第3話 覚醒に至る……。
呪物専門店の店主ともあろう厄災が、買い取ったオーブによって魂を上書きされてしまうとは誰が思ったであろうか。
もはや出落ちも良い所である。
彼にとって、迷宮の品々を集めて吸収していて、それこそ千年以上もここに踏みとどまって以来の大惨事で、俺にとっての不幸か幸運の始まりでもある。
いや、この場合は幸福の始まりなのか?
答えは誰にも分からないかもしれない。
神様だって、これにはおやおやっとミスした様な顔をしたかもしれない。
さて、まずは俺という人物の紹介といこう。
俺とは、今机の上に転がっているオーブに魂ごと封印されていた人物で、所謂、この迷宮都市においての厄介者でもある。
何をどうして、封印されていたのかを掻い摘んで言わせてもらえれば、迷宮で魔法の真髄を得るために全てを投げ捨てた結果、死の概念を超えることに至り、危ない魔法使いの厄災認定をくらったのである。
迷宮に篭って、篭って、知識を得て外に出て、魔法の実験をした結果、迷宮都市が滅びかけたのは申し訳なかったと思うが反省はしていない。
要は、マトモな魔法使いではないのでしょうがないきもする。
封印されて当たり前だろう。
反省はしてるが、反省できる頭も失ったような感覚とでもいえばいいのか……。
まあ、若気の至りである。若くないけど。
次に彼に関してだが、こちらはもっと狂気の産物だった。
なんと人ですらなかった。
冒険者が生んだシステムとでも言うべきだろうか……。
いや、この場合マッチポンプとでも呼ばせてもらったほうが良いのか……。
つまるところ、彼は冒険者が迷宮に願って作り出した奇跡の産物で、はるか昔から呪われた品々を買い取るヤバイ奴だったのだ。
そんなわけで、彼であり俺である魔法使いは困り果てていた。
果たして、これは人と呼べるのか?
それとも魔法使いと呼べるのか?
それとも……魔法生物と呼べるのか?
迷宮の枠組みからも魔法使いの枠組みからも解き放たれたような……。
俺にしても彼にしても、複雑な心境だった。