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風神天翔記 ~とある修羅の転生事情~  作者: 仏ょも
四章。尾張統治と下準備編~
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???話。細川日記②

細川=サン。情報収集をする。

田吾作にこの辺りの情報を尋ねたら、やはりここは今浜の近くらしい。でもって私の格好は明らかに不審者なので、服を着るように頼まれてしまった。


まぁ頭に服を括りつけ、褌に刀なんか装備していたら不審者だよな。


そんなわけでとりあえず服を着て次の目的地を求めて情報収集をしようとしたのだが……


「いや~オラたちは自分の村と海(琵琶湖)のことしか知らねぇだよ」


とハッキリと言われてしまった。私もすっかり忘れていたが、この時代の普通の村人と言うのはこう言うモノなのだ。


勝手に移住されたら労働力が減ることになるから、例え川を挟んだ隣の村が裕福だとしても名主は村人にその情報を与えようとはしないし、生活に余裕が無いから外の情報を集めもしない。


外から来る商人の言うことを真に受けて都会に出れば、確実に騙されて終わるから話し半分にしか聞かないようにしているんだよな。


その為領民を増やすには、他所から来るのを待つのではなく、買って来るか地道に増えるのを待つしかない。


とは言え他所から買ってきても、基本的にこの時代の農民は閉鎖的だから迎え入れる方も、基本的にどこの人間も余所者を嫌う風潮が強い。更に国人や地侍だって草やら何やらを警戒するから、治安を良くしても移住と言うのは難しいのだ。


それはともかくとして。


「ではこの辺に賊などは居るか?」


一般市民にとって一番恐ろしいのは負けそうな領主によって戦に徴兵されることだが、その次に怖いのが落ち武者等に代表される賊だ。彼らは農民を当たり前に搾取の対象にしか見て居ないので、容赦と言うモノが無い。


故に連中は当たり前に奪い、犯し、殺す。農民の目の前で来年用に保存してある種籾も喰らうモヒカンだ。(落ち武者にとっては自分たちを倒した敵の領地なので、更に遠慮が無い)


だからこそ連中の情報は村々で共有しているし、他の事を気にしない農民もこの噂には神経を尖らせているはずであり、賊を殺してその財を奪うのは戦国の基本なので、ソレを実行しようと思っていたのだが。


「あぁこの辺には賊や横暴な地侍さんはいねぇだよ」


田吾作は晴れやかな顔でそう告げてきた。


「ほう。賊が居ないとは……菅領代殿、否、浅井家の施政か?」


田吾作の顔を見れば嘘を吐いているようには見えない。つまり治安に関しては相当に気合を入れているのだろう。もしかしたら浅井なら……だが浅井は朽木に近すぎるし将来義昭を奉じることになる。しかし灯台下暗しとも言う。だがあまりにも近すぎてそのまま捕まる可能性も……


己の去就を考える藤孝。浅井久政には顔もバレているので、そのまま捕まる可能性の方が高いと言うことに気付く。結局自分は畿内には居られないのだ。


「いんや、殿様じゃねぇだよ。美人局って妖怪のせいだ」


「……美人局?」


そんな自嘲の笑みを浮かべる藤孝の耳に入って来たのは、農民が言うには違和感が有り過ぎる単語であった。しかし妖怪って?一気に現実に引き戻された藤孝だが、田吾作は「そんなの関係ねぇ!」と言わんばかりに話を進めていく。


「んだ。……ここ数年の話なんだけんど、なんでも茶髪の綺麗なおベベを着た娘っ子が一人で歩いてるんだと」


「ほう」


「その娘っ子に声を掛けたら最後、何処からか鬼みてぇなのが現れて、声を掛けたヤツらを皆殺しにするだ!」


「はぁ」


「場合によっては賊の本拠地まで攻め入ったり、地侍様のところに乗り込んだり、関所まで破壊して蓄えていたモノを奪っていくだ!」


怖えぇ怖えぇと身を震わせる田吾作だが……それは妖怪と言うよりは普通の美人局では無いのか?いや、デートか何かで機嫌が良い女性に声を掛けられた彼氏か旦那がキレただけでは?


普通にこの辺の地侍や関所の兵士が二人旅をしてる相手を、さらに女性を見てそのまま通すなんてことは無いだろう。複数の小汚い男共に絡まれたらそりゃキレるだろうし、その辺の下っ端を殺しても後から逆恨みをされて狙われる可能性を考慮すれば、大本を狙うのは間違っていないだろう。


関所の破壊云々も、自分でも出来なくは無いだろうし。


「そんなわけで、旅人やその辺の村人に悪ぃコトするような連中は、皆その美人局って妖怪に殺されちまったんだ!」


「そ、そうか」


思わず声を掛ける程の美貌なのか、それとも他に何か理由が有るのかは不明だが、とりあえず素行が悪いからこそその女性に声を掛けてしまう。その結果その連中が女性と共にいる男性に殺されると言う流れが出来上がってしまっていたわけだ。


最終的に素行の悪い連中が居なくなり、治安が改善されたと。


真剣な顔で美人局を連呼する田吾作。おそらくその言葉は商人から聞いたのだろうが、彼の中では美人局と言うのは「悪ぃ子はいねがぁ」と言って地侍や賊を狙う「なまはげ」のような存在らしい。


賊はともかく侍まで殺すのだから、一介の農民に過ぎない田吾作にしてみたら感謝や尊敬ではなく恐怖の対象となっているのだろう。


藤孝なりにその流れを把握したが……とは言え、収入源の一つと見込んでいた賊が居ないとなると困ったことになる。まぁ義輝にも教えていなかったへそくりが有るので、無一文では無い。その為、すぐに餓える心配が無いと言うのが救いかもしれない。


「話はわかった。私も気を付けよう。しかしとりあえず腹が減ってきたのだが。この辺に飯を食わせる場所は無いか?」


それと眠い。何せ一晩中泳いできたからな。


「飯?う~ん。名主様のところに行けば良いかもなぁ」


ふむ、やはり店は無いか。まぁこの地域の名主のところでは私の顔がバレることもあるまいよ。


「名主か。その家はどちらに」


「あぁこの道を真っ直ぐ行けば大きな家が有るでな、ソレだぁよ」


「そうか、忝い」


田吾作としては正体不明なお侍を家に上げる気は無いし、さりげなくコチラを伺っている連中も「さっさと他所へやってくれ!」と目で訴えかけてきていることも有る。


そんな事情が有るので、名主に全部丸投げしてしまおうと判断した田吾作が悪人とかそう言うことでは無いと言うことを、ここに明言しておく。



まぁその辺の村人が情報を持ってるわけないよね!


物語とかでは「なら家に来い」ってなるかも知れませんが、この時代の方々の価値観を考えれば、普通は家に上げたりはしません。


余所者だし、名前も名乗ってないし、敵方の人間だと困るしって感じですね。


もしも家に招待するなら、良い服と刀を持つ彼に対する追い剥ぎでしょう。


茶髪の娘さんに美人局をさせていた外道とは一体……ってお話。



続く……と思う。



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