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44話。ノッブ勝ったのにorzする?の巻

前話の続きです。


ギリギリ投稿が間に合いましたが、文章が粗いので修正の可能性大です!こんな作者で申し訳ございません!

さて、千寿に関してはコレで良いでしょう。…まさか林殿たちのような尾張の国人からみたら三河の運営が罰にしかならないなんて想定して無かったけど、千寿はここまで考えてたのかしら?


……うん。当たり前に考えてそうね。


千寿一人に全部をやらせる気は無いけど、組織作りに必要な草案とかは作ってもらった方が良いわよね?


ん~後の不安としては、三河の統治が成功した後に口出ししてくる奴らだけど…その時は尾張も統一出来てるでしょうし、信長から「尾張に専念しろ」って言って貰えば良いか。


それと家臣を集める必要があるわよね?ようやく千寿が何の柵もなく動けるんですもの。それを支える家臣団は必要不可欠。これから育てるのは当然としても、やっぱりそこそこ仕事が出来る奴が欲しいわ。


今の三河の連中は不要。一向門徒なんか邪魔だし、今回みたいな阿呆な戦を仕掛けてくるような連中は居ない方が良いもの。


今川や大和守家とかに乗せられたのか、自分達の政の失敗を誤魔化す為に尾張で乱捕りをしようとしたのかは知らないけど、そもそもの統治があまりにも稚拙過ぎる。だから今回の戦を名目にして、西三河の国人は全て排除するわ。


連中もねぇ。今川による干渉も有るでしょう、織田による侵略も有ったのでしょう。だけど、根本的なところがダメなのよ。何がダメって、田舎の国人にありがちなことなんだけど土地に縛られ過ぎ。それに一向門徒が多いし、そもそも松平の分家が多すぎるのよ。


それぞれに血縁関係が有って、全部が○○松平でしょ?どこの家でも宗家を名乗れそうだし、そのせいで無駄な権力争いが生じているのよ。何か別の名前を名乗らせなさいって話よね。


まぁ織田も似たようなモノだけど。


と言うか、そもそも信長のお父さんがね。代官の分際で子供が20以上って何よ?それぞれの子供に城だの土地を与える気だったとしたら、権力の分散にしかならないじゃない。


跡取りの数が少ないのは問題かも知れないけど、かといって多すぎたら別の問題が生まれるわ。


どうせ娘を武衛の子供や大和守の子に嫁がせて、いずれは実権を…とか考えてたんでしょうけど、今の弾正忠家にそれぞれを養うだけの甲斐性が有るの?


津島が有るからって言っても、所詮は田舎の湊町よ?そこから来る銭を全部家庭の維持に使われてもねぇ。


無駄な城だの館を作る余裕が有るなら、もっと建設的に使いなさいって話よね。まぁもしかしたら戦に負け続けたせいで考えが逃げに回った可能性もあるけど、それならさっさと隠居すべきだったわね。


グダグダと当主の座にしがみついて、何一つ解決しないまま銭だけ浪費して死んだ老害め。結果として信長がそのツケを払うことになったじゃない。


まぁ信長にしてみれば覇道の第一歩となる試練。ココで踏み出せるかどうか、そしてどう踏み出すか。それによってこれからの織田家の進む方向が決まるわ。


お父様と塩市丸と戦うことから逃げ出した私には信長の決定に口は挟めない。だから私に出来ることは、聞かれたときに私の意見を述べるだけ。


…指南役として、信長が必要以上に気に病むことが無いようにしないとって思ってるけど、なんだか大丈夫そうね?


何と言うか、ちょっと前までは意外と情に脆くて繊細なところも有ったと思うんだけど……ま、千寿の背中を追ってたら感傷なんか抱く余裕は無いわよね。とにかく走らなきゃ追い付けないし、気を抜いたらいつのまにか後ろに回り込まれて、さっさと走れって言われて殺意を向けられるんだもの。


……私の時よりはマシだけどね。



ーーーーーーーーー



「殿!末森からの使者が来ました!」


取次役の利家がどうしましょう?と言った顔をしとるが、どうするもこうするもあるまいよ。まぁ、一応確認は必要じゃがな。


「使者は誰じゃ?」


まずはこれよな。信行が来たなら信行が来たと言うじゃろうし、母上でも同じこと。ならば家臣の誰かが来たと言うことじゃろう?……あるいは父上の妾の一人かもしれんがな。その場合はかなりやり辛くなるが、まぁ戦場に女子を寄越すほど母上も狂ってはおるまい。


「はっ!津々木蔵人とか言う者です!」


津々木?知らん名じゃが、家臣じゃよな?父上の妾を相手にするよりはマシじゃが…。


とは言え何者かもわからぬ者との面談をする気はない。末森から来た者とは言え、使者にはその話の内容に見合った格と言うものがあるじゃろうが。


「ふむ。そのような者、儂は知らぬが…林は知っとるかの?」


「申し訳ございませぬ。某も聞いたことがありませぬ」


弟である美作繋がりで何か知ってるかとも思ったが、どうやら津々木某とは林も知らない程度の者らしい。本来ならそのような者を使者に立てると言うのはソレだけで無礼な行為。


「舐めるな」と言って首を刎ねると言うことも出来たが、口を開く前に先の戦で主だったものが討ち死にしたせいで、まともな者が残っていないと言う可能性もあるか。


「そうか…まぁ今回はシカタナイ。で、使者の口上は?」


林がどこかホッとしたような顔をする。それが無礼を咎めて問答無用の開戦にならなかったことに対する安堵なのか、それとも信長の隣で冷たい目を光らせている義鎮に「不勉強ね」と叱責を受けずに済んだことに対する安堵なのかは、彼にしかわからない。


そんな林の安堵は別として、信長は信長で考えを巡らせる。


とにかく何をするにせよ口上は聞かねばならぬ。こちらからの勧告に対する答えじゃろうし、内容によっては無駄な戦を避けることもできるやもしれんしのぉ。


信長の中では既に末森は終わっている。既に昨日の鳴海の戦で三河勢が完膚なきまで破れたことを尾張中に伝えるように動いているし、末森に対して「援軍は来ないこと」と「仲介も無いこと」を知らせる書を持たせた捕虜を放っているのだ。


「はっ!降伏の条件について討議したい。だ、そうです」


「そうか、殺せ」


「はっ!」


口上を聞き、即断する信長。それに対し制止も何もしない利家。そのままガチャガチャと鎧を鳴らし信長の前を辞していく。おそらくはこのまま使者を殺し、その首を別の捕虜に持たせて末森に運ばせるのだろう。


…本来なら林あたりが「お待ちください」と言ってとりあえず使者との面談を進めるところなのだが、その林も信長の行動を掣肘するどころか、容認、と言うか普通に賛同しているように見受けられる。


それも当然と言えば当然だ。なにせ彼らは戦が始まる前から信行と土田御前、それに味方する国人衆は滅ぼすと決めている。それ故、今更彼らからの助命嘆願を受け入れる気は無いし、そもそも向こうは降伏に条件をつけることが出来るような立場ではない。


「皆には既に伝えておるが、再度伝えておくぞ。儂が末森城に対して派遣したのは交渉を求める使者ではなく、降伏せよとの書状を持たせた捕虜じゃ。降伏の条件は母上と信行の首よ。他の弟や妹を逃がすと言うなら受け入れるが、それも二人が死んで城を明け渡せば済む話。降伏しないというなら城ごと滅ぼす。すでにそう決めておるわ!例え他の兄弟たちがいようとも、一切妥協はせん。皆もそのつもりでおれ。無駄な仲介や嘆願は儂に敵対したとみなす。良いな?」


「「「はっ!」」」


そして敵対したなら首を刎ねる。戦の前に利家たち馬廻りに伝えたことだが、再度念押しをする。これに異を唱えることは許さない。そう言った感情を一切隠さない信長に対し家臣全員が「当然のことだ」と言った感じで頭を下げる。信長はその姿に頷きながら、隣に立つ義鎮をチラリと見るが、彼女としても特に不満はないようだ。


それはそうじゃよなぁ…なにせ儂らの兄弟喧嘩のせいで尾張の民が随分と死んでおるからの。死んだ者にも親兄弟は居るのじゃ。林とて弟の美作を討ち取って儂への忠義としておる。


ならば儂が「弟だから」だの「親だから」と妥協することは許されぬ。まぁ年端も行かぬ弟や妹に関しては姫様も吉弘殿も殺す必要は無いと言ってくれたしの。


しかし母上はダメじゃ。信行を扇動した上、父上の残した遺産を全部坊主にくれてやるという愚行を犯しとるからの!それを儂の血縁上の母だからといって無罪放免としては周囲に示しがつかぬ。他の者共が殺せと言えぬのなら儂が言うしかあるまいよ。


その上で降伏の条件を論ずる使者じゃと?阿呆が。母上は現状を決定的に読み違えておる。


「今後末森からの使者として認めるのは信行か母上のみ。あとは…そうじゃな、弟や妹を連れて来た者じゃな。それ以外は取り次ぐ必要はない。殺せ」


「「「はっ!」」」


基本的に使者を殺すと言うのは外交上避けるべきことなのだが、それに異を唱える者は居ない。何故なら今の末森は信長にとっての謀叛人であるからだ。ならばその配下も同罪である。


「あぁ、いつまで向こうからの使者を待つのか?と不安な者もおるじゃろうから、これについても伝えておこう」


軍と言うのは、そこに居るだけで銭を使うモノだ。とりあえず兵糧は信長が負担しているが、いつまでも無駄に兵を展開させておくのはよろしくないのは皆が知ってるし、敵は末森だけではない。


容赦しないと言うならさっさと落としてほしいと言うのが、佐久間や他の国人たち、また銭を管理する賄い方の意見だろう。


だからこそ、彼らが不安を覚えないように通達する。


「向こうに与える期間はそう長くはない。既に信広殿や服部にも稲生と鳴海の戦の結果は届いていよう。服部が退くと同時に信広殿がこちらに来るじゃろうから、末森攻めはその後よ。それまで城から逃げ出す者が出ぬよう油断なく見張るように」


「「「はっ!」」」


期限は信広が来るまで。これは周囲にも納得の行く言葉である。なにせ此度の戦は弾正忠家の家督争いだ。ならば一門衆であり、率先して自分に味方すると明言した上で、しっかりと服部の軍勢を抑えている信広に対しては配慮が必要だ。


彼や信光の意見を聞かずに一門衆を皆殺しにするというのは流石に外聞が悪い。


それにもしも信広や信光が信行を生かせと言うなら、そのへんの寺に隠居させてから清須や岩倉に流すのも悪くはないとも思っている。どうせ黙っていれば連中が何かやらかすだろうし、それを口実に攻めることが出来るからだ。


なにせ今回は鳴海の軍勢があまりにも鮮やかに勝ちすぎたが故に、大和守や守護が動く余裕が無かったからだ。今さら「奴らを引き寄せたのが坂井大膳だ!」と告発したところで、逆に「招き寄せる罠だった」とでも言われてしまえば誤魔化せてしまう程に圧勝してしまった。


だからこそ口実を作るために清須へと逃がすのは有りだろう。


(ま、死ぬなら死ぬでも良いわ。末森の兵士が勝手に殺す分には関与せんぞ)


母親と弟が籠る末森を冷たく見据える信長。史実とは違い、既に彼らを完全に見限っている彼女に容赦の文字はない。


そもそも彼女は物心付いた時から母親とは離れ離れであり、他の弟や妹たちも末森に置かれていた為接触は数える程だったのだ。既に他家に嫁いだ何人かの姉とは仲も良いし、率先して殺そうとも思わないが、依存元とも言える信秀に対して完全に見切りをつけている信長は、まともに顔を合わせて居ない弟や妹を「血縁だから」と言って容赦する気はない。


むしろ下手に甘やかせば第二第三の信行のようになる可能性もある上、中途半端に血縁関係の有る者の方が扱い辛いのだと言うことは義鎮から口を酸っぱくして教えられている。そして自身も今回の信広や信光の件でそれを実感しているのだから、容赦する理由がないとも言える。


それはそれとして。


「姫様、何か考え事をしとるようじゃが、何か問題でも有るかの?」


正直言えば、末森の連中なんかよりも隣に居る姫様の方が百倍怖いのだ。謀叛人に対して下手に容赦なんかしたらどんな目に遭うのか想像すらしたくない。


何か不満が有るなら、溜め込まずに言って欲しいと言うのがこの場に居る者たち全員の願いと言っても良いだろう。


話を振られた義鎮も周囲の視線に気付いたか、懐から扇子を取り出してパタパタと信長を扇いで空気を変えようとする。(扇子を向けられた信長は悲鳴を上げそうになったが…)


「いや、そうじゃなくてね?さっきから信長が思った以上に立派なことを言うからつい……」


「…まぁ、なんじゃ。これでも皆を背負って立つ身じゃからの。うつけるときとそうじゃ無いときの区別は付けるつもりじゃよ?」


涙を拭う振りをする義鎮に対して、なんとも言えない表情になってしまう信長だが…これはもうシカタナイ。今までもそうだが、これからも信長はこうして義鎮に弄られて行くのだろう。


それを本気で嫌がる自分が想像出来ない時点で信長の完全敗北である。口元を緩めながら己の敗北を認める信長に対し、鉄は熱いうちに叩けとばかりに追撃が入る。










「おぉ!若、いえ、殿!そのお言葉を聞けば平手殿もさぞかし喜びましょうぞ!……是非誓紙にその旨を記して下され!」


涙目になりながらも懐から誓紙と筆を取り出した筆頭家老を見れば、流石の義鎮も「苦労してたもんねぇ」としかコメント出来ない。


「おいィ?!」


今までのことが有るので強くは言えないが、誓紙まで用意する林に緩めていた口元を歪ませる信長。


使者を殺されてヒステリックに叫ぶ土田御前や、その相手をしながらストレスを溜める末森の者たちと、彼らとは比べ物にならないほどの余裕を見せる信長陣営。


戦に勝つとはこう言うことなのだ。


そして追い詰められているのは末森だけではない。


余裕綽々の信長が、修羅に白紙の全権委任状を渡すと言うことの意味を知りorzするのはこれから数日後の事であった。



信長のorzラッシュが近い!ってお話

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