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風神天翔記 ~とある修羅の転生事情~  作者: 仏ょも
四章。尾張統治と下準備編~
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71話。未来知識と内政チート?の巻

前話のあらすじ


「さぁ、血湧き肉躍る咒血肉躙のパーリーの始まりだ!」

「う~む。今は判断がつかぬわ。姫様や、とりあえず体に障るので今日はこの辺にしたらどうかの?」


細かいことは不明だが、後から来た信長からも「容赦するな」と指示を受けたため、自らが雇い入れた小者が問題を起こしたことが確定したとあって、利家直々の容赦無い尋問が行われること数刻。(途中で憂さ晴らしも兼ねて成政も参加したが)


紹策は様々な情報を垂れ流す小者を見て「いいぞもっとやれ!」と言う気持ちで一杯だが、信長や義鎮はそうも言っていられない。


そして一緒に尋問を眺めていた信長が今も険しい目つきで小者を睨む義鎮に対し、体調に配慮した提案を行う。だがその提案をした信長にしても小者の話す内容があまりにも荒唐無稽過ぎて、情報の整理に少し時間が欲しいと思っていたのも事実である。


「……そうね」


義鎮としても、いきなり島津義弘の名を挙げた正体不明の小者から情報を絞り取るのは必須だが、こいつのせいで自分の中にいる子に差し障りが出ては千寿に合わせる顔がないと言うこともあり、素直に信長の意見に従うことにした。


とは言えココで尋問が終わるなどという事はない。あくまで彼女たちがこの場を去ると言うだけだ。


「利家、成政。私たちは戻るけど、貴方たちはこいつを休ませることなく情報を搾り取りなさい。そしてその内容は貴方たちが書き記すこと。他の者は絶対に近づけるな。もちろんその情報は他言無用よ。口外したら……宦官にするからね」


「「はっ!」」


義鎮からの命令に対し、利家や成政を始めとした元破落戸の馬廻りたちは思わず内股になりながらも返事をする。ここで「自分の主君は信長だから姫様の命令には従えません!」とか抜かす者がいなかったのは信長にとって良い事なのか悪いことなのか……肝心の信長も違和感を覚えていない時点で答えは決まっているようなものだろう。



………………


「いや、しかし、何と言いますか」


地下室から出て、姫様用にと用意された畳の間に戻った一同。先の尋問の結果に対して言葉を選ぶ神屋にしても、はっきり言って意味がわからないとしか言い様が無いので、どう判断して良いのか分からない。


「神屋の気持ちはわかる。『何故島津義弘の名を知っているのか?』の問いに対する答えが『今から400~500年後の世界から来たから』じゃからのぉ」


突然こんな事を言われて「すごーい」と言える人間がどれだけいるだろう。普通なら頭おかしいんじゃないか?で終わるのだが、何せあの小者は島津義弘以外にも、島津貴久や島津義久、さらに次男の島津歳久と次女の島津家久の名まで挙げている。


その上で他の西国の大名として、大友は元より信長ですら聞いたことがない肥後の相良・阿蘇。肥前の有馬に龍造寺の名を出し、中国の毛利と言う最近になって名を聞くようになった大名の名まで挙げてくる始末である。


東においても上杉だの武田だの北条と言った有名どころだけでなく奥州の伊達や最上、南部と言った名まで知っているのだ。


これは15~16歳の子供が知る知識量を遥かに超えている。その為まるっきりの嘘とも断定できないのだ。とりあえずは日ノ本の地図を書かせ、博多の商人である紹策や畿内を巡っていた義鎮がその内容を確認する予定だが、もしもあの小者が言うことが本当だとしたらその知識は値千金どころでは無い。


「そういえば利家から紹介された際には、何やら珍しい鋤のようなモノを作ったとか?」


「うむ!あとで見せるつもりじゃったんで持ってきておる!中々に画期的なモノじゃぞ!」


考え込んでいた義鎮が尋ねると、あえて元気に振舞おうとしているのか、ややテンションを高くして答える信長。いや、単純に新しいモノが好きだという可能性も否めないが。


小者が作ったものは当然と言うかなんと言うか、農家の味方にして後家殺しの異名を誇った千歯こきだ。今の織田家であれば女性に与える仕事はいくらでもあるので、単純に脱穀の際の労力の効率化が出来ると言うのは大きいだろう。


「それに硝石を田舎の家の近くで作っていたとか?あとでそれを信長様に見せて歓心を買う予定だったのでしょうが……」


彼の者の尋問で紹策が一番驚いたのはコレだ。未来の事を知っていようが九州の事を知っていようが、それだけでは意味がない。ただの狂人の妄想で済む話だが、商品があると言うなら話は別である。


「ソレが本当ならば歓心どころの話ではないわ!持っとる知識を全部吐き出させた上で他所に逃げられんように足を壊して監禁するに決まっとるじゃろうに、その程度もわからんと言うのがのぉ」


何と言うか地に足が着いていないような印象を受ける。


そもそも何を企んでいるか?の問いに対して『信長の下で出世したい!』と叫び、その為に密かに硝石やら椎茸の栽培をしていたことを訴える姿に嘘は無いのだろう。まぁ咄嗟に出てきた信長の名が『お殿様』や『信長様』ではなく『信長』と呼び捨てであった時点で、彼がただの尾張の農民では無いと言うのは確定している。


利家や成政だって、信長を呼ぶ際に咄嗟に出てくるのは『若殿』だし、他の農民や兵士を問い詰めたならば、出てくるのは『若様』か『殿様』が普通だ。さらに成政が言うには彼は信長を『御屋形様』と呼んでいたらしい。


守護代の代官に過ぎない信長は当然屋形号をもっていないし、信長をそのように呼ぶ者など尾張には一人もいない。そもそも利家も成政も屋形号の意味すら知らないのに、一体誰から教わったというのか。


そして硝石の造り方や椎茸の栽培方法まで知っているときた。コレが本当であれば、織田家だけではなく日ノ本全体に信じられない影響を及ぼすことになるだろう。あまりにも事が重大過ぎて、これから信長自身が確認の為に小者の家が有ると言う尾張中村に行く必要まで出てきてしまった。


このような者の存在を今まで放置していたのか?と言われれば信長の面目は丸潰れだが、そもそもいきなりこんな事を言われても誰も信じることはなかっただろうし、義鎮も信長も紹策もアレが島津義弘の名を知っていたと言う事実が有ったからこそ、その言葉に信憑性を認めるのだ。


その為義鎮には現状で信長を責める気はない。


まぁ利家については多少の折檻が必要だと思っているが、それはそれである。


「今後を考えれば最初に足を奪って正解だったわね」


「ですなぁ。流石は姫様です」


昔から千寿に「密偵を見つけたらまずは足を破壊するように」と薫陶を受けていた義鎮はその意味を正しく理解できたと満足げに頷き、襖越しに小者の足を狙うと言う離れ業を普通に行う彼女を手放しで褒める紹策。


信長も手間が省けたのは事実だが、その程度の扱いで良いのじゃろうか?と思うが、今はそれどころではない。


「しかし間違っている情報もありましたから、完全に信用するのは危険ですよ?」


情報は確かにあった。だがそれを盲信するのは危険だと紹策は釘を刺す。本来なら武家が滅ぼうがなんだろうが関係ないので、知識だけよこせ!と言うところだが、姫様になにかあったら千寿が怒るだろうし、現状尾張で新規の炉を建造中の彼女からすればここで織田弾正忠家が傾かれても困る。


何よりせっかくの姫様からのお手付きの許可が無くなれば、自分には後がないと言うのも大きい。


「そうね。島津はともかくとして、大友家の当主は宗麟なんてヤツじゃないし、アレが大友の代表的な家臣として名を挙げた立花道雪や高橋紹運と言うのも、私が知る限りは居ないわ。まぁ特徴を聞けば立花道雪と言うのは戸次鑑連のことみたいだけどね」


確かに高橋鑑種は重臣ではあるが大友を代表するか?と言われたら否だ。豊州三老に比べればどうしても格が落ちるし、立花に関しても立花鑑載が居るが、彼の場合若い時に雷に打たれた等という話は聞かない。戸次家の当主である鑑連が今更立花を名乗る理由も無いので、これは勘違いと言えるだろう。


そんな感じで、島津の代表的な家臣を聞かれた際には親指新納だの川上久朗の名を出した時には「まさか!」と思ったが、続く大友家があまりにもお粗末だったり、とは言え鑑連に関しては名前以外は正しいと言う落差も彼女らが悩む一因となっていた。


「ふむぅ。九州の事は知らんが、少なくとも織田家の筆頭家老は今も昔も柴田勝家なんぞではないし、森だの丹羽は武衛様に仕える者の名じゃよ。その名を知っているだけでも問題じゃが、随分と偏った知識であることは間違いはないのぉ」


信長は信長で織田を取り巻く状況を聞いたが、どうにもちぐはぐだ。柴田勝家はすでに討ち死にしているし、三河の主と言っていた松平も既に滅んでいる。かと思えば今川義元と氏真の名を知り、武田信玄と言う、千寿の側室になって名を変えたばかりの彼女の最新情報まで掴んでいる。


「そうね。どう考えても歪すぎるわ。けど輪廻転生するにしても普通は108年後とかなんでしょ?それに昔に遡るなんてありえないと考えるのが普通。ならば考えられるのは……夢、かしら?」


「あぁ確かに。転生って普通は後の世ですもんね。では胡蝶の夢ですか?それか巫女さんの言う啓示のような感じで知識を身につけたとお考えですか?」


「えぇ、そう考えれば情報が曖昧なのもなんとなく説明がつくと思うのよねぇ」


このご時世神社仏閣が力を持っていることからわかるように、神だの仏の存在は当たり前に信じられていたし、輪廻転生と言う概念も当たり前に存在する。そして夢で啓示を受けると言うのも無い話ではない。


「あぁ、夢じゃから内容も曖昧じゃし、色々混ざる可能性もあると。うむ、それなら有り得るかもしれんが……」


現実主義者の信長も夢を見たことが無いとは言わないし、夢の内容を全て把握出来ているわけでもない。だがただの夢で片付けて良い内容では無いのもまた事実。


「まずは早速その中村に行くとするわい。それで、モノの確認のために紹策にも来てもらいたいのじゃが、良いか?」


そのためにはまず確認である。馬廻りに関しては尋問が有るが、半数ほど連れて行けば良いだろう。それに中村は鳴海の近くなので恒興にも人を出させれば良い。


「無論お供しましょ」


ただ、信長は火薬は知っていても硝石と言うものをしっかり見たことがないので、どうしても彼女の目が必要になる。紹策にしてみても今まで明だの南蛮人から買っていた硝石が自作出来ると言うなら、為替や鉱山や鉄に続き新たな金脈を得ることになる。その為「着いて来るな!」と言われても無理やり着いて行くつもりであった。


「それじゃその間、コッチは尋問ね。まずは日ノ本の地図と著名な大名の分布図の作成。それからそれぞれの家に関することで何をどう見たのか。真偽を確かめる為には織田弾正忠家と大友家が一番でしょうけど……」


大友に関しては知りたいような知りたくないような。そんな微妙な感じになるが、今はそのような事を言っている場合ではないと考え直す。


「じゃったら、まずは織田家をお願いしたいのぉ。筆頭家老が柴田と聞いた時点で興味を無くしてしもうたが、もしやしたら何やら有益な情報があるやも知れぬでな」


「……そうね。そうするわ」


真偽はともかく情報は有って困るものではない。家臣の反乱だの斎藤義龍が攻めてくるだのと言った事はモノの流れを見ればそのような情報に頼らずとも理解できるが、数年後の出来事になるとどうしても後手を踏む可能性がある。


しかし今九州の情報を得たところで何が出来るわけでもないし、特に今の織田家における一番の懸念は尾張ではなく千寿が居る信濃である。そのことを考えれば、どんな細かい情報でも欲しいと言うのが信長と義鎮の共通の願いでもある。


とは言え信長が自分に気を遣ってくれたのも事実であるので、ここは素直に感謝するべきところであろう。


「あ、貴女の旦那さんについてもちゃんと確認するから心配しないでね」


「余計なお世話じゃよ?!」


紹策は「もったない」と言う顔をしているが、この意見を曲げる気はない。そりゃあ信長とて知りたくないと言えば嘘になる。しかし、だからと言って馬廻りの誰かとか言われても困るし、そもそも他人に知られたい内容でもない。


その為、尋問を担当する利家や成政に「聞くなよ!絶対に聞くなよ!」と釘を刺して行くことになるのだが、そもそも言われた2人はそんな事を考えもしなかったことなので、わざわざ信長が釘を刺して行ったことの意味を疑ってしまう。


「なぁ、これって聞いとけってことだと思うか?」


「……わかんね。とりあえず姫様が聞けって言ってきたら聞こうか」


そうすりゃ言い訳もできるしな。と彼らは納得することにしたそうだ。


ここで信長の秘密が暴かれたかどうか、それは義鎮と馬廻りだけが知る事である。



血湧き肉躍る咒血肉躙の尋問シーンは当然カット。え?小者の細かい尋問シーン?そんなの見たい?


色々知ったノッブ一同。ここから内政チートが始まってしまうのか?!ってお話。



宣伝のようなものはお休み。


……ポイント玉はホント欲しい。



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― 新着の感想 ―
[一言] 〉それに昔に遡るなんてありえないと考えるのが普通。  かなりのレアケースだけど未来から過去に転生することはたまにあるそうで。  ただ前世占いなどの観測者が時系列的に過去に当たる場合、「未来軸…
[一言] まず、信長が女性な時点でなんか違うなって気づけ! でもあとはありそう 異世界召喚で勇者とその仲間で騙される人と似たような 転生!?キターーー 知識チートで一財産とか無双できる!って思う迂闊な…
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