一の三
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チョンマゲの身体から帯達が戻ってくる。どうやら帯が伸びた分は胴体の所から来ていたようで、川で濡れた帯が両腕を伝い帰っていく感触はまるで、身体の中にミミズでも入り込んだような感触で体中の毛が逆立ち、目が飛び出るほど開く。やがて、両腕の帯は足の踝にチロチロと当たる程の長さで身体に入り込むのを止めた。
「んん?どうした小僧?その様な難しい、糞でも踏んずけたような顔をしおって」
風に煽られ揺れていた白帯の先端が耳元にやってくると隠し話をするように喋りかけてくる。
「・・頭がこんがらがってる。野ざらしに殺されかけたり変な布切れが両腕にくっついてたりして、まるで夢物語みたいで~・・」
「ハハハッ!そうか貴様妖怪や神の類を見るのは初めてか?あのな、知らんかもしれんが今浮世には俺たちみたいな化け物が溢れかえってるのさ」
黒帯が大笑し、続けざまに聞き逃せない言葉を吐く。一人で喋り散らし、興奮しているのかウネウネと気持ちの悪い動きをしている。
「君らみたいなのが他にも居るの~。信じられない」
「ああ!!いるぜ!!そこら中にな!!浮世が乱れれば乱れるほど俺様達の世界からこっちにあふれ出ていく!!雨の様に降り注いで染み着いてくのさ!!」
「ワシらがこちらに訪れたのはそれが理由よ」
「どういう事。それはもしかしてこの身体に入り込んだのに関係してるのかな~?」
「左様。ワシらは浮世に闊歩する化け物どもを元の場所に還す為、ワシらよりも位の高い神や妖怪に命じられ参上したのじゃ・・」
この話で帯達の目的はわかった。わかったような気がする。理解できない事は多いが・・
「それで、身体に入り込んだ訳は・・」
「たまたまじゃ。そこに転がっていたからよ・・」
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一先ず危機が去ると先ほどまで微塵も感じなかった痛みがやってくる。押さえつけられた首は内出血で黒く変色し、殴られた顔面は皮が所々擦り剝けていた。痛みに引っ張られるように身体を縮こませると、鼻の奥で固まりかけの鼻血がドロリと垂れる。これほどの痛みを感じなかったのは帯達と話し込んでいたせいか。それとも、戦いの興奮のせいだろうか。
「これは手ひどくやられたものだ。もしあの野ざらしが武器を持っておったら死んでおったな。小僧」
「なら~、もう少し早く助けてくれればよろしいのに」
「通過儀礼さ!!俺たちを宿すのに相応しいかを計ったのさ、結果は合格だ。はじめ、ただ首を絞められているのはがっかりだったがその後が良かった!!無様で!!」
鼻から垂れ口元をを伝う鼻血を左手で拭う。その際左腕が騒がしくなったが無視をし、痛む身体を背負うようにマツ兄の所へ向かう。羽織った着物はすっかり乾き夜風に靡く(なびく)踏み出した足と反対を出すと新たな痛みが生じ足をみると爪にひびが入り血がにじんでいた。
「うぅ~~足の指が・・。あ・・爪が捲れてる・・」
「爪だけではない、骨も折れとる。暴れた際に甲冑を蹴ったのじゃろうな・・」
「ああ、あの時か~。はぁぁ~~~」
大きなため息を吐く。これもこの帯達が早い段階で手を貸してくれていたら負わずに済んだ傷だ。少しの間白帯でも鼻を拭いてやろうかと葛藤したが、マツ兄を優先すると心に決めまた進み・・
「出来損ないには過ぎた両腕だな小僧・・・あのような小兵に手傷を負い。碌に歩くこともできんとは・・」
見据えるはマツ兄の直ぐ横、幾ら見上げても顔を拝めないほど背の高い・・何者かが佇んでいた。
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