5.上杉美那の宝箱
幼稚園時代に見たアニメの影響だろうか、上杉美那は宝箱に関心を持っていた。
宝箱という言葉にはどこかキラキラしたものを感じる。美那は宝箱を手に入れる機会をずっと伺っていた。しかし、美那と宝箱を手に入れる縁には恵まれてこなかった。
そんな美那に転機が訪れたのは小学3年生のときだった。
「夏休みの図画工作で好きなものを作ろう」
担任の先生から宿題が発表されたとき美那に天啓が閃いた。
宝箱を自作すればいい!
上杉美那は早速、100円ショップに飛んだ。
「美那、夏休みの宿題に使うやつはこれで全部なのか?」
付き添いの兄、龍也は美那にこれが全部かと確認しした。
「お兄ちゃん、これで全部だよ」
美那は龍也に必要な材料は全部揃ったと言った。
材料が揃えば後は工作だ。
美那は材料を手早く組み立てていった。具体的には貯金箱の表面に板切れを接着剤で張り付けて行って宝箱風にしていく。
宝箱の接着剤が乾いたら別に用意していた海賊旗を宝箱に差し込んだら夏休みの図画工作は完成した。
「私だけの宝箱!」
美那は高揚感に溢れてた。
◆◆◆◆◆
その日、美那は夢を見た。
「俺たち海賊!」
「俺たち海賊!」
美那は海賊団に囲まれていた!
「俺たち海賊!」
「俺たち海賊!」
美那も海賊と同じようにレスポンスする!
すると遠くの海から巨大な船がやってきた!
「見ろ!時空海軍だ!」
「海賊を取り締まりに来たぞ」
たちまちのうちに海賊と海軍が入り乱れる乱戦に突入した!
美那は海軍船目掛けて大砲を狙い撃とうする!
すると海面が盛り上がり何かが出てきた!
「これは伝説の海神、西郷ポセイドンさんだ!」
ポセイドンの咆哮が響き渡る!
「俺たち海賊……俺たち海賊」
美那の部屋の様子を見に来た龍也は寝言を呟く美那を目撃した。
龍也は全てを察して静かに部屋のドアを閉めた。