7.世にも不可解な落とし物
上杉龍也が小学生高学年時代の頃の話である。
ある夏の日、上杉家は海沿いのキャンプ場に遊びに来ていた。家族揃ってバーベキューを食べ、花火で遊び、ぐっすり眠った次の日の朝、龍也は美那に起こされた。美那は朝の海岸を散歩したいと言い出したのだ。龍也は幼い美那の手を引いてテントから抜け出し海岸に向かった。
朝の海岸は人気が少なく海も穏やかだった。上杉兄妹は静かな海岸をのんびりと歩きながら波打ち際を注視しながら歩いた。狙いは珍しい貝殻だ。貝殻を採取してキャンプの思い出にするのだ。
そんなことを考えながら海岸を散策していると波打ち際に光るなにかがあった。なんだろうと思い龍也と美那はそれに近づいて、それを拾い上げてみた。そこにはガラスの瓶のようなものだった。中身には手紙のようなものが入っていた。
その頃の龍也は好奇心旺盛だったので瓶の栓を開け手紙のようなものを取り出してみた。
その手紙にはこう書いてあった。
「はずれ」
はずれである。
どこかにあたりと書いてある手紙が入った瓶があるのか? 龍也は子供ながらに考えて波打ち際を捜索した。その成果は貝殻がたくさんとシーグラス少々、異国から流れ着いたと思われるシャンプーの容器などであった。結局手紙の入った瓶は見つからなかった。それでも賢明に探しているうちに上杉兄妹を探しに来た両親に見つかりテントに戻った。
キャンプに戻ってからも龍也は時々、はずれと書かれた瓶入りの手紙を考えていた。
はずれと書いた手紙が入った瓶を流した人は何を考えていたのかは全ては謎である。