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第8話 ルーンとリーン。

 お金を渡せば一目散で買出しに行った。

 俺としては、手ごろな瓦礫に腰を降ろしてその場に待つことにした。


『一緒に着いて来てくれないの?』

『盗んじゃうかもよ?』


 等と言われたりもしたが。


「良いから行って来い。俺の分も適当に頼む」


 俺は手振りでさっさと行けと振り払った。

 別に帰ってこなくても良い。

 それはそれで、サイコロの()()が良かったわけであり。

 俺だって別に()()な魔法使いなんていう大それた存在でもない。


 迷宮に挑む者達の中で一番大事な物はなにか?

 実力か? 技術か? はたまた知識か?

 そんなもの深層では使()()()すらならない。

 死ぬときはあっさり死ぬ。灰になるときは灰になる。

 壁にめり込むときはめり込む。


 そんな迷宮で一番大事なのは()だ。


 勿論、技術も実力も要るだろう。だが、それは最低ラインの話だ。

 そんなものあって当たり前。生きるためには何事も必要。

 当たり前の事を当たり前にこなしての迷宮なわけだ。

 迷宮の深層には碌な事しかおきない。

 それこそ何度()()()()があるかもわからないくらいだ。

 深層に進むたびに理不尽な死が襲い掛かってくる。

 本当に碌でもないところだ。


 閑話休題はなしがそれたな


 先ほどつかったサイコロは迷宮産のアイテムの一つだ。

 まさに願掛けにはうってつけ。

 深層でたまに手に入る代物の一つで、これといって効果があるわけでもない。ただ、迷宮に深く入り浸ると、誰が人で誰が魔物かなんてのは区別がつきにくくなるため、そういったときにコミュニケーションの一環としても使用したりする。

 現在においては、そんな使用者も稀有かもしれないが。

 果たして今に至って深層に沼っていうる冒険者がどれだけいることか……。


 いや、今も居るだろうな。それこそ沼の様に。

 深層に取り憑かれる者達は後を絶たないのだから。

 俺みたいに不死になって永遠に挑み続けるものもいるだろう。

 本当に碌な奴がいない。




 程なくして、嬉しそうに二人が戻ってきた。

 なにやら様子が少しおかしい気もする。

 買ってきたそれをこれ見よがしと上にあげて見せる。


「沢山貰えたよ!」

「それは良かったなルーン」

「いっぱい買えた!」

「それは良かったなリーン」


 大きな木の入れ物に沢山の串焼きを持って。

 子供達から一本受け取り、噛み締める。

 二人は不思議そうに俺を見つめる。


「おじさん、頭良いの?」

 と、ルーン。

「お母さんでも名前間違う事あるよ?」

 と、リーンが気になる事を言う。


 塩味が少し強いがそれなりには美味しい。

 まあ、この身に至っては食事なんて不必要ではあるが。

 ……よくよく考えてみれば久々の食事だったか。

 毎日食べていた食事も、食べる必要さを忘れてしまうなんてのはとことん終わってるな俺も。

 味をかみ締めながら、二人の視線を感じる。


「碌でもない魔法使いっていうのは、そういう生き物なんだ。

 あと、俺の名前はユルムンガルド。ガルドだ。

 おじさんではない。年齢で物事を考えるなら、むしろおじいさんの域だ。

 お腹が空いているのに食べないのか?」

「「食べる!」」


 俺の言葉を合図に子供達は串焼きを手にとって頬張りはじめた。


「急いで食べて喉に詰まらせるなよ」


****


 お腹が膨れたところで、当たり障りの無い会話をする。

二人は最近ここに来たらしい。

 元は冒険者の子供だったが、片親の母親が迷宮で行方不明になって彷徨ってたそうだ。

 迷宮に挑む者の中では日常的にある話だった。

 今も昔もかわらないものだ。

 

「お母さんは沢山の魔物に夢中で穴に落ちちゃったって」

()()()()がいっぱいのところ」

 ルーンの言葉にリーンが続けて言う。


「いつの話だ?」

「一週間くらい前」

「何層まで潜ってたんだ?」

「三層っていってた」


 そこで俺は疑問に思ったことを口にする。


「それは……誰から聞いたんだ?」

「「………」」


 二人は困ったように顔をしかめた。

 何か言いづらいことがあるのだろうか?


 二人の話してくる内容を整理して分かる事は、現在位置は迷宮にしてもまだ序の口の所。

 もし三層で問題が起きたとして、悪くて五層、良くて四層……。

 三層にある罠は落とし穴が主体だからだ。

 そして落とし穴の結果で最悪なのが六六六層か。

 ちなみに六六六層は最下層というわけでもない。

 正確には悪魔達が集う層があるというだけだ。

 悪魔が沢山出てくるこの層は戻る為にはそれ相応の方法が必要だ。

 地獄の層とも言われている。

 初見で戻れる冒険者は奇跡に等しい。

 まあ、()があればどうとでもなるが。


「でも、お母さんはまだ生きてるって」

()()()くれば助かるって頭の中で声が聞こえた」


 思わず俺は串を落としてしまった。

 なるほど、聞こえたか。

 それで俺が視認できるわけだ。


 見た目も、魔力量もただの子供。

 その辺にいる獣人の子供達で変わりはしない。

 

 違う点はただ一つだ。

 子供達はきっと()()()んだ。

 ()()()()()()()()()と。

 ()()()()()()()と。

 それが願望とも知れずに。


 結局、外に出る前から、俺に対しても迷宮からの小言がある様だ。

 全く……嫌な運命シナリオだ。

 となると、だ。

俺自身がオーブから解放されたのにも何かしらの小言がありそうだ。

 この件だけで終わってくれれば良いが。


「その声は……何か大事な数字を言ってないか?」


 もしも、俺の考えも見据えているのなら、これでわかる。


「寅の七の七から穴に落ちたって」

「寅の七の七ってなんだろう。全然わからない」

「いや、十分だ。それだけ分かれば良い」


 寅というのは十二支の事。

 十二支の三つ目にあたるので、三層になる。

 実際は迷宮に降りていくと分かるのだが階層ごとにそういったマークが階段に入っている。あくまで()()()までの話だが。


 七の七。これはとある座標を示している。

 冒険始めたてのときは、誰しもが迷宮のマップを作るのに勤しんだものだ。

 ただ、これもあんまり意味の無いマップが多かったりするので阿鼻叫喚するのだが。


 さて、虎の七の七。ここには落とし穴に落ちる部屋がある。

 多分だが、大勢の魔物に追い込まれたのか、はたまた逆に追い込んでいたのか。

 結果的に落とし穴に落ちてしまったのだろう。


 次に落ちた先だが……。()()()()

ここは一番()()()()部類なんだろうな。

 普通なら落ちた先は四層か五層になる。

 三層までいっていた冒険者であれば、状況によっては四層も五層もそこまで酷くはない。今の冒険者がどの程度の強さかは分からないが……。


 さて、気になる言葉があったわけだ。

 ()()()()

 四層も五層も赤い部屋は存在しない。

 そこで導き出されるのはもっとも運がない層だ。


 きっと()は閉まっているのだろう。

 そして部屋の中で耐えているに違いない。

 フロアの中に悪魔が居たら終わってた人生もあっただろう。

 だが、そうはならなかった。

 ()は悪かったが、良かった。

 後は、どれだけそこで耐えていられるかだ。


「腹ごなしもした。話も聞いた。

 これからやる事も分かった」


 俺は立ち上がり土埃を払う。


「さて、碌でもない魔法使いと一緒に迎えにいこうか。

 二人の()()とやらを探しにね」

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