卍 【シンウルトラマン】と庵野秀明について小話 極力ネタバレ避け 卍
さあ、みんな大好き庵野監督の【シンウルトラマン】、公開されましたよ!
わたしは映画を観る際できるかぎりネタバレを仕込んで臨むのですが、それはナゼかというと「こんな映画なのかな?」と事前予測を立てた上でそれを上回る出来だと嬉しいからです。
わたしごときが予想できてしまったら凡作に違いないですからね。
その点、ここ数年の庵野監督作品(たった2本とは言え)はつねに凡人の予測を超えてきますから、【シンウルトラマン】も期待してました。
やはり明確なビジュアルイメージを堅持してるクリエイターの作品は、観てて気持ちがいいです。なにをすればいいのか、(自分が)なにを観たいのか承知している。
たとえば特撮とCG……怪獣やウルトラマンにわざわざラテックスの質感をあたえ、冒頭の山のセットもオリジナルの円谷特撮の「緑みどりした山と霞んだ空の色」に寄せている。
これで、コア観客ほど抱く「ウルトラマンはこういうものだ」という無意識レベルの先入観と地続きとなるのだ。結果イコール「観たかったモノ」になってる。
あまたの原典ありのリメイク作品にありがちな「違和感」がない。
ハリウッド厨やどこぞのゲーム会社のような、闇雲にハイエンドCGを拝む傾向とは無縁である。むしろ限られた予算内で最大限現実的な対処と言える。
解像度のみにこだわるのがいかに不毛なのかはここ20年のゲーム進化(とそれを大絶賛する声が意外と細い)と、ハリウッドがどんな凄い映画作っても「でもCGでしょ?」で済まされてしまうことから明確なのだが。
人間は面白けりゃドット絵ゲームでも生ポリゴンでも気にしないのだ。
だいたい解像度が大事なのなら手描きアニメなんてゴミのはずだが、そっちは誰も文句言わないでしょ?
ナゼなのか立ち止まって考えてみれば明白だと思う。
問題はCGの質ではなく、いかに面白いビジュアルを創造できるかなのよね。
古くは【スターウォーズ】冒頭の画面上からのしかかるスターデストロイヤーとか、【2001年宇宙の旅】の太陽と地球と月が並ぶタイトルバック……日本ならイデオンのクモ糸ミサイルや巨神兵のビームなど……インパクトのあるキービジュアルをいかにたくさん並べられるかが肝なのだ。
その次に役者の演技があり、脚本はその次である。ご大層なテーマなぞヒットしたら後付けすればいい。
最近の映画は洋の東西を問わずそのビジュアルインパクトに欠けている気がします。大作【ザ・バットマン】とかでさえ結局何がしたかったんだろ?と首をかしげることもしばしば。
庵野監督はその点、「こうであるべき」「こんなふうにしたらもっと良くなるかも」という勘所をよく分かってらっしゃる。
それだけに波長が合わない人は嫌だろうが、もとより「世界的ヒット」なんて最大公約数を狙っていないので、気が向いた人だけ観て、分かる人は分かるというネタに喜べばいいだけだ。
ま、監督は樋口真嗣さんでしたけど……【シンウルトラマン】は99%庵野監督でした。樋口監督は長澤まさみのところだけでしたね(笑)