は熊を抱きしめたまま、深く腰を落とし、そして立ち上がる。  一回。二回。三回。  三百キロはある熊が、私のハグによって上下する。


 十回ほど繰り返したところで、熊が白目を剥いて脱力した。  気絶してしまったようだ。


「あら、もう終わり? スタミナがないわねぇ」


 私が物足りなさそうに熊を地面に置いた、その時。


 パチ、パチ、パチ、パチ。


 背後から、重厚な拍手の音が聞こえた。


「素晴らしい。実に美しいフォーム(姿勢)だ」


 振り返ると、そこには一団の騎士たちがいた。  全員が、なぜか吹雪の中だというのに**『上半身裸』**だった。


 その中心に立つ男。  黒髪に鋭い眼光。そして何より目を引くのは、服の上からでも分かる(着てないけど)異常なほど発達した大胸筋だ。


 まるで、岩盤を二つ貼り付けたような厚みがある。


(な、何あの筋肉……!? 美しい……! 彫刻……!?)


 私の胸が高鳴った。  これは恋? いいえ、嫉妬だ。あの筋肉が欲しい。


「そこの令嬢。名を何という」


 男が低い声で尋ねてきた。  私はドレスの裾をつまみ、優雅にカーテシーをした。


「アレクサンドラと申します。追放されてきた身ですが……貴方様は?」


「俺はこの地の領主、ジークフリート辺境伯だ」


 彼、ジークフリート様は、私の足元に転がっている気絶した熊を一瞥し、それから私の「二の腕」をじっと見つめた。  熱っぽい視線だ。  普通の令嬢なら頬を染めるだろうが、私はすぐに理解した。彼は私の三頭筋のカット(溝)を見ているのだと。


「アレクサンドラ。俺の嫁に来い」


「はい?」


 いきなりの求婚。  御者が「えぇー!?」と叫ぶ中、ジークフリート様は真顔で続けた。


「俺は長年探していたのだ。俺の『フルパワーのタックル』を受け止めても骨折しない、頑丈な伴侶を」


「……まあ」


「か弱き女は抱けん。抱きしめた瞬間に折れてしまうからな。だが、お前なら耐えられそうだ。いや、むしろ俺の方が押し負けるかもしれん」


 彼はニヤリと笑い、自慢の大胸筋をピクン、と動かした。  それは求愛のダンスのようだった。


 私の顔が、カッと熱くなる。  こんな殺し文句、生まれて初めて言われた。  「美しい」とか「愛してる」なんて言葉よりも、**『お前なら頑丈だから壊れない』**という言葉が、どれほど私の心に響いたことか!


「謹んでお受けいたします、閣下! 私も、貴方様のような『分厚い』殿方を探しておりました!」


「そうか! ならば契約の儀式だ!」


 ジークフリート様が近づいてくる。  誓いのキスか?  いいえ違う。


 彼は両手を広げ、私に向かってガシッと組み付いてきた。  私も負けじと、彼の背中に腕を回し、全力で締め上げる。


 ギチチチチチ……!


 互いの筋肉と筋肉が軋む音。  骨がきしむ音が雪山に響く。  普通の人間なら内臓破裂しているレベルの抱擁だ。


「ぬんっ!」


「ふんぬっ!」


「いい力だ……! 背筋バックが強いぞ、アレクサンドラ!」


「閣下こそ……! 腹直筋が鉄板のようですわ……!」


 私たちは抱き合ったまま(力比べをしたまま)、互いの力量を認め合い、恍惚の表情を浮かべた。  雪が二人を祝福するように降り積もる。


 背景には気絶した熊。  こうして私は、追放されたその日のうちに、最強のパートナーを手に入れたのだった。


 一方その頃、王都では。  私のいなくなった屋敷の維持管理ができず、使用人たちがパニックに陥っていたが、それはまた別の話である。




 数週間後。  王都は紅蓮の炎に包まれていた。


「ギャオオオオオ!!」


 上空を覆うのは、伝説の厄災『アンチマジック・ドラゴン』。  その鱗はあらゆる魔力を無効化し、宮廷魔導師団の放つ炎も雷も、すべて弾き返されていた。


「ひぃぃっ! なぜだ! なぜ私の『聖なる光』が効かないのぉ!?」


 瓦礫の山となった王城のテラスで、聖女リリアが泣き叫ぶ。  その横で、フレデリック王子は腰を抜かしていた。


「おしまいだ……騎士団の剣も通じないなんて……誰か、誰か助けてくれぇ!!」


 ドラゴンの巨大な顎が、二人を喰らおうと開かれる。  絶体絶命。  誰もが死を覚悟した、その時だった。


 ヒュゴオオオオオオオオッ!!


 遥か彼方から、何か巨大な質量弾が飛来する音がした。  それは砲弾ではない。  人間だ。


 ズドオオオオオオオン!!!


 隕石が落下したような轟音と共に、ドラゴンの脳天に「何か」が直撃した。  ドラゴンが白目を剥いて地面に叩きつけられる。


 もうもうと立ち込める土煙の中から、一人の令嬢が姿を現した。  ボロボロになったドレスを脱ぎ捨て、タンクトップと短パン(スパッツ)という軽装姿になった私、アレクサンドラだ。


「……着地成功ね。ありがとうダーリン、ナイス投擲スローイングよ」


「ああ、いい放物線だったぞ、ハニー」


 私の隣に、同じく空から降ってきたジークフリート様が、音もなく着地する。  私たちは王都までの道のりを短縮するため、互いを**『交互に投げ飛ばしながら』**空を飛んで移動してきたのだ。


「ア、アレクサンドラ!? なぜここに!?」


 瓦礫の陰から王子が顔を出す。  私は彼を一瞥し、フッと笑った。


「救援要請が届いたのよ。まったく、相変わらず貧弱な防衛線ね。基礎体力が足りていない証拠だわ」


「グルルル……人間風情ガァアア!」


 殴られたドラゴンが起き上がり、激怒して咆哮する。  その声だけでガラスが割れるほどの衝撃波だ。


「貴様ラノ魔法ナド、我ニハ通じヌ!!」


「魔法?」


 私は首を傾げた。  そして、ジークフリート様と顔を見合わせる。


「おい聞いたかハニー。こいつ、魔法無効らしいぞ」


「あらやだ。どうしましょう、ダーリン」


 私たちはニヤリと笑った。


「「俺たち、**物理パンチ**しか持ってきてないけど」」


 次の瞬間、私たちの姿が掻き消えた。  地面を蹴る脚力だけで、音速を超えたのだ。


「フンッ!」


 私がドラゴンの右足をローキックで蹴り上げる。  バキャッ! という生々しい音と共に、ドラゴンの巨体が空中に浮いた。


「ヌンッ!」


 浮いたドラゴンの腹に、ジークフリート様のボディブローが突き刺さる。  衝撃が背中まで突き抜け、ドラゴンの背中の鱗が弾け飛んだ。


「ギャッ、アガッ!?」


 ドラゴンは混乱していた。  魔法が効かない自分に対し、この人間たちは単純な「暴力」だけで挑んできている。


「トドメだ、アレクサンドラ! 俺たちの愛の共同作業コンビネーションを見せてやろう!」


「ええ、初めての共同作業ね!」


 私たちは、ふらつくドラゴンの尻尾と首をそれぞれ掴んだ。


「せーのっ!」


 ブンッ!


 私たちはドラゴンを雑巾のように絞り上げると、そのまま回転を始めた。  ハンマー投げの要領だ。


 ブン! ブン! ブン! ブンッ!!


 遠心力でドラゴンの顔が歪む。  回転速度が上がり、竜巻が発生して周囲の瓦礫を吹き飛ばしていく。


「いっけええええええええ!!」


 手を離す。  ドラゴンは一直線に空の彼方へ――キラリと光る星になるまで飛んでいった。


「……ナイスフォーム」


「あなたこそ」


 静寂が戻った王都で、私とジークフリート様は、互いの上腕二頭筋を称え合うポーズ(ダブルバイセップス)を決めたのだった。


          ◇


「ま、待ってくれアレクサンドラ!」


 すべてが片付いた後。  帰ろうとする私に、フレデリック王子が縋り付いてきた。  その顔はやつれ、目にはクマができている。


「私が間違っていた! 婚約破棄は撤回する! だから戻ってきてくれ! 君がいないと、この国は財政破綻してしまうんだ!」


「財政破綻?」


 私は足を止めた。


「そ、そうだ! 君は今まで、城壁の修繕も、跳ね橋の上げ下げも、五千人分の騎士団の炊き出しも、すべて『筋トレになるから』と言って一人でやっていただろう!?」


 言われてみれば、そうだったかもしれない。  業者に頼むと金がかかるし、私のデッドリフトの重量更新にちょうどよかったからだ。


「君がいなくなってから、それらを維持するために新たに作業員を三百人雇う羽目になった! 人件費だけで国庫が空っぽだ!」


「あら、雇用が生まれてよかったではありませんか」


「よくない! 支払いをするための**『王家の巨大金庫』の扉が開かないんだ!**」


 王子が涙ながらに叫ぶ。


「あの金庫、百年以上前の錆びついた代物で、君しかハンドルを回せなかっただろう!? 爆破魔法を使ってもビクともしないんだ!  金庫が開かないから給料も払えない、兵士たちがストライキを起こしているんだよぉ!!」


 私は呆れた。  あの金庫のハンドル、確かに少し固かった(推定握力120kg必要)が、まさかあれが開かないとは。


 つまり、今の王家は**『金はあるのに取り出せない』**という、物理的な詰み状態にあるわけだ。


 私は冷めた目で王子を見下ろした。  そして、傍らに転がっていた巨大な岩(ドラゴンの落下で崩れた城壁の一部)を指差した。


「殿下。復縁をご希望でしたら、まずその岩を持ち上げてください」


「は? いや、無理だろあんなの……数百キロはあるぞ」


「そうですか」


 私はため息をついた。


「自分の体重の三倍も持てない男に、一国を背負うなんて無理ですわ」


 私はジークフリート様の腕に抱きついた。  彼の腕は、その岩よりも硬く、頼もしい。


「それに私、もうこの人と『筋肉の誓い』を交わしましたので」


「き、筋肉の誓い……?」


「ええ。死が二人を分かつまで、あるいは筋肉が分解カタボリックするまで、共に鍛え続けると誓ったのです」


 私は王子に背を向けた。


「さようなら、殿下。あ、そうそう。王都の復興には人手がいるでしょう?」


「え?」


「瓦礫の撤去、石材の運搬……最高の筋トレメニューがたくさんありますわ。殿下もリリア様も、ゼロから体を鍛え直すいい機会です。頑張ってくださいね」


 呆然とする王子を残し、私たちは走り出した。  帰りの移動手段も、もちろん「投擲」だ。


 ◇


 数年後。  北の辺境マッスルヘイムは、大陸最強の軍事国家として名を馳せていた。


 国民全員がマッチョ。  畑を耕す農夫の背中は鬼のようであり、パンを捏ねるパン屋の握力はリンゴを粉砕する。


 そんな国の中心で、私とジークフリート様は今日も元気に叫んでいた。


「あと三回! 追い込んで!」


「ぬんっ! ウェイトが重いぞ、アレクサンドラ!」


 裏切らないのは筋肉だけ。  そして、筋肉で結ばれた絆もまた、決して千切れることはないのだ。


 私の幸せな毎日は、まだ始まったばかりである。



読んでいただきありがとうございます。


ぜひリアクションや評価をして頂きたいです!

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― 新着の感想 ―
あの~……背中に鬼を背負っているなんて……どこの最凶キャラですか?! 何時の日か黒い道着を着た天を背負う方との「死合い」と書く試合を観て観たいものです。
やはり筋肉……!筋肉は全てを解決する……!
よし! ドラゴンも鍛え上げよう! 鍛え上がったあかつきにはあの曲を歌わせよう! 『マッチョ・ドラゴン』、かの昭和平成の名レスラーの黒歴史を。
感想一覧
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