第7話 本当に碌でもない。
昔は栄えていたであろう、旧市街を彷徨う魔法使い。
頭からスッポリとフードを被り、顔を隠すように杖をついて歩く姿は、冒険者というより危険人物にも見えなくも無いが、人通りの少ないスラム街の様なここでは、誰からも何も騒がれる事はなかった。
と、いうか。
騒がれないように、見られても良いように認識の阻害を与える魔法を使ってみて実験をしているのだが、どうにか問題はなさそうだった。
しかしながら、魔法の影響は強過ぎるのか、それ以外の何かなのか、空返事しか返ってこない。
「こんにちわ」
「ああ、どうも……」
「今日はいい天気だね」
「そうだな……」
等など、帰ってくる返事は曖昧なものばかりだった。
使っておいてなんだが、これだと状況が把握しにくいのもある。
どこかに良い使える人材が欲しいところだが。
手っ取り早く人攫いをするのは良くない。
強制的に相手の記憶を無理に引き出すのも良くない。
これは過去の経験で分かった事だ。
できれば恩を売って、持ちつ持たれつの人材が欲しいところだ。
自分が表に出て色々調べるのは多分平気だとは思うが、あれから何年も経ってるのは迷宮の知識から理解はしている。
それだけ経過もしていれば、俺の存在なんて忘れ去られて明白なわけだが、どういう経緯で俺が封印されていたオーブが売りに出されたのかが少しだけ気にはなる。
まあ、分かれば良し。分からなければ別に良しとも思わないでもないが。
物思いに耽りながら、歩いて数刻。
大体の旧市街を把握していく。
人通りが少なく、壊れた廃墟に点々と浮浪者が住み着いている感じは、今も昔も変わらない。冒険者崩れや、夢破れた人々が最後に寄り添う場所の様なものだ。
ただ、以前より生気を感じない。
もう少し反応が良い気もした。
まあ、こことて、誰かが仕切っているに違いは無いのだと思うが。
ふと、ローブを引っ張られた。
何事かと顔を下に向けてみると、子供が二人。
耳が少し上に突き出ているボサボサ頭の獣人の子供達だ。
顔作りがそっくりな所を見ると双子かもしれない。
迂闊にもほどがあるが、悪意を感じられなかった。
魔法を過信しすぎたか。ある意味でよくない傾向。
足を止め、俺が目を向ける。
認識の阻害の魔法を超えてくる現地人との対面だった。
「これは驚いた。何用かな?」
「ねえねえ。おじさん何か食べるものくれない?」
「何か食べ物をくれない?」
「食べ物か……。生憎そういった物を持っていない……が」
少しくたくたの服装からして、孤児なのだろうか?
においも少しきつい。
だが、面白いと俺は思った。
どういう経緯にせよ、自分の魔法を見破られたのだ。
俺が生きていた時代には無い何らかの方法が出来たようだ。
興味が湧いた。
スラム街の住人ですら、これならば、今の世の中は魔法に長けている輩もいるのかもしれない。
「そうだな……。良し、これで決めよう」
俺はローブの中から何かを出すようにサイコロを一つ取り出した。
「食べ物は無いが、俺を見つけられたお前達に対して……。
どれ、運命を占ってやろう」
「食べ物が良いな」
「運命って何?」
「はははっ。まあ、良い目が出れば食べ物くらいの駄賃はやろう」
そういって、俺はサイコロを投げた。
投げられた小さな六面体が地面を蹴る様に転がる。
「良い目出た?」
「美味しいもの食べれる?」
獣人の子供達が投げられたサイコロの目を見つめる。
六の目が空を見上げた。
「六の目か、とても良いんじゃないか?
一よりかは全然良い。
はたして、これが良い目になるのかは、お前達次第だ」
転がったサイコロを拾って俺は二人に近づく。
しゃがんで子供達の目線に合わせて、二人に問う。
「まずは自己紹介だ。
俺は見ての通りの碌でもない魔法使いのそうだな……。
ユルムンガルドだ。ガルドとでも呼んでくれ。
さて、そちらは?」
「ルーン」
「リーン」
「左がルーン。右がリーンか、良い名だ。
短い間になるか、この縁が長い間になるかわからないがよろしくな」
そこでどちらかのお腹の音がなった。
本当にお腹が空いているらしい。
「ははは、まずは腹ごしらえといこうか。
さて、二人とも買い物をした事は?」
俺は貨幣を数枚取り出して二人に渡した。