54話。内政チートですかねぇ?③の巻
内政チート発動?
何度も言いますが千寿君のスタンスは「出来るならやれ」です。
嫌いな人は我慢せずに読み飛ばしでお願いします。
三河での根切りを終えたあたりで京から使者が来て、朝廷からは三河守の継承と弾正少弼への補任。幕府からは権兵部少輔への任官を打診されたとかで、随分と銭が飛ぶが大丈夫か?と思ってたんだがな。
「なんぼなしけん、溜め込み過ぎじゃなかやかねぇ」
うむ。この神屋紹策の言葉が全てだ。いや、本證寺の連中ときたら細目が売りの博多商人が目を見開くくらいに溜め込んでやがったんだよな。これがどのくらいの額かと言えば、目録として半分が記載された書状を見て太原雪斎も目を剥いたってくらいの額だ。
三河木綿だの味噌だの味噌溜まり(醤油の原型)だのの独占を考えればもう少し行けそうな気もするが、所詮は坊主だからな。商売と言う点では博多商人の足下にも及ばんよ。
とりあえずは三河の産業として木綿を解放するとしようか。残念ながら機織り機の作り方なんか知らんから、内政チートでもなんでもなく普通の生産量になるが、これが一般化したら千歯扱きもありかもしれん。今なら今川に伝えても問題無いし、労働力の確保はこのまま神屋に任せれば良い。
とは言え今のままだと神屋を働かせすぎだからな。そろそろ飴をやらねばなるまいて。
「もう少しすれば三河が落ち着くことになります。その前に駿河に行って鉱山の開発でもしてきますか?」
「ん~若殿様が狙っちる山は駿河とはちごうとるんやろ?なんしぇ誰も手ばつけやないっち言うてたとたいからね」
その通りだ。駿河の鉱山には既に今川が手を付けているので、俺が神屋に使った最初の謳い文句である「誰も手を付けていない鉱山」では無い。
「そうですね。鉱山として狙っているのは2つ。1つは普通の金鉱山。もう1つは耐火粘土が採れる鉱山です」
奥三河の津具鉱山と尾張の瀬戸鉱山。津具にはまだ手を出す気はないので、先に瀬戸だろう。岩倉を誘う口実にもなるしな。
「いやいや、普通ん金鉱山っちなしてしゅか?そいっち、耐火粘土?」
そう言われてもなぁ。俺としても普通の金鉱山としか言えんよ。それに耐火粘土を知らんのか?あの良くネタにされる「耐火レンガを造る際の材料に必要な耐火レンガ」の元じゃないか。アレが無いと反射炉も高炉も造れんだろ。いずれ南蛮吹きにも挑戦してもらう為には必要なモノだと思うんだがなぁ。
信長の勢力拡大に比例して着々と内政チートの土台が整っていくが、肝心の自分に鉱山開発に必要な技術や経験、知識が無いので、とりあえず鉱山に詳しい神屋の人間に任せるつもりだったのだが…どうも自分が知る鉱山の常識は彼女らの常識とはズレているらしい。
最終的には情報を与えれば勝手に最良のモノを開発するだろうし、特に問題無いだろうとは思っているのだが、どこまで情報を与えるかが問題だ。
とりあえず国外への銀の流出を抑えて貰うために、基礎的な情報を与えるとしよう。
「熱に強い土でしてね。ソレを焼いて造った石を加工して造る炉は、通常の炉よりも高い熱に耐えられるんだとか」
「はぁ…」
確かガラス製品とか作るのにも使うんだよな?そんなうろ覚えの知識を記憶の片隅から引っ張り出してくる千寿。それを見て紹策は「こん人はどっからこぎゃん知識ば得とるんやろ?」と不思議に思うが…態々深く突っ込んで嫌われるのも馬鹿らしいので、その気持ちをおくびにも出さずに千寿の言葉に相槌を打つ。
とは言え、それが何か?としか思えないのだが…
「話は変わりますが、明や南蛮の者たちが銅や銀の鉱石をそのまま買っていく理由をご存知ですかな?」
「え?あぁっと、明は銅銭ば造るからばいね?南蛮は…向こうで加工したばいほうの効率のよかからやないんやけどか?」
いきなり話題が変わったことに一瞬「は?急になんば言い出しゅんだ?」と思ったことをそのまま口に出すところであったが、相手は東国の田舎侍ではなく自分の博多言葉を理解出来る千寿である。彼にそんなことを言ったらどんな目に遭わされるかわかったものではないし、彼は無駄なことをしない。この質問にも何かしらの意味が有ると思って自分の知ってることを話したのだが、どうもそれは彼が望む答えでは無かったようだ。
「ふむ。間違ってはいませんが、それで全てではありません」
日本における鉱山開発の第一人者と言っても良い神屋がコレでは、やはり日本の鉱山関係者は知らないのだろう。そう考えると、今後の為にも彼女には是非新型の炉の開発をしてもらいたいところである。
「はぁ、そしたらなしやろうか?」
千寿の答えを聞き、距離を詰め小声で話してくる神屋紹策。普段は礼儀正しく一定の距離感を忘れないのだが、千寿から金の匂いを感じ取ったのだろう。匂いすら逃さんと言わんばかりの距離の詰め方だ。
「鉱石の中には金や銀が含まれているのですよ。そして我々では分離できませんが、向こうではソレが可能なのです。その為彼らは鉱石のまま買い漁り、向こうで金や銀を生み出すのですよ」
「ほんなこや?!」
「声が大きい。こんなことで嘘ついてもしょうがないでしょう?確か鉄、銅、銀、金とそれぞれ溶ける温度が違うんだとか?そして分離させるためにはその全てを溶かすことが出来る炉が必要になり、その炉を造る為に耐火粘土を使用して造った石が必要らしいですな」
千寿としてもかなりうろ覚えの知識なので、南蛮吹きと呼ばれる技術に耐火レンガで造った炉が必要かどうかは分かっていない。だが高炉や反射炉には絶対に必要なモノだと言うのは知っているので、開発したところで絶対に損にはならないし、その研究は100年後の日本の為にもなるだろうと考えている。
これは本多忠勝と言う武将を調べた際、間違いなく自分と同類であると確信し、それなら他にも居るだろうと判断したからこそ思いついたとも言える。…忠勝は幼少期実家で狂人扱いされていたが、千寿には彼が内政チートと呼ばれる行為をしようとしていたと言うことが分かっている。ならば他にも自分が知らないような技術を持った人間が居るかもしれないと考えるのは当たり前の話だろう。
で、普通ならそれを脅威と考え、本格的に動き出す前に殺そうとするか、味方に引き入れようとするのだろうが…千寿の考えは違う。「やりたければやれ」もしくは「やれるものならやれ」である。敵は弱いうちに殺すのは当たり前の話だが、戦争の継続による技術の研鑽と言う観点から言えば、多少は苦戦するべきだと言う考えもあるのだ。
実際、武田を打倒するために考案したと言われる鉄砲の三段撃ちは怪しいが、第一次木津川口の戦で村上水軍に破れた九鬼や信長が彼らを潰す為に造り上げたと言われる鉄甲船は実在したのだ。従来のモノで勝てないなら上を行くものを造る。当たり前のことだが、この発想は苦戦や超克すべき敵が居てこそのモノ。
それに敵勢力に自分と同じ存在が居て、さらに相手勢力が技術的に進歩していた場合だが…いきなり同じモノや近い水準のモノを造るのは当然不可能だ。ならば最低でも対抗出来るだけの土台は作っておきたいと考えていた。そうすればお互いがお互いを乗り越えようして成長を続けることが出来るようになるだろう。
つまり千寿にとっては、相手が同郷だろうがなんだろうが関係ない。せいぜい「頑張れ」と言う程度だろうか。そして味方ならまだしも、敵の勢力に所属しているならば基本的には殺すべき敵でしかないと言うことでもある。
その上、信長ではなく今川に天下を取らせようとしていることからもわかるように、千寿は仕えるべき主君を無理に天下人にしようと思っていない。結局のところ彼の中では姫様と2人で幸せに暮らせればそれでいいのだ。
ただ姫様の方が、千寿を浪人のまま腐らせることに責任を感じているからこうして織田に仕官しているだけの話であり、敵対勢力が内政チートや技術チートを駆使して織田を滅ぼそうとするなら、それはそれで構わない。
簡単に負けてやる気は無いが、それでも負けたのならばきっとそいつらが日本を纏めて戦国時代を終わらせるのだろう。その頃には自分も姫様も死んでるか良い歳だろうし隠居しても問題あるまい。子供に関しては…まぁその時次第としか言えないときっぱりと割り切っている。
だから現在千寿が狙う技術力の向上は純粋に織田の為でもあり、織田を脅かす敵へ発破をかける為のモノでもあり、織田を打ち破り天下を纏めた者に対するご祝儀のようなモノだ。
そして今の段階で金や銀の国外流出を抑えることが出来れば、その後の日本は自分が知る史実とは随分と違った物になるはずだと言う確信が有る。…家康を殺した時点で全然違うことになりそうな気がするが、歴史の強制力的なモノで似たような人物が生まれる可能性もあるし、そもそも技術の土台の発展は歴史の流れすら創ることが出来る。
ならばその流れを加速させ、将来日本を纏めた大名に鎖国以外の選択肢を用意しても良いだろう。
そんなわけで今回の情報のリークである。そもそも千寿は植民地政策を進める南蛮人は大嫌いだし、姫様がキリ○ト狂になられても困るので、連中が乗る船を1つ残らず叩き潰したいとすら考えている。だからこそ博多を代表する神屋に連中のあくどさを教え、南蛮人への信用を失墜させるとともに、連中が持つ技術を盗み出させようとしていた。
「ほーん。…連中め、やっちくれたとたいなぁ」
自分たちの情報不足が原因とは言え、今まで騙されていたのを面白いと感じるハズはない。それも博多を代表する豪商を自認する自分たちが、こうも簡単に手のひらで踊らされて居たと言うのは彼らの誇りに関わる問題だ。それを武士である千寿に指摘されたというのも微妙な点では有るが、彼女にとって千寿は特別な相手なので、彼を評価することはあっても逆恨みするようなことはない。
「それとついでにお教えしますが」
「なしけんしゅか?」
最初の鉱山の話では無くなっているが、千寿が言うことが本当ならば神屋は莫大な財の流出を食い止めることが出来る唯一の商人となる。堺や博多は元より、山口や府内、防津の商人から鉱石を買い漁り加工するだけで国外に流れていた財を独占出来るとなれば、その土地を持つ大名に配慮しなければならない鉱山よりも、確実に儲けが出るではないか。
そんな重要情報をくれた千寿からの追加情報だ、絶対に聞き逃してはいけない。先程よりもさらに距離を詰め、声を抑えて何が有るのか?と問いかける紹策に当時の問題で有った流出関連に関する情報を与える千寿。
「ルソンやマカオにおける金や銀の交換比率を確認してみると良いでしょう」
「……交換比率?」
これは神屋の利益がどうこうではない「南蛮人はタヒね。倭寇とか言って日本人になりすまして中国や朝鮮を荒らす明の海賊もタヒね」の精神である。ただ千寿はココが問題だったとは知っているが、実際の細かい数字までは理解してないので自分で調べてくれと言うように誘導した。
こうすることで自分達や他の勢力が天下を握った際、金や銀の交換比率を熟知している商人が居ると言うことになるし、それまでの間は為替において神屋の一人勝ちと言う飴を与えることも出来るわけである。
神屋にしてみてもこの話題は思いもしなかったことであるが、これ以上は自分で調べろと言われているのはわかる。それを理解した彼女の行動は早い。
「了解しとった。いりのっちうやね」
鉱石の件が本当ならば、まさしく一刻を争うべき事柄である。すぐに動くべきと判断した紹策は千寿に感謝の言葉を伝えると、足早に立ち去っていった。
後日、某所にて「あ~!あげなに近付けたんに、うちはなしてなんもしなかったん?!」と頭を抱えて転げ回る博多商人が居たらしいが、真偽の程は定かではない。
博多言葉はもんじ○うによる変換を使用してますので、実際の文法とは違う可能性も有ります。機械に頼るなんてだらしない作者だなぁと笑っていただければ幸いです。
そもそも作者の思う内政チートって言うのは、ズルというよりは不自然なモノだと思っています。例えば一介の高校生が機織り機や高炉の構造を理解していたり、商売の経験も伝手もないくせに米相場でボロ儲けしたり、南蛮吹きの具体的な原理まで理解しているようなことですね。
そりゃ普通は無理だろって思いませんか?
コレで言えば拙作の塩についても同じですね。元アラサーの千寿君が前世で何をしていたかによりますが…まぁ鎖国してた江戸時代に開発出来た技術なら室町末期でも出来なくは無いと思ってますが、それでもアレは立派なチートと言えます。まぁだから何だって話ですが。
ですが情報を持ってて、それを基に他人に何かをさせるのはまた別のことだと思うんです。
少なくとも現地の商人(能力と規模に信用が置けることが絶対条件)に情報を与えて鉱石の流出を防ぐのと、海外での交換比率を調べさせて金や銀の流出を防ぐのはやって然るべきことですし、ソレなら高校生でも不可能なことだとは思ってません。
それを商人を通さずに行って、生じる利益を独占するのは不可能だと思ってますが…
それはともかく、千寿君がやってるのは主にコレです。自分には出来ないし、周囲にも原理を理解してる者が居ないならどうしようもありませんが、少なくとも鉱山開発と海外との貿易に関しては神屋は日本における第一人者と言えますからね。
「情報をやるから後は調べて自分でやってくれ、あ、利益配分忘れんなよ?」って感じでしょうか。まぁ嫌いな人は嫌いでしょうから無理して作者の主張を理解しなくても大丈夫ですよ?
とりあえず、作者は特定の他人様の作品を否定するつもりはありません。他者様の作品には他者様の作品で基本的な前提条件が違うでしょう?前半の警告めいた内政チートに対する物言い等は拙作にて登場したホンダムのような転生者の行動に対する伏線ですってお話。
以下宣伝のようなもの
長「なんじゃ、作者はまたなんか言われたのかの?」
姫「あぁ、なんか言われてるみたいね」
長「別に読者殿が勝手に失礼だ何だと騒いでおるだけで、小説を書いてる作者様からのツッコミじゃないんじゃから、ほっとけば良いんじゃよ」
姫「そうよねぇ。他所の作者様からのツッコミが来たら謝罪すべきだし、誤解を招く文が有るなら訂正すべきだろうけど、読者さんが勝手に他の作者さんの意見を代弁するのは違うわよね?」
長「なんぞ向こうの方でも「作者の作品に似たのを書くのは失礼だ!」って話あったりするらしいが…」
姫「作者が知らないところで勝手にそんな話をされてもねぇ。別に失礼とは思ってないし?」
長「もともとアンチ・ヘイトの作品ばっかじゃからな。じゃから作者も自分の作品を批判されるのは良いのじゃよ。ただその内容があまりに的を外してるのが問題なんじゃな」
姫「うまく伝えきれてない作者の文才の無さも一因ではあるからなんとも言えないけどねぇ」
長「「まぁ嫌いな人は読み飛ばし!」で良いんじゃないかの?」
姫「結論はそうよね。絶対に見なさい!なんて言える立場じゃ無いんだし」
長「うむ!そういうことじゃて!そもそも50話まで見とる読者殿にしたら今更じゃがな」
姫「そうね。と、言うわけで、拙作を見てご不快になられるようでしたら、無理しないでくださいね?」
長「なんだかんだで作者ってば豆腐メンタルじゃからの!地味に凹むのじゃよ!」
こんな会話が有ったとか無かったとか。
いや、作者はマジで豆腐メンタルですので、読者様が「この作風は自分には合わないなぁ」と思ったら無理して閲覧しなくても大丈夫ですよ?それとできましたらツッコミもほどほどでお願いします。
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