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第1話 最初に何も無かった。
最初にここには何も無かった。
ただ、ただ、薄汚れた大地と乾いた森が存在していただけだった。
それはどこにでもあるような自然でもあったし。
そこには何にもこれといって特徴があるところでもなかった。
本当に何も無かった場所だった。
ある時、旅人がそこを通った。
そこにはやはり何も無かった。
いつものように旅人が通るだけのそんな景色。
ふと、旅人が気がつく。
はて?
こんなところに洞窟があったのか? と。
いつも何もない道のりに湧いて出た洞穴は。
誰かを誘うようにそこに現れた。