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17話。ノッブ、身震いするの巻

爺とオッサンのアッー!な京都旅行?そんなサービス(?)シーンは無い!(断言)


前半千寿君

後半姫様視点

「あぁそうだ。ちなみに信長殿は今年で幾つになる?」


なんだかんだで織田家指南役に就任して四ヶ月くらいになるが、主君の年齢の確認をしてなかったことに最近気づいたんだよな。いやはや一二~一三歳くらいってことで思考停止していたよ。


姫様の性別が変わってて俺と同い年な時点で、年齢から西暦を割り出すのは不可能だってことに気付いてたし、更に俺みたいな存在が他にも居れば、史実で有った事件すら早まったり無くなったりするからな。


下手に西暦を考えるのは危険だと思って歳とかには気を使わなかったんだが、流石に主君の年齢を知らんのはいかんよな。


「ん? なんじゃ薮から棒に? よもや儂にオンナの魅力を感じたかや? ふっふっふっ! いや~あれじゃな! 姫様程の女性を妻に持つ吉弘殿すら惑わせるとは。ふっ、まっこと美しさとは罪よのぉ。ぶぎゃ!」


お子様がドヤ顔で寝言をほざいてたら、姫様から眠気覚ましの一撃が加えられたでごさる。ところどころのタメは確かにイラッとしたが、手を出す程では無いと思ったんで放置したんだが、姫様的にはアウトだったか。


そりゃ自分の目の前でキメ顔しながら年齢でマウント取った挙句旦那を誘惑しようとしたらドつくよなぁ。


「ハイハイ、戯言は良いからさっさと千寿の質問に答えてね~?」


うむ、どうやら姫様の女のプライドを刺激したようだな。あぁなった姫様は怖いぞ。


「うぅぅっ。姫様の目が笑ってないのじゃよぉ」


そりゃそうだ。今はお子様だがいずれは信長にも分かる時がくるだろう。女には触れてはならない話題があるってな。


とは言え、本気で心配とかはしてないよな? いくらなんでもこんなお子様に。

とは思うが、基本的にこの時代の女性って一二だの一三で結婚する場合も有るからなぁ。秀吉や利家の相手をした寧々とかまつとかが有名だが、寧々だって自由恋愛だったのが珍しいだけで、年齢は特に問題視されてなかったし。


まったく世の中変態紳士だらけで困る。彼女たちはガキの頃から色々大変だったろうよ。


でもって姫様的に「そろそろ子供を」って考えてるみたいだけどなぁ、流石に織田の家督争い中に妊娠してたら母子共にヤバいから、今はお預け状態なんだよな。


最低でも家督争いが落ち着いてからって言うのは納得しているけど、深層意識には焦りもあるんだろう。姫様だってまだ一八か一九だってのにすでに年増扱いで、子がいないことを焦るんだからなぁ。まったくもって世知辛い世の中だよ。


今の姫様の心境がわかり辛い? アレだ。女子中高生にオバさん扱いされて怒る大学生みたいな感じと言えばわかるかもな?


姫様の精神状態はさて置くとして。


「で、信長殿の年齢だが…秘密でも無いならさっさと教えてくれんかね?」


話が前に進まないから、さっさと質問に答えろ。


「むぅ。少しくらい心配してもいいと思うんじゃがのぉ」


姫様にぶっ叩かれた頭を抑えながら口を尖らせる信長。お子様のあざとい仕草に「萌える」と言うのか「イラっとする」と言うかは人に依るだろうが、少なくとも俺はイラっとする派だ。だからそれは 俺には悪手だぞ? もちろん姫様にもな。


「そう? じゃあ千寿に心配されるくらいの怪我をしてみよっか?」


そう言いながら懐から扇子を取りだす姫様。


一見すれば普通の扇子だが、当然のことながらあれはただの扇子ではない。修羅御用達の特注鉄扇である。


この時代帯刀できない場所でも使える武器や防具ってのは非常に重要だ。


なにせこの時代の武士だの地侍は気分で刀を抜くからな。頭を下げてる使者相手に斬りつけたり、会話の途中でいきなりぶち切れて斬りつけてきたりするのが基本だから、自分の身を守る手段は幾つあっても足りんのだよ。


でもって姫様や信長は、普段から動きにくい十二単みたいな格好はせずに普通のスタイリッシュな武士みたいな格好をしている。その上で姫様は鉄扇と仕込み棒手裏剣を常備の上、脚絆にも鉄を仕込み、籠手も装備しているのだ。


籠手と脚絆は、旦那が居る身なので人前で素肌を晒さないためと言うのが表向きの理由だが、実際は拳や蹴りで相手を殺す為だな。


で、姫様が持つ鉄扇は普通に刀を受け止めることが出来る防具であり、人を撲殺できる武器だ。修羅として俺が鍛えた姫様があれを使えば、その辺の武人モドキなど確殺できるだけの威力を誇る。


当然今の信長とて無傷では済まん。


「ひぃぃぃ! 目が、目が本気じゃ!」


当たり前だ。たとえ知り合いでも自分の目の前で自分の旦那にあざとい顔なんか見せてる女がいたら、そんなん殺戮対象にしかならん。戦争だ。


そして俺が心配する怪我、なぁ。骨折くらいだとこの時代の負傷としては当たり前だよな。切断は心配してもしょうがないし、割腹は死んでいる。


うーむ。どのレベルの損傷になるのか少し興味がある。気を使い始めた信長なら即死しないで丁度良く半死半生になるだろうしな。


「正直どの程度の損傷になるかは気になりますが、話が進みませんし、なによりこれ以上頭を刺激して本当にうつけになられても困ります。なので今回はその辺にしてやって下さい」


大友家にいたときは良くこうして姫様を諌めてたもんだが、こっちじゃ姫様がツッコミだもんなぁ。中々面白いもんだよ。


「むぅ。千寿がそういうなら仕方ないわね。私たちも暇じゃないし、さっさと話を終わらせましょうか」


「ホッ」


本気で不満そうな顔をして鉄扇を懐に納める姫様を見て、とりあえずの安全確保が出来た信長は安堵の溜め息を吐いている。


そんな信長を放置して俺の方を確認する姫様。さっさと帰って家でまったりですね。わかります。こうなった時の姫様は甘え癖が出るからなぁ。旦那としては良いことなんだけど。


しかし俺達が暇では無いのは事実だ。信長を育てるのに時間はいくら有っても足りん。実際今だって礼法の勉強をしながら戦略を練っているくらいだし。


「とことん儂の扱いが軽いのぉ。いや、夫婦に対して別の女だの男がどうこうなのは鬼門じゃから、折檻が無いだけでマシと思おうかの」


疲れきった顔をした信長がそう呟く。完全に自業自得だし、少しずつ機微と言うのを教えてるのが役に立ったな。ここで「理不尽だー!」とか抜かさずに自分の中で自分の非を納得できたようでなにより。


俺としても「王には人の心がわかってません!」なんて言われて反乱される可能性は減らしてやりたいところだからな。


俺と姫様が頷いてるのを見て、とりあえずこの話題は終わったものと判断したようだ。つーか話が進まないからさっさとしてくれ。


「で、儂の歳じゃったの? 今年で一三じゃよ」


俺の内心を読んだか、それとも空気を読んだかはわからんが、今回は引っ張ることなく告げてくる。


しかし一三か。なるほどなるほど。


「吉弘殿も知っての通り許嫁も婚約者もおらんし、無論おぼこじゃ! 本来ならそろそろ適当な男を見繕わんといかんのじゃが、少なくとも現状で尾張の統一が見えとるからのぉ。その辺のイイ男では釣り合いが取れん。じゃが尾張の統一が見えてると言うのは儂らだけの話じゃろ? だから相手を探すのが難しいのじゃよ!」


年齢を確認して頷く俺に、聞いてもいないことをペラペラ喋ってくるが、その通りではある。


時代的には既に結婚適齢期。ならば結婚相手を探すのは当然だ。これで信長が男なら美濃から濃姫様が嫁いで来ればいいのだが、なにせ女だからなぁ。


ふむ? ここがゲームの世界の可能性を考えれば、ここに主人公に相当する奴が入って来る可能性が高い、か?


「なんなら吉弘殿に初めてをお願いしても……ひぃ?!」


考え事をしてたら信長がまたアホなことを言い出したでござる。


まったくなにしてんだこのお子様は? 反省しろ反省を。アレだぞ? 後で姫様を宥めるの大変なんだぞ。


しかし本来この時代の貞操観念が良く分からん。


無論地域や階級によってまちまちなんだが、どうも普通に夜這いとかは有るみたいなんだよな。俺が知る世界だと、大名とかお偉いさんになれば、男の場合は初めての相手を家が用意することが普通だったらしいが、もしかして女もそうだったのかな?


いや、確かに知識とかは周囲の侍女とかが伝えてたらしいが、実践まで?


うーむ。立場によっては子を産ませる為だけに婚姻することもあるよな? それを考えれば痛いだの何だの言われても男の方も萎えるだけ、か?


基本的に大名は俺様主義だし、本当の意味での愛人って感じで甘えることができる相手以外の場合はそんな扱いなのかもしれん。


それに姫様もな。リアクションはとったものの、問答無用で信長を殴り飛ばさないと言うことは、女武将の常識としてはその可能性も有るのか。


まぁそっちに関してはいずれ現れる主人公に任せる。もしくは身代が大きくなった時に都合のいい公家でも探して用意してやればよかろう。



――――



まったく、信長め。さりげなく、もないけど。とりあえず何としてでも千寿を手元に置こうとしてるわね。


気持ちはわかるわよ? 千寿は敵に回したら怖すぎるものね。


それにそもそも私たちが『客将』で指南役なのは信長が正式に家督を継ぐまで。その後も仕えるかどうかは信長の器量と、私たちの判断次第だし。


信長にしてみれば、父親がいつ死ぬかわからないし、今の状態ですでに塩や軍備、人材育成で実績を出しつつある私たちが居なくなるのは困る。かと言って今の自分に私たちを引き留めるだけのものがないのもわかっている。だからこそ何としてもって焦っているんでしょう。


それでも私たちが出て行く時には涙を堪えて感状を出す程度の器はあると思うけどさ。


信長の気持ちはわかるけど。大前提として私たちはお金は自分で稼いでるし、異性に関してはお互いに満足しているから(……しているわよね?)、客観的に見れば彼女たちには私たちを引き止めることはできないのよね。


わざわざ私の前でやるのも、私に秘密にしたら気を悪くするからでしょ? あわよくば話の流れで許可をもらおうとしてるのも、まぁわかるわ。


千寿を知れば、その辺の顔だけの田舎侍に抱かれようなんて思わないでしょう。


それに私も許可を出す可能性があるものね。なにせ私が千寿の子を産むことになれば、その間の千寿の相手だって必要だから、側室を探さなきゃいけないでしょ?


それが信長だって言うなら……あぁ駄目ね。流石に主君を側室扱いには出来ないわ。かといって千寿の正妻は私。これは絶対に譲る気が無い。あぁ、だけどこの場合は千寿が信長の相手って感じになるのかしら? これならお互いに一時的なものだし、私としても許さないでもないけどさ。


けどなぁ。今のところ千寿に織田を出る気がないみたいだし、子供は家督相続が片付いたらって思ってるけど、どうしても私が相手できないときの為に千寿に側室を用意する必要があるのよねぇ。あぁ、その辺の小娘に一時的とは言え千寿を貸す気は無いわよ。


そんなわけで、とりあえず信長の正式な婿が決まるまでって言うなら無しではないけどさぁ。だけどそれじゃあ将来信長の婿になった奴が千寿を疎ましく思っちゃうかもしれないじゃない?


やっぱり男にしたら面白くはないだろうし。誰だって比べられたら嫌よねぇ。


いや、男の気持ちはしらないけどさ。なんにせよ、絶対に面倒になるわ。とは言え信長の気持ちもわかるし……どうしたものかしら?


「し、して、吉弘殿よ。儂の年齢がどうしたのじゃ?」


とりあえず私からの折檻が無いと判断して話を前に進めてきたわね。私も女としては思うところもあるから今回は見逃してあげましょう。


と言うか一三歳だったのね。うーん。なら、そろそろそういうのも指南していかないと駄目かな?


「うむ。婚儀に関してもそうなんだが、その前に初陣は済ませているのか? と思ってな」


あぁ。千寿が何を気にしてるかと思えば。


「な、なるほど。初陣な」


実に修羅らしい心配よね。普通なら元服した時点で初陣も済ませるのでしょうけど、信長が那古野を預かったのって確か二歳のときでしょ? それから教育やら何やらを考えれば初陣は……どうなのかしら?


「一応初陣は経験しておるぞ? 林と爺が後見して、小さな国人を討伐する程度じゃったが、の」


なんか恥ずかしそうに言ってるけど地方領主の初陣なんてそんなもんでしょ?


大内だの少弐だのみたいな複数の国を統べる大勢力に囲まれてるわけでも無ければ、そもそも大規模な戦があんまりないみたいだし? 


大規模な戦も三河や遠江、もしくは美濃といった感じで敵国に攻め込んで戦いみたいだしね。


相手に地の利が有って負ける可能性が高い戦場に、まだ一三歳の次期当主を連れ出すなんて有り得ないわ。だから恥じる必要なんて無いんだけどねぇ。


見栄を張るのも当主の仕事だから仕方ない、か。


とりあえず信長の「初陣は済ませた」と言う言葉を受けて千寿は何か考えてるみたいね。いや、どうせ「何か」っていっても戦のことなんでしょうけど。


「ふむ。ならば態々林殿や平手殿を待つ必要も無いか」


どうやら考えが纏まったみたい。


多分初陣に筆頭家老や次席家老が居ないと言うのは問題だから、まだ済ませてないなら彼らを加えてから戦をしようとしてたのよね。


「む? そりゃ確かに今更二人を慮る必要は無いかもしれんが、二人がおらんとまともに人も集められんぞ?」


自分たちの不甲斐なさを晒すことに不安を隠そうともしない信長。だけど大丈夫よ。千寿だってそのくらいわかってるわ。


「それはそうだろうな。だが、今回はそれがいい」


ほらね。


こうして自信満々に言う千寿を見ると負ける気なんて微塵もなくなるわ。これこそが大将に必要な資質なのよ。


「お、おぉ。そうか! 吉弘殿が言うならそうなんじゃろうな!」


信長はそう言って慌てて頷くけど、さては見惚れたわね?


「……」


なんかチラチラ私の方を見てるけど、ダメよ。将来的にはどうかは知らないけど、今は絶対に貸さないから諦めなさい。


「では簡単に説明をしましょう。今回の狙いは……」


無言で争う私たちを無視して千寿が今回の戦の概要を説明していくけど、え? これって大丈夫なの?


「む、むぅ。言ってることはわかるし、勝算も有る。事実なら大手柄じゃ。しかしこれは流石に儂の独断では……」


流石の信長もすぐには決断出来ないわよね。だけどそれも当然。この場合は優柔不断ではなく、慎重と言うのよ。私だってこの作戦を千寿以外が献策してきたら「頭は大丈夫か?」って献策してきた相手を心配するもの。


「大丈夫だ。問題ない」


やや腰が引けている信長に対して、千寿は自信満々よね。準備から後始末のことまできちんと考えているし、これに準備期間はそれほど必要ない。


それになにより、弾正忠がいつ死ぬかわからないものね。使えるものは使えるうちに使わないと駄目ってことか。


「相分かった! 儂も吉弘殿を信じよう!」


信長は決断したわね。ならば私も出来るだけの補佐はしてあげるわ。

たとえ勝ちが決まった戦でも、油断は大敵ですもの。


完全勝利を目指しましょうか。



















「儂、本格的な城攻めは初めてじゃよ。……武者震いがするのぉ!」


なんかガクガク震えてるんですけど。それ、本当に武者震いなのよね?

散々足場を固める必要性を説いておきながら、ここで戦をするのか?と思った読者様。その感覚は正しい。


とは言え、そろそろ戦をしないとね。この時期の信長の周りは本当に大変なんですよ。


普通のスタイリッシュな武士の恰好とは一体……ってお話

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― 新着の感想 ―
[一言] 17話  しかし本来この時代の貞操観念が良く分からん。 無論地域や階級によってマチマチだが、普通に夜這いとかは有るんだよな。しかも大名とかお偉いさんになれば、男の場合は初めての相手は家…
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