第6話 魔法使いとして。
迷宮に魅入られた魔法使いの狂気なんて者は碌なものじゃない。
それは身をもって知っている訳で、店の主人を延々と演じてこの牢獄から出れないのは面白みに欠ける。
折角封印から解かれたのであれば、この都市がどう変わったのか?
迷宮がどう変異しているのか知りたい事は尽きない。
いや、大体は知っているわけだが。人だったことへの性かこの目で確かめたい部分はある。
それが迷宮や、もしくは人々の意思で俺が動かされている結果になったとしても、他の意思によって動かされていたとしても、俺自身に嫌な感情も存在しなかった。
問題は、どうやってこの店の呪縛から解き放たれるかだが……。
曰く付きの身としては、まず人の形、ないし人の見た目に戻る必要がある。
人でも亜人でも見た目で問題がなければ何でも良いが。それ以外の生物だと外で出歩くには忍びないし、何より外聞が悪いのはいただけない。会話も出来なければ面白みに欠けるし、それこそ、スライムの様な液体が人の形をとって、スキップでもしてればそれは、倒されるべき魔物以外の何者でもないだろう。
魔法使いなんていう、危ない輩だったからこそ、身辺の大事さは十分に理解している。いや、理解するに至ったというべきかもしれないが。
理解出来てないからこそ迷宮をでて暴れる結果になり、封印されるに至ったわけで……。
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まず、魔法使いとして魔法が使えるのかではあるが、それは問題なく使えた。
いや、言い直そう。
問題しかない。
まず、魔法を使う上で、大事な事は魔力を使えるかに至るわけだが、この身になってからの魔力の許容量が測りきれなかった。
本来であれば、魔法を極限まで行使すれば、魔法が使える限界がでてくるわけだが、まったくその感覚を得られない。それこそ湯水の如く使える状態だ。
これはもう、迷宮の存在自体が俺そのものといっても良いかもしれないが。
逆を言えば迷宮にとって俺という存在を止められれば一瞬で灰と化しえないかもしれない。
ので、まずは迷宮から魔力を間借りさせてもらうことにした。
この身がどれだけ耐えられるか不明ではあったが、それはそれで、魔法使いとしての知識をフル活用させてもらい、自分の限界を超えるであろう魔力部分を全て別の空間に集めて固めておく事にした。
こうすることで、必要な分をそこから補えば良いわけだが……。
俺以外の何者のかの存在が、魔力があるその空間にアクセスした場合、どうなるのか?
それは俺にも分からないが、何せ自分の作り出した空間に誰かを招いた事もないし、勝手に入ってこられた事もない。
不法侵入が出来るとすれば、それはきっと俺以上の厄災クラスの魔法使いか、奪われた魔力を取立てに来た迷宮の意思くらいだろう。
しかしながら、俺という存在と彼という存在の繋がりを切り離すのは惜しいわけで、そこで、俺は彼と分離するに当たって、彼を親として、俺を子としての役割に偽装することにした。
これにより、買取もそのまま残す事が出来るし、何かあれば小言の一つでももらう事が出来るであろう。勿論、迷宮が何かを言ってくればの話でもあるが。
実質彼から分離する事で、魔法使いの俺は外に出歩ける事を確認できた。
そうして、そのスライムの様な姿も人間へと変異させる事に成功する。
元から動物や、魔物に変異するなんてのはお手のものだったあたり、やはり
真理を追求する魔法使いというのは本当に碌でもないのだ。
まあ、これでも真理の全てを会得していないわけでもあるが。
人としてはもう、破綻しているのではないかとおもう。
人ですらもうないわけだが。