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18話。主人公、粛清するの巻

月間一位とは…身震いがするのぉ!!


前半第三者っぽいグッチー。

後半駿河のヨッシー視点


寝返りをする為には下準備が必要ですってお話



尾張南東部の要衝である鳴海城を預かる重臣、山口教継は兵士が持ってきた報告を聞いて己の耳を疑った。


「はぁ?『うつけ』が護衛崩れや兵を連れ、総勢百人で前線の城の確認をおこなう、じゃと?」


儂は今川治部様から『うつけ』に弾正忠家を継がせんがために行動の自粛を要請されておるから動けんが、本来ならそのまま捕らえて引き渡されても文句が言えぬ愚行だぞ? あのうつけは一体何を考えているのだ?


「父上。最近弾正忠様の体調が優れぬようですから、今のうちに色々と経験させるとともに、我らとの繋がりを保とうとしているのではありませんか?」


共に報告を受けた息子の教吉がそう告げてくるが、それもありえん話では無いわな。


顔も知らん『うつけ』よりは知っている『うつけ』の方が愛着も湧くだろうし、前線を支える将と繋がりを保とうとするのは間違いではない。


さらに若造共に国境の緊張感を教える機会でも有るのか。それらを考えれば最初に愚考と断じたこの行動も悪くはないと思えてくる。


いや、むしろ病床の身で有ることを考えれば、こうして『うつけ』を動かして家中の引き締めを狙うと言う弾正忠の智謀と行動力には「流石と」素直に賞賛したくなる程よ。


つまりこれは『うつけ』の考えではなく弾正忠殿の考えなのだろう。


そう結論付ければ、儂が見るべきは『うつけ』ではなく、彼女の後ろに在る存在よな。


息子が言うように、弾正忠殿は先が長くはない。そして今のままでは次期当主のあまりの『うつけ』ぶりにより、彼女が家督を継ぐ前に弾正忠家が潰れる危険があると判断したのだろう。


加えて言えば、美濃の蝮や今川殿にとって、今はまだ『うつけ』が必要なはずだから、ここで三河勢に奇襲されたり今川に通じておる連中に討たれる心配はない。と、ここまで見越したが故の策だろう。


一手に様々な意味を付与してくる手腕は流石は弾正忠殿よ。病に倒れても侮れんと言う意見もわかる。


同時に、これほどの人物だからこそ『うつけ』以外の後継も「頼りない」と思われているのだから、ある意味で不憫ではあるのだがな。


幼少より父母から離され、偉大な父と比較され続け、さらには家臣たちから『うつけ』と呼ばれる少女が哀れとも思わないでもないが、我々が優先すべきは己が家を残すこと。


先の見えぬ『うつけ』に仕えて滅ぶわけにも行かぬのだ。


なにせこれから今川殿に仕えるにしても問題が多々有るのだからな。尾張の要所たる鳴海城と周辺の城を手土産にすればそれほど悪くは扱われることはなかろうが、新参者はどこでも軽く扱われる。


だからこそ戦で手柄を立てるため、自分としても是非とも尾張に混乱を齎すであろう『うつけ』に弾正忠家の家督を継いでもらいたいのだ。


それに弾正忠殿が存命の場合や、武衛様や織田家の家臣に支持されておる信行が家を継いだ場合は、儂は主家を裏切ったと言う信の置けぬ裏切り者になるが、あの『うつけ』が弾正忠家を継げば、それだけで儂には織田を離反する理由が生まれるからな。


当人は激昂するだろうが、少なくとも尾張の国人や『うつけ』を知る蝮や今川殿は納得するだろうよ。


さて、そうなると、今回の件はどうするべきだ?


思考を纏めていけば、結論としてはこちらからは手が出せん。なにせ誰もが『うつけ』に一度は家督を継いでもらいたいのだからな。ならば普通に歓待し、そのまま帰すのが一番となろう。


自分の進退を考えた結果だけでなく、今川から行動自粛の要請が出ているので「何故捕らえなかったのだ?」と言われても正面から論破できるというのもある。


「問題があるとすれば『うつけ』があまりに『うつけ』すぎて、無礼な態度を取られた場合にどうするべきか、ですな」


息子がそう言ってくるが、そのようなことが有り得るのか? 自問自答してみると導き出された答えは「有り得る」だった。


「なるほど、その可能性もあるか」


教吉が告げた言葉の意味を考える。普通ならばここで儂らの心を離すような真似はせん。じゃが相手は尾張だけでなく近隣諸国に名を轟かせる『うつけ』よ。


ならば弾正忠殿の力を己の力と勘違いして無礼を働く可能性もあろう。そしてそれを狙うのは儂と同じように今川殿に通じておる誰かか、もしくは蝮と通じておる誰か、か。


純粋に織田に仕える柴田か佐久間あたりはどうだ? 連中が企むとしたら、儂に『うつけ』を殺させ、儂を織田の敵とする。そして『うつけ』の仇討ちを掲げ、儂の討伐を大義名分として信行が織田弾正忠家を纏める。と言ったところだろうか。


そうして儂を討ち取った後は、自分たちで三河との国境を固めることが出来れば万々歳よな。


蝮に対してはどうだ? 位置的に考えて最初に美濃勢と当たるのは岩倉だな。ならば南を固めてから尾張が一丸となって美濃に当たる。と言うのも間違いではない。


だがな、今川治部様はそこまで甘い御仁では無いし、儂もそんな手にかかるほど阿呆ではない。そして弾正忠殿亡き後、信行では今川治部様はおろか蝮にすら勝てぬよ。


織田弾正忠家は信秀殿一人で興し、信秀殿一人で終わる。これはもう避けられぬ。


そして弾正忠殿に仕えていた我らは、武衛様を握る大和守に疎まれておる。


蝮は信用できぬ。人品もそうだが、そもそも距離の問題がある。もしも今川治部様ではなく蝮を頼ろうとした場合、美濃からの援軍が来る前に三河や遠江の軍勢に滅ぼされるだろう。


駿河は美濃よりも遠い。それは事実だが、三河は美濃より近いのだからな。


特にこの国境ならば尚更よ。もしも美濃勢や蝮の力で以て今川治部様を撃退できたとしても、そのとき儂らはすでに滅んでおるわ。時間稼ぎに使われ、滅ぼされた後で復讐されても意味が無い。


なればこそ儂らは今川治部様に仕えるしかないのだ。ここなら三河から援軍が来るし、織田を知り尽くしている儂らと鳴海の重要性を知れば必ずや重用して頂ける。


三河勢同様先手として使い潰される可能性もあるが、それでも『うつけ』と共に滅ぶよりはましよ。


弾正忠殿が健在で、あと一〇年生きて頂けるならこのまま弾正忠家に仕えるのも良いかもしれんが、今のままでは、な。


未だに『うつけ』に家督は譲ってはおらんが、今回のように様々な仕事をさせていると言うのが、彼の焦りにしか見えぬのだ。


そうやってうつける暇を無くさせるとともに実績と経験を積ませようとしているのだろうが、肝心の『うつけ』があの様では、な。親の心子知らずとはこのことよ。


そもそも美濃と同盟を結ぶために身銭を切ってまで安く塩を売るくらいなら、尾張国内の国人にそれを行うべきだったろうに。


それなら次期当主の名で国人に恩を着せることもできるしな。まぁそれができなかったからこそ、塩の増産とやらが周囲に嘘だと見抜かれているのだが。


弾正忠殿は一体今の状況をどのように考えているのだろうな? 信行では家が保たぬと考えているのだろう。信広殿も頼りなしと考えているのだろう。そして林殿と平手殿に預けた肝心かなめの嫡子は『うつけ』の度が過ぎてこの有様。


これでは弾正忠家の自立どころか、家を残すことすら難しいわ。


弾正忠家の事はもうよい。儂が考えるべきは今回の件よ。


「お主の懸念は尤もだが、まだ無礼をされたわけでもなし。まずは『うつけ』を出迎える用意をするぞ」


「それもそうですな。畏まりました」


これが弾正忠殿への最後の忠義となると思えば感慨深くもある。今ならば今までの恩と病床の弾正忠殿に免じて多少の無礼も流してやるし、後学のために鳴海の城がどれほどのものか見せてやるのも吝かではない。


あぁ、しかし『うつけ』が勝手に城内を荒らして今川殿からの密書を見つけられても困るか。その辺はしかと隠さねばならんな。


「殿!那古野より先触れの使者が参りました!」


そう決意し、出迎えの支度をさせようとしたところに兵が声をかけてきた。


「ほう。先触れの使者を出すだけの思慮が有ったとはな」


儂が驚けば、息子も驚きの表情を浮かべておるわ。


諸国に鳴り響く『うつけ』が一体どれほどの『うつけ』なのかと思えば、これはいい意味での裏切りよな。


向こうに林殿や平手殿が居ればその程度の事はするだろうとも思うが、両名は現在京に行っている。故にこの先触れの使者は『うつけ』の発案か、それとも弾正忠殿から言い含められていたかのどちらかだろう。


一番少ない可能性としては護衛崩れの中にそこそこの常識を弁えているものが居ることだが、どちらにせよ『うつけ』が使者を立ててきた。と言うことは評価しようではないか。


……今更の話だがな。


「殿?」


無言で考える儂に、兵がどうしたものかと声をかけてくる。やや焦っておるようだが、気持ちはわかる。


向こうは『うつけ』とは言え弾正忠家の次期当主。それが送ってきた使者に対してどうすれば良いか? など、末端の兵にはわかるまい。必要な知識も権限も無いのだから。


「まずは会おう。使者殿をお通しせよ」


それ以外に選択肢などないのだが、な。


「はっ!」


儂の言葉を聞き、使者を出迎えに行く兵士の後ろ姿を見て、儂は失敗を自覚した。


「しまった。使者の名や口上を聞き忘れたわい」


後学の為に教育してやろうと思ったが、どうやら弾正忠家を裏切ることに対して、自分で思っている以上の後ろめたさが残っていたようだ。……儂もまだまだよな。


そう自嘲して息子を見れば、こやつも何とも言えない顔をしておる。儂らとて弾正忠殿が憎くて寝返るわけではないのだ。むしろ儂らは厚遇されておったのだから、当然後ろめたさもあろうよ。


息子にどう声を掛けようかと思っていたら、複数の足音が聞こえてきた。


どうやら使者が来たようだな。


思ったよりも早いが、まぁ同じ織田弾正忠家の家臣だ。警戒も何もいらんか。


兵が襖を開ければ、そこにはおよそ一間(180cm)はあろうかという大男が佇んでいた。


髪は黒く、小袖は藍に近い青、肩衣は黒。やや痩身ではあるがひ弱と言う印象はない。鍛え上げたと思われる動作に一切の無駄はなく、一見して一廉の武人であると確信させられるだけの威が有った。


(これが『うつけ』の使者、だと?)


突如現れた大柄の男に気を取られていると、男は右腕を上げながら口を開く。 


「こんにちは。死ね」


「は?」


今、こやつは何と言った? 儂らに死ね? つまり……


「刺客かっ! ぐっ!」


言葉の意味を理解した儂が刀を抜こうとするも、胸と足に棒のようなモノが突き刺さっていて体が動かない!


遅れてやってきた痛みを堪えて使者を連れてきた兵や、儂の横に控えていたはずの息子を見れば、両名とも既にその身体には首から上がなく、頭が無くなった身体より勢いよく血を吹き出すのみ。


そして床に転がっている首はただただ驚愕の表情を浮かべていた。


ここまで来てようやく儂は事態に気付く。つまり『うつけ』が集めた百人は囮。狙いはこの使者による儂らの誅殺! 躊躇なく儂を殺しに来ていることから、今川治部様への寝返りの証拠はすでに押さえているのだろう。


そして儂が『うつけ』が家督を継いだ後に起こるであろう家督争いに乗じて今川治部様へ寝返ると言うのならば、その前に討伐し『うつけ』の武功とする気だったのだ!


ぬかった! 尾張の虎は病に倒れても虎よっ! 今川治部様からは「最後の力を振り絞って動く虎に警戒を怠るな」と言われていたのにもかかわらずこの有様っ!


「だ…れぞ…あ…る…カヒュ」


胸の痛みで声すらあげることすらできず、ただただ血を吐くことしかできぬ儂を見下していた男が刀を振りかぶる。その刀はこやつほどの武人が持つにはあまりに貧相だ。つまりは案内していた兵士が持っていたものだろう。


「楽にするつもりはない。ただ見苦しいから殺すだけだ」


「…ッ!」


この儂を、その辺の雑兵と同じような目で見るでないわ! そう叫ぼうとしたが、儂の体にはすでにそれだけの力はなく、我が身に迫る白刃を受けることも避けることも出来ず……。




――――




「なに?鳴海の山口教継が討たれた、だと?」


「御意」


尾張からの突然の報につい声を上げてしまったが、目の前の雪斎はそれを咎めようともしない。つまりそれほどの異常事態なのだ。


「……弾正忠めにしてやられました」


尾張で変事有り。その報告を携えてきた雪斎も、苦虫を噛み潰したような顔をしている。


してやられた、か。まさしくその通りよな。


今の弾正忠が、己が病で死ぬ前に『うつけ』に色々残そうとしておるのは知っていた。


蝮との同盟に使った塩の件や、京に人をやり『うつけ』の名を公家どもに浸透させようとしてるのもわかっていた。だがここで配下の粛清までやってくるか。


「今の弾正忠は死に物狂いの虎です。己が娘、といいますか、己が築き上げて来たものを守るためならば、どの様なものでも死力を尽くして食い破る猛虎と成り果てております。……読み誤りました」


雪斎はそう言って頭を下げるが、そもそもが我らや蝮が奴を追い詰めすぎたのが原因よ。梃入れしたことで、奴に噛み付く力を与えてしまった。と言うことだろう。


かといって梃入れをしなければ『うつけ』が滅んでいた。まさか病床の身でありながら、この逆境を利用して一気に動いてくるとは思わなんだ。


その行動力は認めよう。智謀も見事。


「しかしこのようにいきなり粛清しては、周囲が納得しまい?」


そもそも今の弾正忠家の内部はほとんどが蝮や我らの息が掛かっているのだ。それを、有無を言わさず粛清などしては、次は誰かと怯えてしまい人心が離れるだけではないか。


もしやしたら「ここまで悪化してるならば死ぬ前に排除したい」と思うのかもしれんが、それとて弾正忠の事情であろう?


「山口に関しましては我らとの書状がありますからな。山口も急な粛清だったため隠すこともできず、全てが弾正忠の手に渡った模様です。これでは内心どう思っていようと、誰も異議を唱えることはできませぬ」


「そうか」



実際に我らと通じていた証拠を押さえられた、か。それではどうしようもないな。流石に「城ごと今川に寝返ると言う者を生かしておくことはできん!」と言われれば、誰が聞いても「その通り」としか言い様がないものな。


「しかし鳴海城は三河との国境を守る要衝ぞ。いくら弾正忠とて病の身で簡単に落とせるものではあるまい?」


どこかで山口の寝返りの情報を得たとしてだ、国境の城を預けるような重臣をいきなり粛清などできぬ。


最低でも使者を立てることくらいはするだろう? そこで彼奴らが我らに寝返ったと声を上げて糾弾したところで、素直に山口が降伏するはずもない。それくらいの考えならば初めから寝返りなどしないのだからな。


そして糾弾の使者を殺すなり返すなりした後で籠城の支度をし、儂の書状を携えた使者を三河に出して援軍要請くらいはするだろう。


だが三河からはそのような連絡は来ていないぞ? よもや三河の阿呆共が勝手に援軍要請を握りつぶしたか?


「……鳴海城が警戒していたのは三河からの攻撃にございます。そこに主家である織田弾正忠が兵を向かわせれば、弾正忠が三河で何かを掴んだために援軍を出したとは思っても、自らを殺しに来た敵とは思わぬでしょう」


雪斎はそう推察し、不可能ではないと感じておるようだが。


「それはそうだろうが、兵はともかく山口もか?」


自らが我らに寝返ろうとしているときに、弾正忠の兵に対してそこまで無警戒などありえぬだろう? 

 それとも山口とはそこまで阿呆か? そのような阿呆が国境を守る要衝を預かることができるのか?


「弾正忠が用意した兵は百名。それも『うつけ』殿が率いており、副将は池田恒興と言う乳母姉妹。さらに兵たちは若手ばかりで、鳴海へ向かった口上は「国境の城の見物と前線の空気を知ること」だったそうですな。これでは警戒も緩みましょう」


「なるほど」


雪斎が言いよどむ気持ちは良くわかる。


兵は主家の兵だからと油断して、城主も油断すれば少数でも落とせるか。いや、この場合は城主である山口を討ち取り、その近臣を排除するだけで良い。なにせ城に来たのは紛れもなく本物の織田弾正忠家の次期当主なのだからな。兵はそれに従うことに疑問を抱かんだろうさ。


「しかし正気か?」


いや、次期当主が国境の城を守る家臣に顔を見せに行くと言うのはわかる。だがそれが最初から粛清を考えていたとなれば話は別よ。


「数は百。その中に筆頭家老の林佐渡も次席の平手もおらぬ。しかも率いるのが齢一五にもならぬ『うつけ』ならば、誰もが本気の戦支度とは思わんだろうよ。だがそのような者どもに本気で戦をさせるか?」


確かに一度内部に入ってしまえば、あとは山口親子を殺すだけだ。城兵が千人いようとも何も知らぬ城兵をいたずらに殺す必要もあるまい。だがその為に次期当主を囮に使うだと?


「最小の労力で最大の戦果を得る。それだけを考えれば非常に効果的な一手です」


雪斎も軍師としては賞賛できるのだろう。それはそうだ。結果を見れば百名で城を落としてるのだからな。


裏切り者の粛清と、次期当主への武功。さらに若手の教育と他の者共に対する牽制。一手でこれだけの利益を生み出すのだ。並ではないのはわかる。わかるのだが。


「えぇ、先ほど殿が言ったように人心は間違いなく離れます。確かに大義名分は有りましょう、ですがこれは結局恐怖で人を押さえ込むと言うことです。しかも次期当主の命も賭けの天秤に乗せておりまする。すなわち下策。本来ならばこのような真似は最終手段としなければならないのですからな」


それはそうだ。統治には武威による恐怖がその根元にあるとは言え、和と言うのは決して無視できぬもの。


「……よもや後がないからこそ、己が全ての悪名を被るつもりか?」


そして『うつけ』に残すと? だが肝心の『うつけ』はそれを許容出来るのか? いや、その為に『うつけ』に命を懸けさせ、成長を促しているのか?


「可能性はございます。この分では、暫く尾張に手を出すのは控える方が良いかもしれませんな」


雪斎の顔を見れば「決死の覚悟を決めた虎の相手など御免だ」という色を隠しもしておらぬ。だがそれはそうだろう。


「そうだな。少し待てば奴は勝手に死ぬのだ。虎穴に入らんでも虎子を得ることが出来るのならば暫くは放置で構わん。尾張に関しては情報の収集だけに留めておこう」


どちらにせよ弾正忠が死ねば『うつけ』が継ぎ、混乱がおこるのだ。我らはそこを潰せば良い。見方を変えれば、奴が尾張内部の国人を掃除してくれると言うことだからな。


「それがよろしゅうございます」


(どうやら合格らしいな)


頭を下げる雪斎を見て、溜息を吐きたくなるのを辛うじて我慢した私は褒められても良いと思う。


命懸けの猛虎も雪斎の前では所詮尾張と言う名の屏風の中の虎かよ。


「では屏風を眺めながら虎が死んだあとの事を考えるとしようか」


何せ我らの側で牙を研ぐ虎は尾張だけに居るわけではないのだから、な。















――――







「ふっ。この程度かや? 武者震いして損したのぉ!」


「……戦場で油断するんじゃないわよ。一回怪我しとく?」


「ひぃ?! 本気じゃ! 姫様が本気じゃよっ!」

戦?千寿君は戦をするなどとは言ってないぞ?


城攻めとはなぁ攻めることが重要ではない!

落とすことが重要なのだ!ってお話。


身震いさせたかっただけとも言う。


グッチーへの攻撃としては、花の慶次の風魔小太郎のような感じです。


右手を上げると同時に親子に某手裏剣を投擲。

左手で兵士の首をねじ切り刀を奪って息子の首を切断。


グッチーを初手の一撃で殺さなかったのは裏切り者に少しでも苦痛を与える為ですな。


次回!細かい内容の説明!姫様スタンバイ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] その屏風の裏からトラのアテレコやってるやつが居るんだよなぁ……(^_^;)
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