56話。蝮の胎動の巻
前半美濃の蝮=サン。後半ノッブ。
とうとう奴が?
日々増していく信長の影響力によってどうやら清須の大和守や岩倉の伊勢守は頭がおかしくなったらしい。
美濃の蝮こと斎藤道三は、何もせずとも尾張の情報を自分に流してくる大和守や伊勢守を「奴等こそ真のうつけ」と断定した。
「信長が瀬戸方面の国人に対して焼き物に使う土の採掘を命じたじゃと?」
それはそれとして、道三は美濃の盟主として流されてきた情報の精査をしなくてはならない。
「はっ」
しかし奴らめ、わざわざ信長の情報を儂に流すとは……儂を己の味方と勘違いしておるのか?儂は信長の敵やも知れぬが、連中の味方でもないぞ。むしろ敵じゃ。この程度のことすら理解出来んなら、もし儂が尾張を呑み込んだなら、連中は真っ先に殺さねばならんな。
自分たちには大和守や伊勢守、更に言えば武衛すら生かす理由などない。にも関わらず美濃勢を使って己を守ろうとしている愚か者共をうつけと言わず何と呼べと言うのか。
まぁ後で滅ぼすうつけ共はさておき、問題は信長の行動である。今までのことから奴は無駄なことはしないと言うのは既にわかっている。故に何かしらの意味は有るのだろうが……
だがこの内容に関してはどうにも理解が及ばない。何せただ土を掘らせるだけでなく、量に応じて銭まで払うときた。つまり土を買うという事だろう。
あやつはまたわけのわからんことを……これだから何時まで経っても「うつけ」と呼ばれるのだ…と言いたいところだが、ここで蝮は「これは岩倉を誘い出すための罠だ」と気付く。
「ふむ、それは伊勢守には話を通しておらんのじゃろう?」
半ば確信を込めた口調で尋ねれば、その情報を持ってきた者は然りと頷き、儂の考えを肯定した。
「その通りです。なんでも岩倉の伊勢守家を通さず、直接瀬戸の国人に命じたそうです。そのせいで伊勢守家の中では信長に抗議すべきだという声が上がっております」
「はんっ抗議かよ」
思わず鼻で笑ってしまう。抗議なんぞしたところで信長が止まることはないだろう。そもそも北は岩倉の伊勢守家で、南は清須大和守の管轄と言うのは連中の住み分けから生まれたモノ。言うなれば不文律であって、明確な法でも何でもない。
その証拠に先代の弾正忠の全盛期の頃など、尾張国内の国人衆は南北関係なくあやつに従っておったからな。まぁ国人どころか伊勢守も従っておったが…その事実がある以上、信長に抗議したところで意味はない。それならと中途半端に国人の統制を強めれば信長の元に逃げられてしまう。
そうなればそのまま信長が採掘可能となるので、伊勢守には文句を言う以外に出来ることは無くなる。まさか土を理由に戦はできんじゃろう。
しかしそうなると信長に対して泣き寝入りをしたと見なされて求心力が落ちるわな。たかが土、されど土よ。やはり信長はうつけではないな。
とりあえず信長の次の狙いが岩倉なのはわかった。後の問題は信長がこの土で何をする気なのかと言う事だ。まさか買い取った土をそのまま捨てることは無いだろう。わざわざ焼き物に使われる土なのだからその辺の土とは違うのだろうし、那古野で焼き物を作る気か?
新たな収入源となる商品の開発と考えれば無くは無いかもしれんが…少なくとも今のところ中立寄りな岩倉との間に火種を作ることはできたが、ソレ以外でも何かありそうじゃな。
「しかし、次の狙いは清須かと思いきや岩倉か。これは、あわよくば儂らも誘う気じゃな?」
今この時期に動けば美濃は揺れる。この動きが儂らが尾張を併呑するための戦ならともかく、岩倉への手伝い戦など自殺行為よ。つまりこれは、儂らが信長の勢力拡大を危惧しておることを前提とし、自らを餌として儂らにその自殺行為に及ばせようとする罠か。
このようにあからさまに岩倉を狙えば、儂らが何らかの干渉をするだろうと判断して練られた策じゃな。
「はっ。おそらくはそうでしょう。その場合、我らが休戦の約定に反して動いたとして塩の取引も止まりますし、我々との戦の口実にもなりますな」
うむ。美濃が攻められたと言うならまだしも、現状ではなぁ。儂らもしっかりと塩の恩恵に預かっとるし、ここで下手に動けば美濃が割れる。なにせただでさえ儂と義龍の間で緊張があるのだ。他所の後継者争いに干渉するのは大名としては当然のこと。そのための前準備…と言うか揺さぶりの一手よな。
…尾張から塩を買った段階で、儂らは楔を打ち込まれておったわ。ここは素直に見事と褒めよう。
それに義龍ものぉ…あやつは現状ではどうしようもないわい。ここで岩倉に味方して信長の勢力拡大を防ぐ!と声高に語り、尾張と美濃の間に緊張状態を作ることで公然と兵を集める気じゃろう。で、尾張に向かうと見せかけて狙いは儂の居る稲葉山というわけじゃ。
六角や朝倉も義龍に接触しておるようじゃしな。道利や日根野を誅したことで一時は儂に反発する動きも沈静化したが、やはり恐怖だけでは国は纏まらん。誰も彼もが「次は自分か」と怯えておるわ。儂が恐怖を与え、義龍が徳で治めるという形が出来れば最良じゃったが…あの阿呆が。すでに自分が土岐の人間じゃと勘違いしておる。
これは近江に逃げて儂を憎む頼芸を利用した六角や越前の土岐の旧臣による干渉か?越前の場合は金吾めが動いておるのは間違いないが…あやつもすでに死にかけ故、越前朝倉を残す為に必死になっておるようじゃな。
ふっ…だが肝心の的を違えておることには気付いておらん。今更義龍を煽ったところで儂がアレに兵を持たせる事などないわ。あるとすればそれはアレを殺す埋伏の毒よ。
義龍もなぁ。尾張との戦がなければ美濃は纏まらんと思っておったのじゃろうが、残念ながら今の美濃はそこそこに纏まっておる。よって此度の信長の誘いに関しては乗らねば良いだけよ。
そうしてまずは美濃を完全に掌握すればよい、その後尾張を飲み込めるようになったら一撃で飲み込む。されば美濃が割れることなく尾張も併呑できよう。
なにせ現状六角は畿内、朝倉は加賀に集中するため美濃に直接手を出す気はないし、信濃は武田と長尾で揺れておって当分片付かん。それなら尾張に全力を注げる我らと今川や長島を敵にしている織田の戦いよ。これでは勝負にならんだろうよ。
大前提として今川や長島と共同戦線を張る必要が有るが、今川はすでに織田と戦っているので機嫌を損ねんような交渉をすれば良いだけじゃし、長島は三河の一向宗を潰されて面白くは思っておらぬ。
そしてこのまま信長が尾張を統一しようとも、あやつは国人を殺しすぎじゃ。五月蝿い国人は居なくなるやもしれんが、あれではまともな統治はできん。
故に信長が完全に尾張を纏めようが、その統治は穴だらけの隙だらけ。美濃、駿河、伊勢、長島を敵に回してはどうしようもあるまいよ。儂らは海を手に入れさえすれば、国人たちも織田の塩に頼る必要がなくなる。この事実をもって織田によって打ち込まれた楔を破壊し、儂らが動けぬと思い油断している信長を叩き潰す!
その為には今は動かん。岩倉?勝手に死ね。そうやって信長の見せかけだけの所領を増やせば良い。なにせその所領が広がれば広がるほどに強度は下がり、純度が薄まるのだからな。
「とりあえず今回、岩倉が何を言っても儂らは動かん。…儂の考えがわかるか?」
この者、先程から中々鋭いところを見せておる。義龍の周囲の者共は完全に人選に失敗したが、コヤツなら龍重の近習として仕えさせても良いかもしれぬな。
「はっ!「今は美濃を割る危険を冒してまで、基盤が脆弱でいつでも潰せる織田信長に対して干渉する必要はなし。尾張には干渉せず美濃の掌握を優先する」と言うことでしょうか?」
うむ!儂の考えておったことを完璧に理解しておる!
「見事よ。確かお主は明智兵庫の……」
「はっ!明智光安が甥、光秀と申します!」
「そうか、その名はしかと覚えた。追って何かしらの仕事を与えるので、精進せよ」
「はっ!ありがたき幸せ!」
まずは実績を積ませてやろうではないか。その上で龍重の近習にし、いずれ美濃を背負う重臣へと成長してくれれば言うことはない。ふぅ儂も……まだまだ死ねんな。
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ふむぅ。美濃から使者が来たから、てっきり岩倉への干渉に対する警告か何かじゃと思ったんじゃがのぉ。
「蝮は動かんか…。吉弘殿の予想通りじゃな」
連中は大人しく儂の勢力拡大を認める…か。ここで意地でも儂の勢力の拡大を認めず、美濃が割れる可能性を覚悟した上で儂を潰しに来ると言う選択もあったにも関わらず、不戦の約定を優先し岩倉を潰すことを認めてくるとは。やはり蝮は儂らの現状を理解しておらぬな。
なにせ、もし我らの狙いを完璧に看破しておったら、ここで全力を持って儂を滅ぼすのが正解じゃったんじゃからのぉ。蝮めが中途半端に儂らの行動を読んだ結果が此度の静観よ。
「まぁ普通なら国人が減ったことで所領の統治が難しくなるって判断しますからね。弾正忠家の所領が広くなれば広くなるほど人材が不足して統治に穴が開くと思っているんでしょう」
姫様と交代するように戻ってきた恒興が蝮の判断をそう評価する。普通に考えればそうなんじゃろうな。
「ふん。所詮今まで所領を治めてきた尾張の国人なんぞ、今まで連中が「護衛崩れ」と馬鹿にしておった利家や成政が半年修行した結果にすら届かぬ無能ではないか。あやつ等が残っておる方が統治に穴が開くわい」
一番わかりやすいのが荒子の利春よな。あやつは儂を認めなんだ故に、荒子は取り潰して家督を利家に継がせた。そしてとりあえず代官として利家に荒子の統治の仕事をさせとるんじゃが……今の利家が数人の家来を使ってこなせる程度の仕事を、一体何人でしておったのやら。さらに隠し田や税の誤魔化しまでしおってからに…あのような連中なんざいらんわ。
「いやぁそれは利家とか成政以前に、普通に吉弘様と姫様の教えが凄いだけだと思いますけどね?」
恒興がどこか遠くを眺めながら乾いた笑いをしておるが、こやつは何だかんだでマシな方じゃったと思うんじゃがなぁ。
…少なくとも信長は恒興が姫様の鉄扇で殴り飛ばされるのは見たことがない。まぁそれはそれとして。
「無論それは否定せんぞ?じゃがそれにしたって連中は余りにもひどいじゃろ?連中は二言目には「自分がいなければまともな統治などできぬ!」とか騒いでおきながらこれじゃぞ?」
そうして信長が指し示したのは利家たちから上げられてきた不正の証拠の山、山、山。先代の頃、いやそれ以前から積み重ねられてきたコレは伝統で誤魔化して良いものではない。
信長とて領政に多少の余裕を持たせるのは必要だとはわかっているが、ここまで大量に不正をしつつ借財まで重ね、首が回らなくなれば主君に徳政令を申し入れると言う連中の厚顔無恥さはまったく理解できなかった。
「正直私の理解も超えてます。堀田様や大橋様が言うには、この中には踏み倒されること前提の借財も有るそうです。こういうのが無くなればもう少し税を支払えるとのことですが…」
「そりゃそうじゃろ。徳政令と言えば聞こえは良いかも知れんが、要するに借金の踏み倒しじゃものな。こんなんが定期的に行われとったらまともに税など払えんじゃろうて」
むしろソレがお前らに払う税だ!と言い切られてもおかしくないレベルである。尾張の下四郡の国人だけでコレなのだ。岩倉の伊勢守だの清須の大和守がどれだけ借財を抱えているか、正直に言えば怖くて確認もしたくない。
かと言って彼らを滅ぼしました。借財?知るか!なんて言って戦をして相手を滅ぼしていたら、商人は間違いなく敵に回るだろう。彼らにしても借財はできたら回収したいし、徳政令と言う踏み倒しもある意味で「統治者に対する貸し」である。それらを無にされて面白いはずがない。
だからこそ信長は堀田を始めとする津島の商人に対して、滅ぼした国人たちの借財の返済を行っている(流石に全額ではない)。これをすることで商人からの信用を得て、新たな借財(投資)を得ると言うのが狙いであるが、そのための調査の段階でコレなのだ。
ちなみに熱田に対してはそこまで行っていない。それは津島が港町で信長との付き合いも親密であったのに対し、熱田が門前町で、信秀や信行との付き合いは有ったが信長とはあまり付き合いが無かったからと言うのが大きい。また門前町としての権威を主張されたせいで借財をした際の細かい内容まで調査できず、向こうの言い分を信用することができなかったと言うのもある。
その結果、取り潰した国人の元に借財の証書があった場合、武具や着物などを差し押さえ現金化して支払いを行ったが、国人の元にその証書がない場合は商人の持つ証書の2割にも満たない額の支払いで済ませている。
ちなみに国人やその家族、家人を奴隷として売るのは千寿に禁じられていた。
もちろんその理由は「かわいそう」とか「人権が」と言うような現代社会的価値観ではない。もっと単純で、生かせば報復されるからだ。つまり「逆恨みだろうがなんだろうが恨みを抱いている人間を生かすな、しっかり殺せ」と言う鎌倉武士的発想である。
実際平家はそれで源頼朝や義経を生かして滅ぼされているし、史実の大友だって龍造寺を生かしたり、秋月を生かしたりしたが、最終的には背かれている。今の諸国の現状もそうだし、尾張だってそうだ。
信秀が仲裁を受けて降伏を認めた相手は軒並み本人や信長に背いている。中途半端に情けをかけて家を残すから戦が終わらないのだ。
ならば「中途半端に情けをかけるくらいなら殺せ。殺されても良いと思うような人間ならその危険性を理解した上で生かせ」と言うのは史実の大友家を知る千寿にとってはもはや常識であり、現在の尾張の状況を生み出した元凶を理解している信長にとっても非常にわかりやすい理屈であった。
とは言え、さすがに全ての関係者を連座させては人が居なくなるので、その辺の匙加減は信長の判断になるのだが。
「そうですよねぇ。そもそも国人共ってなんであんなに不正してるのに財がないんでしょうね?」
「アホじゃからじゃろ?無駄に良い家に住み、無駄に良いモノ食って、無駄に良い服を買って、無駄に豪華な鎧を買って、無駄に良い馬を買って、無駄に戦をして、無駄に土地を荒らす。これではいくら銭があっても足りんわ。こんな連中サッサと殺したほうが世のためじゃよ」
そんなわけで国人を殺すことには信長なりの理由が有るのだが、その際一切の容赦なく国人を殺すので、周囲からは「殺し過ぎ」と言われて恐れられている。そんな信長だが、国人領主たちからの評価と対称的に民からの評判はすこぶる良い。
彼らにしてみれば信長に派遣された代官は基本的に誤魔化しや不正をしないので必要以上の税を取らないし、戦もズルズルと引き摺らないで一発で終わらせるので犠牲や物資の浪費が少ないこと、さらに乱捕りを禁止していること、そして村がしている借財を立て替えていることが高評価なのだ。
勝ち戦に参加した兵士としては乱捕りを許されないのはやや不満ではあるが、信長もこれから自分が治める土地を乱捕りで荒らされては溜まったものではない。そのため戦に参加した者たちにはしっかりと給金を支払い、帰還時に色(塩や現金)を付けることで納得させていた。
これにより戦に敗れた者が治めていた土地の者も乱捕りによって犠牲になることがなくなるし、軍役の免除に始まる免税や村がしている借財の帳消し等の恩恵を受け、さらに先述したようなまともな施政が行われることになるので、よほど後ろめたいことをしているところの上層部の連中以外は概ね信長の施政には協力的だ。
ちなみにこの予算がどこから来るか?と言えば当然三河の一向宗の寺社である。長島や石山ほどではないが、数年に渡って一揆を行うだけの財が溜め込まれて来た本證寺、上宮寺、勝鬘寺の三社を始めとした本願寺系の寺社の全てを破却した千寿の下には、本證寺が1206年の開創から300年以上溜め込んできた三河の財が有った。
もちろん石山への送金や寺の改築やら何やらとそれなりの支出もあったので、帳簿の中の収入が丸々残っているわけではない。だが本證寺だけで数万貫を超える財があり、その半分を今川に渡しても一万貫以上、さらに他の寺社の分も合わせれば(こちらは今川に渡していない)その額は国人の借金を全て返済し、尾張や三河国内に新たな寺社を建立したり、その他の内政を行う運転資金にしたりするには十分すぎるほどである。
これらの潤沢な資金をもって政を回し、更に各地から人を買い集めているので、今後の尾張は無能な国人の恨みや恐怖ではなく、関東をはじめとした各地から買われてきた戦災被害者たちの恩によって纏め上げてられて行く事になる。
これは千寿が評した青州黄巾党を上回る組織の構築であり、信長を信仰する民による国造りである。その為、信長が尾張の支配地域を増やしたところで斎藤道三が望むような弱体化はない。
故に彼らが信長に勝てるのは今だけだ。領内の運営が軌道に乗る前に全てを投げ打って潰さなければ、いかに斎藤道三が美濃を一つにしても尾張を落とすことは出来なくなる。それを悟らせず、あえて岩倉にちょっかいをだして斎藤道三を警戒させたのが今回の策の肝なのだ。
「とにもかくにも領内の健全化じゃよ。国人や村が熱田や津島から借財しとる銭やらモノの情報を精査し、儂に従うならば返済すると言う形をとることで村々や商人からの信用を得る。さらに弾正少弼や兵部少輔の名を使って人を集めて教育して、そっからようやく尾張の統一じゃ。………まぁ今のままでも、平時ならそこそこの運営は出来るが、戦になると怪しいからのぉ」
さすがに現時点では戦と政の両立は不可能だ。(いざという時は林や平手を戻すことで対応は可能だが)それに千寿や姫様の教育なら半年でそれなりの人材が育つが、信長とすれば教育には少し余裕を持って1年は欲しいと思っている。
何せ千寿や姫様のソレは「これぞ詰め込み教育だ!」と言わんばかりの教育方針だし(そうしないと信秀の死に間に合わなかった)、有望な人材が育つ前に潰れても困る。更に京に居る林や平手が人材を発掘してくれるだろうと言う望みもある。そやつらの教育を行いつつ戦を行い、人材と所領の広さを比例させていくと言うのが理想だろう。
まぁ理想は所詮理想でしか無いのだが…
「三河は特に人が不足してますねぇ。一度戦になれば吉弘様がもう国人だろうが兵卒だろうがスパスパ斬り捨てるもんですから、国人が抵抗する前に兵士が国人を殺して命乞いしてくるんです。おかげで戦は無いし、周辺の村々も働き手に被害も何もなく普通に生活できてますから反乱の兆しはありません。結果として今の三河は非常に穏やかなんですけど、やっぱり国人を皆殺しにしてるので統治に関わる人材は足りてませんね」
あの御仁は何をしとるんじゃ…と言うかそれでも三河の政を滞りなく回しとるのは流石としか言えぬが、きちんと寝とるのかの?あぁいや、今は姫様がおるから大丈夫か。
「…その兵士や民の気持ちはわからんでもない。吉弘殿に対して最初に来るのは間違いなく恐怖なんじゃが、あの御仁はそれだけじゃないからのぉ。しかし姫様と吉弘殿の二人がおれば大した敵がいない三河の統治はそれほど難しくなさそうじゃが、やはり雑魚でも最低限の人手は必要と言うことかの?」
なんだかんだ言って民が求めているのは頼れる領主だし、一向宗から手に入れた銭もまだ余裕がある。あのお二人なら能力的には問題無かろうが、やはり人である以上それぞれの腕は二本しかないからの。出来ることには限界があるわな。
「そうですね。あまり雑魚だと困りますが、人手は必要でしょう。何せこのままでは姫様が…」
「ん?姫様?」
つい先日まで一緒におったが……なんか有ったか?
「『千寿が忙しすぎて子供が作れない!』とかなり不機嫌なんです…。このままでは利家や成政が首に縄をつけられて三河に連行されそうです」
「そんなん儂にどーしろと言うんじゃ…」
正直言ってそんな状態の姫様に近付きたくない。頼れる姉貴分であるが故にその怖さを知る信長は「例え尾張の政が滞ることになろうとも、向こうから連絡が来たら大人しく三河に人をやろう」そう決意したのであった。
ノッブの自滅因子がエントリー!
性別は男です。
尾張統一に向けて着々と下準備中のノッブ陣営。三河の本願寺系の資産が数万貫は流石に低すぎますが、石山に送ったり、色々使ってると言うことで何とか…。
あんまり多いとソレだけで全部解決しちゃいますからね!ってお話。
つーか国人は生かしておく価値無いでしょ?あいつら借金は踏み倒すし、約束は破るし、すぐに裏切りますからね。越中のステルス大名こと神保=サンとか酷いと思いませんか?この時代はアレが普通です。つまりさっさと殺さないと戦争が長引くだけです。
今回宣伝のようなものは無し。作者は夏祭りシーズンで疲れました……。




