第4話 真相についていけない 。
彼の思考から、今までの全容が分かってしまった俺は頭を抱えていた。魔法使いになって、魔法の真理を探究していた身としてもだ。
まさか迷宮が願いを叶える器そのものだったとは思わなかった。
真相はこうだった。
昔昔、そうそれは昔の話だった。
迷宮も何もないただの荒れ果てた道のりに、誰かが思った。
『この辺で休める場所が欲しい』
それはほんの些細な願望だった。
それだけなら何も起きなかった。
ところが、そこを通る旅人達は事あるごとに思った。
『この辺で休めると楽が出来る』
『ここいらで寝泊りをしたい』
『休憩がしたい』
それらの想いがその地域に留まり塊となって増えていった。
休みやすい木々が生え、小さな池が出来、増えた願望は塊となり、それは魔力の元になり、その場に留まった。
そうして、誰かの、何かしらの、思いに答えていった。
そしてそれらの声に、冒険者がいたのかもしれない。
『この辺に迷宮でもあればな』と。
あとはとんとん拍子で色んな願いを叶えられた。
迷宮があるのだから財宝もあるはず。
良いものも、悪いものも。
迷宮があるのだから、良くも悪くも魔物も居るはず。
罠もあれば、奇跡もあるだろう。
迷宮があるのだから、見たこともない景色がそこにあるはず。
良いものも、悪いものも。
これでもかと、過去から現在もなお、迷宮は願いをかなえている。
もう、ここまでくると迷宮というなの作られた神様だ。
ただ、そんな願いを叶える迷宮にも何度かの繁栄と衰退がある。
おびただしい魔物が出てきて人々を狩りつくしたり。
どこぞと知れぬ魔法使いの所為で滅びかけたり。
名も知れぬ英雄が幾重にも生まれては消えている。
そして、それらの想いが積み重なり、今にいたるわけだ。
今では大人しい姿になっているだけで、迷宮を探索する者がいる限り欲望は消えないし、何度でも危機は訪れるだろう。
そう、厄災は何度でも訪れるのだから。
それが、冒険者の想いが綴る迷宮の怖いところなのかもしれない。
それでも、この迷宮都市には希望もあるだろう。
パンドラの箱の片隅には必ず希望があるように。
それが人に向けての希望か?
迷宮への希望なのかは誰にも分からないかもしれないが。