3.サマーキャンプの伝統行事
夏休み、上杉龍也と美那の兄妹はサマーキャンプに参加するためにキャンプ場に来ていた。
午前中は勉強を集中してやり、午後はアクティビティで大いに遊んだ。
自由時間になった頃、サマーキャンプの参加生徒である小林がこんなことをいい出した。
「このサマーキャンプの伝統で夜中にババ抜きをして負けた者には罰ゲームで一発芸をしてもらうことになってある」
「……マジかよ」
サマーキャンプの参加者はざわめいた。
「先輩たちはみんなやったらしい……これは通過儀礼なんだ」
サマーキャンプの通過儀礼ということで逆らえず、龍也たちはチームを組んでババ抜きをすることになった。
龍也の組は4人でババ抜きだ。
メンバーは上杉龍也、青野、中嶋、新名の4人だ。
「自分が負けた時のために今のうちに一発芸のネタを考えておけよ」
中嶋の言葉に全員緊張が走る。闇のゲームが始まろうとしていた。
◆◆◆◆◆
「くっ」
上杉龍也にとって大変な不利な状況が続いていた。
ババ抜きは中嶋が早々に上がり、続いて青野が2番目に新名との3位争いをしていた。
「上杉くん……顔色が青いよ」
新名が龍也に精神的な揺さぶりをかけていた。龍也の手にはトランプカードが残り2枚、新名も2枚だ。
このターンで確実にババ抜きが決着する。すなわち、新名と龍也が罰ゲームの一発芸を受けるということだ。
(この勝負、絶対に負けられない!)
泣いても笑ってもこれが最後の戦いになると龍也たちは確信した!
「さて、上杉くん、トランプを引くんだ!」
新名は余裕たっぷりな表情でカードを見せつけている!
(新名の手の内にはジョーカーがある……ジョーカーを引けば俺は確実に敗北する!)
龍也のトランプを握る手に冷や汗が流れる。右のトランプか左のトランプか。どちらかがジョーカーだ!
新名は龍也を煽るように右のトランプを前に出した!
(裏をかいて左にジョーカーか……さらにその裏をかき右にジョーカーか)
龍也は焦った!
「ええい! ままよ!」
龍也は意を決して左のトランプを引いた!そして龍也が驚愕した!
「ジョーカーだ!」
崩れ落ちる龍也!新名は勝利を確信したように微笑んだ!
ババ抜きの勝負はついに決した。新名は次の手番でジョーカーを回避し龍也は敗北したのだ。
「上杉、一発芸を期待しているよ」
龍也の目の前が真っ暗になった!