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風神天翔記 ~とある修羅の転生事情~  作者: 仏ょも
四章。尾張統治と下準備編~
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???話。山科日記①

幕間シリーズ。第二弾。



〇月△日。


今までは日記を書いても「特に何もなかった」だの大樹(義輝)の愚痴しか書く事が無かったので控えていたが、今日から麿も日記を書く事にした。


ふふふ。古来より『朋有り遠方より来たる、亦た楽しからずや』と言うが、今日ほど麿の行いが報われたと思ったことはないでおじゃるよ。って、日記で公家言葉はいかんな。気をつけねば。


しかし尾張の田舎侍と思っていた織田弾正忠家の者が四千貫もの銭を献金したときも驚いたが、その娘がこのような提案をしてくるとはのぉ。


うむうむ。定期的な収入を得られて麿もお上も得をするし、私からの教えを受けることができると言うことで向こうにも得があるのだ。


このような提案を他の武家の連中もしてくれれば、お上の心労も少しは和らぐモノを。まったくこれだから武家は度し難い! と言うか武家の棟梁たる大樹がアレだから仕方ないと言えば仕方ないかもしれんがの。


いやいや、大樹などどうでも良いわ。願わくば弾正忠家とは今後共上手く付き合って行きたいものよ。



□月×日


まさか弾正忠家の家督争いに乗じて三河の阿呆どもが動くとは……それも本證寺が加勢しておるじゃと?! 平手からは停戦協定などはしなくとも良いと言われておるが、お上も気が気で無い様子。


いつでも使者を立てることが出来る用意はしておるが、これからどうなることやら。


□月〇日


いつの間にか弾正忠が弟を打倒して、さらに三河の過半を手に入れている件について。


□月●日


いや、昨日は戦の心配をしているところにあまりにもあまりな連絡が来たのと、その内容が予想以上に急展開だったので驚いたが、どうやら戦は信長が勝ったらしい。


それも反撃まで加えて岡崎をも制圧したとか。


それで「戦の黙認をしてくれてありがとうございます」と言う名目で寄進もして来たし、結果的には万々歳と言ったところだろうか。


ただお上も言っているが、あまり心配を懸けて欲しくないものよな。いや、まぁ今回悪いのは三河の松平とか抜かすガキと本證寺一派だから、彼らに文句を言うのは違うと分かっておるぞ。


ん? 三河守の継承と弾正少忠への補任とな? まぁ問題なかろうが、麿の判断では出来ぬ。一度お上に確認を取るとしよう。


あぁ良いから良いから。


この程度(従五位下程度)でそんなに頭を下げなくても良いから。まぁどこぞの武家連中の如く『献金しているのだから当然だ』と言う顔をするよりはよっぽどマシだがな。


×月×日


尾張の弾正忠……今は弾正少弼か。弾正少弼が補任の礼に一千貫を献金してきた件について。


いや、こちらが今までの忠勤に報いたらさらに献金をするってなんぞ? いや、まあ悪いことでは無いのだが。


お上も反応に困っておったが、本当に悪いことでは無いからのぉ。さらに官位を催促するわけでも無いから普通に貰っても良いとのことだったが……うーむ。何というか、律儀よなぁ。


×月〇日


どうやら大樹も弾正少弼に官位を与えたらしい。それも兵部少輔だとか。連中め、こちらで弾正台の役職に任じておるのに兵部省の役職を与えるとは何を考えておるのだ?


このような者が大樹などと日の本はどうなっておるのか。誰かヤツを放逐するなりなんなりしてくれんかの? アレに懐く細川管領と言い、長尾某と言い、どうにかならんものか。


△月◆日


またまた弾正少弼から依頼があった。今回はお上が書いている書を売って欲しいと言うモノだ。


まぁ確かにお上は天下の安寧を願い写経等をしておるし、それを売却することで少しでも周りの者たちの生活を良くしようとしておる。


しかしそれを尾張の弾正少弼が欲しがるというのが分からぬ。


いや、弾正少弼は清廉を旨とするお上も認める勤皇の士であるので、悪巧みには使わんだろう。


しかしなんのつもりか分からなければ、お上とて簡単には頷けぬ。そう思い、お上の書いた書を欲しがる理由を聞けば、何のことはない。


あやつはやはり勤皇の士であったと言うことよ。



~~~


「いきなりお上の書いた書が欲しいとは。一体何があったのですか?」


流石に何を企んでいる?とは聞けぬからのぉ。


「はっ。山科様もご存知かと思われますが……基本的に尾張や三河の田舎侍共は血の気が多く、黙って書を読むようなことが出来ませぬ」


「それはまぁ、なんと言いますか」


流石に『そうだろうな』とは口が裂けても言えぬわな。


「そこで主は帝が天下安寧を願い、書を書いていると言うことを知りまして」


「ふむ」


知ったと言うか教えたというか。まぁそこは良い。


「流石に尾張の田舎侍でも帝の直筆の書であれば、頭を垂れて大人しく読むことに専念するでしょう」


「あぁ。それはそうでしょうな」


そうで無ければ日の本の民ではないわ。しかしこれでわかった。つまり弾正少弼の狙いとは……


「お上の書を使って織田弾正忠家の者に教育を施したいと?」


「はっ!」


う~む。お上の書かれた書を田舎侍の教材に使用すると言うのが、不敬なことなのか、それとも最上の扱いなのかは麿には判断が出来ぬ。


ここはお上に確認を取るべきであろうな。


「お話は分かり申した。まずはお上に確認を取りますので、暫しお時間を頂きたい」


「はっ!何卒よろしくお願い致します!


あぁ、そんなに謙らなくて良いから。多分大丈夫だと思うから。


~~~


麿が思ったとおり、己の書を用いて教育を施すと言うことにお上は大層お慶びになり、書の販売を認めて下さった。


いやはや、あそこまでお慶び頂ければ、麿も取り次いだ甲斐があると言うもの。まぁ売値に対しては多少揉めた(弾正忠家が提示してきた金額が高すぎて、お上が驚いた)が、結局は誰も損はしておらぬのだから問題はあるまい。


うむ。やはりあの時、尾張に赴いて先代の弾正忠と繋がりを持ったことは、麿にとって最良の選択であった!


今後も仲良くしたいものよな。


……連中、他の公家が書いた書なども買わんかな? 一応あとで見えやすい場所に置いてみるとしよう。


△月▼日


どうやら弾正忠の者たちは大樹の命で信濃に行くらしい。あの小娘は本当に碌なことをせん! あの勤皇の士に無駄に戦などをさせるでないわ!


△月□日


何でも今川治部が動いたことで武田がまともに戦も出来ないままに降伏したらしい。治部を嫌う大樹からすれば業腹であろうが、我々からすれば胸がすく思いよ。


さらに弾正が治める所領が増したと言うではないか。承認? いくらでもしよう。晴信だろうがなんだろうが許す。そのまま大樹を痛めつけよ。


◎月○日


いきなり平手が聞きたいことが有ると言うから何かと思えば、まさか関白殿下があのようなことをしておったとは。


流石にお上もお怒りであったわ。


弾正を宥めるために弾正大弼への補任を打診したが……うむ。礼金と塩と米が送られてきおった。どうやら怒ってはおらんようじゃな。


しかし殿下にも困ったものよ。今更武衛などと会って何をしようというのか。


◎月×日


くぁwせdrftgyふじこlp!


◎月▽日


いやいやいや、美濃の親殺しと駿河の今川治部と長島の本願寺の坊官と武衛による弾正包囲網だと?! 治部が掲げる名分は武衛を傀儡にしている弾正を討つと?


一体関白殿下は何をしているのじゃぁぁ!!


㊤月㊦日


……弾正が武衛を弑逆したか。それは構わん。むしろ良くやった。これで弾正も無駄に武衛に気を使うことなく我らに使者を立てることも出来るだろう。


なにせ大樹も京にはおらんからの。細川のアレが居なくなった大樹など、あとは朽ちるだけであろう。そのまま近江の谷から出てくるでないわ。


まぁアヤツは良い。まずは今回の戦勝を祝うのと、弾正を尾張守へ補任することで此度の戦に我らは関与していないと言うことを形にするべきであろうな。


それと、そろそろ一度弾正を上洛させるか?


正五位上なので許可を出せば一応昇殿は出来るし、お上も謁見を断るような真似はなかろう。


ただ陸路は美濃やら近江の連中が居るし、海では石山の本願寺がどう動くかわからんよな。


……無理強いして怪我でもされたら困るし、弾正の上洛にはもう少し時が必要かもしれん。


まずは平手あたりにやんわりと聞いてみようかの。


―――――



「ふむ。今日はこんなところか?いやはや、それにしても弾正大弼と付き合いを再開して僅か一年と少し。その間、あやつ等が朝廷に寄進した額は優に6000貫は超えておるし、麿も1000貫を越える銭を貰っておる。このまま弾正が力をつけて、大樹に代わって京洛に平穏を齎してくれれば言うことはないのでおじゃるがなぁ」


そう言う言継とて自分でも荒唐無稽なことを言っているのは分かるが、今の大樹だの管領だの三好筑前だのと言った連中と比べれば、如何に弾正が得難い存在なのかは一目瞭然である。


そんな彼女に禁裏の守護者となってもらいたいと思うのは、関係者各位の願いでもある。


「とりあえず、最低でも機嫌を損ねないようにすることが良いでおじゃるな」


己が書いた日記を見て、信長のありがたみを再認識した言継はそう心に決めるのであった。





―――――


おまけ


尾張那古野。


「ほむ? 爺からなんか来たけど、なんかしとったかの?」


「京から? ……この時期だと武衛絡みじゃない?」


「あぁそっちか。勢いに任せて全部殺ったものなぁ。後悔も反省もしとらんが、武衛様も一応は帝の臣であると考えれば、何かしらの叱責が有るかの?」


「叱責って言うかお小言程度だと思うけどね」


「ま、それはそうじゃろうな。むしろ「よくぞ文句を言える気概が有るモノじゃな!」と褒めるべきかもしれんぞ?」


「いや、それは褒めてないわよ?」


「え?そうなの?儂的には普通に「見事!」って感じなんだけど」


「……アンタ、そうやって変なところで盛り上げようとするからダメなのよ」


「グッ!」


「まぁダメ出しは後でしてあげるから、まずは書状を見ましょ?」


「うぅぅ。コッテリ絞られる予感がビシビシするんじゃよ。……よし、白髪も巻き込んでやるっ!」


「あぁ、まぁ誾千代もしっかり教育しないと駄目なのは確かね」


「うむ!(よしっ!)それでは、書状を確認するとしようかの!」


「そうね、何をするにしてもまずはそれからよね」



………………



「……尾張守って」


「うーん。武衛を殺したことを叱るどころか、褒めるってどうなのかしら?」


「公方はどんだけ嫌われとるんじゃろうなぁ」


「ま、わからないでもないけどね。アンタも気を付けなさいよ?増長とか慢心してるって思われたらこうなるんだから」


「いや、公方の場合は何か違う気が……ひぃ?!」


「ナニカイッタカシラ?」


「ナニモイッテマセンッ!」


服部党を滅ぼし、清須を落とし、武衛を除くことで尾張を完全に平定しても、信長と姫様はいつも通り変わらぬ仲であったと言う。



誰得山科日記。と言うか、日記ってこんな感じで良いのでしょうか?


え?公家言葉を使わないのは何故か?作者がわからないからさ!ってお話。


近衛はこれからどうなっちゃうの~?(謎)


――――


いつも誤字修正ありがとうございます!


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