表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/127

10話。姫様とマダオの巻

書いてる途中で何度も消えた…コレだからスマホは駄目なんだ(作者の実力不足)


前の話から2日経っております。


前半姫様

後半弾正忠視点




あ~何と言うか、随分頼りないと言えば良いのかしら? なんだかんだで客将に収まったとは言え、初対面の私達を前に家老が号泣するのはどうかと思ったわ。


こんな家で大丈夫なの? って聞いた私は悪くないと思う。


そもそも普段の衣類に注意を促して、それを信長が理解しただけでああなったって言うのがねぇ。今まで礼節に関してどれだけ信長が周囲に苦労を掛けてたのか良く分かるわ。


まぁ物心付いた時から自分を支えてくれてきた筆頭家老と次席家老ですもの。多少のお小言を無視しても本気で自分を見放すなんてことは無いって考えていたんでしょうね。


話を聞く限りだと、二歳だか三歳の頃には城を預けられたって言うし。そのときからの付き合いなら尚更よ。


だけど、人間の我慢には限界が有るの。今のままだと「いい加減にしろ!」と言って殺しに来るか「もう知らん」て言って見捨てるか「教育に失敗して申し訳ない」と言って腹を切るかよね。


しかし信長のお父上である弾正忠の教育方針が良く分からないわね。彼からすれば信長の自立心を養う為とか、自分が戦に行ったときの暗殺の防止とか、あとは次期当主に守護代とか斎藤とか今川の息が掛かった家臣の接触を嫌ったとか色々有るんだろうけど、その所為で信長と正妻である母親との接点が無くなり、その母親が己と接点が多い弟を可愛がるようになって御家騒動になりかけてるんですもの。


これはもう何とも言えないわよねぇ。


信長にしてみれば、母親に自分を見て貰いたいっていうのもあって色々と派手な行動をしてるんだろうけど、その結果が『うつけ』でしょ? 母親にしてみたら幼いころから距離を置いてきた特に思い入れもない子が『うつけ』じゃあねぇ。


そりゃ「あんなうつけは私の子じゃない!」と言いたくもなるわよ。


私はお父様が似たような状況だったけど、傍に千寿が居たし、習い事が多かったから、お父様の気を引くために派手に動き回るなんて考えもしなかったけど、もし私が変な行動してて『うつけ』なんて呼ばれてたらどうなってたかしら?


……うん、普通に殺されていたわね。


その点信長は現在の当主に認められているから、最悪ではないわ。


とはいえ散々に悪評が有る信長を廃嫡しないのは、愛情や信長の可能性を信じてると言うだけでは無いわよね。


恐らくだけど、甘やかして育てた弟君では周囲に家を乗っ取られると判断してるんでしょう。


普通に考えれば、今の弾正忠家は本家である守護代家に逆らってるような状態ですもの。頭が古い連中は守護や守護代に従うことこそが尾張の為って考えるでしょうね。


そしてその頭の古い連中が掲げてるのが信長の弟の信行。彼が家を継げば、弾正忠家はただの守護代の家臣に成り下がるわ。


まぁ元に戻ると言えばそれまでなんだけど、それは今の弾正忠家を作った当主には認められないこと。


他の後継者としては長男の信広とか言うのが居たらしいわね。彼はそこそこ優秀らしいけど、元が妾腹だし、少し前に戦で負けて今川に捕まったとか。それだと跡は継がせられないわ。


後は斎藤やら今川の手が入ってる家臣に囲まれた幼い子供か、家臣と疎遠な『うつけ』の信長。


家臣と疎遠と言うのは当然危ういことだけど、他家の手が入らないってことでもあるから「独立」と言う面で見れば悪いことじゃない。


そして、己の跡を継ぐ信長が少しでもマトモになることは、家督相続後の政にも良いことだから。弾正忠が私たちの指南役就任に反対する理由は無いでしょう。


と言うか、何で彼は御家騒動を起こそうとしている正妻や弟を殺さないのかしら? 話し合いで収まるとでも思ってるの? そんな段階はとっくに越えてるでしょ? それすら理解出来ないの?


……もしそうだとしたら、そんな老害はさっさと殺すべきよね?


少なくともお父様は家督争いを嫌って私を殺そうとしただろうし、私だって千寿に説得されてなかったら重臣たちの意見に従ってお父様や塩市丸を殺してたわ。


あの当時の私たちでさえそうなんですもの。今の信長は、家督争いで長々と戦なんかするわけにはいかないのよ。そんな無駄なことに割ける時間も労力もないし。


そして家督を争うことになる弟や、その後ろ楯になっている母親を生かすのは織田弾正忠家にとっても信長にとっても最悪の決断となるでしょう。最低でも今のうちに母親と信行を出家させるべきだわ。


本来は内乱の芽は早めに摘むべきなのよ。だけど信長には無理よね。あの子は親や家族の愛情に餓えてるっぽいし。


だからこそ、これから死にゆく弾正忠が自分の責任で殺るべきなのに、それをしないで静観しているって言うのがわからない。


もしかして身内での戦を嫌う信長に「弟や母親を殺すことで大名としての覚悟を決めろ」とか言うつもりなのかしら?


それならそれでちゃんと言わないと駄目でしょうに。

そうしないと誰も彼も殺すだけの修羅モドキになるわよ?


後は、信長が失敗しても最悪守護代の家臣としての織田家を存続させる為、かしら?


家を残すと考えれば悪くは無いのかもしれないけど、ハッキリ言って甘いわ。愚かと言っても良い。


守護代家からの独立をするなら全力でやるべきなのよ。どっちつかずでは最終的に両方失敗する。


具体的に言えば、守護代家に従った後、今川や斎藤との戦に駆り出されて殺されるわね。


連中は弾正忠に恨みが有るし、家督争いでグダグダになった家を継いだ後継者を生かす理由も無いんだから。


むしろ生贄として差し出されるんじゃないかしら?

家、と言うか血筋を残すだけなら娘を京の公家にでも嫁がせれば良いわ。


実際に娘を尾張内部にばら撒いてるみたいだし、それらが本家と繋がれば「織田」としては残っているわよね。


そこまでやった後で、弾正忠家として全賭けすべきじゃないかしら? 中途半端に両方を選択しようとして家を割れば力が落ちるだけで、信長と信行の共倒れにしかならないと思うんだけど。


因みに最悪は弾正忠に正妻と信行を殺す覚悟が無い場合ね。この場合は弾正忠は家督争いの種を放置するだけの老害でしかないわ。


それならさっさと信行や母親ごと殺すべきなんだけど、残念ながら今の信長には、それをやった場合についてくる家臣が居ないからね。


斎藤や今川のことも考えれば、本当にグダグダよ。


ま、所詮は織田家の問題なんだけどさ。とりあえず今のところは客将に収まったし、このまま織田家が滅んでも関係無いっちゃ関係無いわ。


危ういと思ったらさっさと他所に行けば良いだけの話だしね。


結局私としてはこんな感じで色々危険だと思うけど、それでも千寿が織田家に仕えても問題無いって言うのなら……きっとそうなんでしょうね。


どんなことが有っても千寿が私を裏切ることは無いし、間違えることも、あんまり無いもの。


いや、千寿の目は信じてるわよ? だけど、今の信長に千寿を使いこなすことが出来るとは思えないのよねぇ。


千寿は向こうに居たときから「城を預けても良い」とか、「家を興しても良い」とか、「重臣の娘を嫁がせたい」とか色々言われてたもの。大友家で将来を約束されてたのに私の為に出奔なんかさせちゃったからね……私は私なんかの為に千寿程の人物を腐らせる気は無いのよ。


千寿はいつだって私が苦労をしないようにって動いてるけど、私だって千寿に必要以上の苦労なんかして欲しくないの。


もし織田家が信長が千寿を扱いきれなければ、千寿を殺そうとしたり放逐したりするかも知れないじゃない。実力的に殺されることは無いだろうけど、そうなったらまた放浪でしょ?


2人旅も悪くないけど、どうせ仕官するなら無駄な時間を過ごさない方が良い。


だから最低でも千寿を抱え込める器が有る主君に仕えて欲しいの。信長は確かに成長の見込みが有るかもしれないけど、所詮は尾張の守護代の家来の次期当主だから、どうみても役者不足なのよね。


まぁ、この先家督争いがあるから、現在敵が治めてる土地が狙えるのはわかるけどさぁ。


いくらなんでも規模が小さすぎるわよ。お互いが尾張の下四郡の家来で、敵と味方合わせて2千前後って。それが家督争いなの?


この辺は何度も確認したけどそれで正しいらしいし。


それもこれも、弾正忠に仕えてるのと大和守に仕えてるのが混在してるからなんだろうけどさ。そもそも尾張全体で集めることが出来るのが大体1万くらいらしいっていうのが、もう、ね。


それで尾張の上四郡が美濃の斎藤に備えて動かず、南の下四群の中の更に半数が今川に備えるから残るのは中央の清須の大和守の兵と弾正忠の兵。


清須の守護代が千くらいでしょ? 弾正忠家だけでその倍の2千人が動くと考えれば十分大きいのかしら? だけどねぇ。この規模の戦に千寿を使うの? どう考えても牛刀で鶏、どころか小魚を捌いてるわ。勿体無いわよ。


ま、だからこそこうして、信長のお父様である織田弾正忠信秀に会いに来たんだけどね。ここでの交渉が上手く行けば、捌く相手が小魚から普通の魚程度にはなるでしょう。


……て言うか待たせ過ぎじゃない? もし何か企んでるなら千寿には及ばないけど私だって九州の修羅だってことを教えてあげるわよ?


丁度良く隣の部屋に待機してる小姓みたいなのが居るしね。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



先日平手から連絡が来た「信長に会いに来た貴人」とやらが佐渡(林)と平手の2人を連れて面会を求めて来おった。いや、それは構わぬのだ。むしろ儂も会わねばならんと思っておったからの。


しかし何と言うか、平手も佐渡も完全に傅いておって、もはや誰の家臣かわからんな。


苦笑いを堪え、取り敢えず「姫様」を客室で待たせ2人から話を聞けば、何でも信長は彼らを客将として召し抱え、織田家指南役と言う役職を与えたらしい。


それでは傅役である平手の立場が無かろう? と問えば、平手も佐渡も諸手を上げて歓迎しておるときた。


あまりに不自然なので不思議に思って本人に話を聞けば「信長が素直に言うことを聞いてくれるから」と涙ぐんで言うのだから、苦労を掛けているとは思うがな。


だが、いかに九州大友家の者であっても猜疑心が強い信長が素直に心を開くとは思えん。なにか特別な仕掛けでもしたのか?


儂が覚えた疑問を告げると、佐渡は然もありなんと頷いて儂に説明をする。


「大殿のお気持ちはわかります。ですがあの方々は……何と申しますか、血筋もそうですが、その考え方や能力が我々とは一線を画しておるのです。若殿もそのことをしっかりと理解しておりましてな。学べるところは何でも学ぼうとしておいでなのですよ」


自分もまだまだ学ぶところがあると言う佐渡と平手を見れば、なるほどと思う所は有る。


基本的にありきたりなものは好まぬし、好奇心が旺盛な子じゃからな。


西国の貴人が珍しいのは確かだし、次期当主としての見識は信長以上。いや、話が本当ならば儂すら超えておるじゃろう。


そういった諸々の事情を認めることが出来れば、後は「知りたい」と思う心が表に出る、か。


身元は堀田に確認させておるからその結果待ちではあるが、蝮も治部大輔(今川義元)も西国の貴人などという伝手は持たんだろうし、持っていたとしたら自らで抱え込むだろうから、間者の恐れは無いとみても良さそうじゃな。


あと気になる点と言えば……


「なるほど話はわかった。しかし、此度は吉弘殿の方は来ていないようだが何か理由があるのか?」


そう、信長に仕える事となった貴人は二人なはず。何故「姫様」のみがココに来るのだ?


実際彼女は吉弘殿の妻らしいから「姫様」の姓も吉弘殿になるのだろうが、まぁこの方がわかりやすいからな。


「はっ。現在吉弘殿は若殿や恒興をはじめとした若手連中に教育を施しております故」


平手が現在の吉弘殿が何をしているかを説明してきたが……そうか。儂への挨拶よりも指南役としての仕事を優先しておるわけじゃな。


「なるほど」


面白くはないが、理解は出来る。


織田家指南役と言っても、彼らが仕えたのは儂ではなく信長。ならば信長を優先するのは間違いではない。


「それと姫様が「自分が挨拶をするから吉弘殿は仕事をするように」と言って彼を那古野に押し留めたのです」


佐渡が平手の言葉を補足する。しかし「姫様」が? どういうことだ?


「姫様は降嫁したとはいえその身に流れる血は九州大友家の直系です。重臣の次男である吉弘殿よりも格が高く、使者としては不足は無いと判断したのでしょう」


「あぁ、なるほど」


それはそうだな。いや不足どころか、本来ならばこちらから挨拶に行かねばならん相手だったな。それを考えれば面白くないなどとは言えぬな。むしろ申し訳ないと謝罪すべきか?


「大殿、とりあえずはあまりお待たせするべきではありませぬ。元々が病床の身、挨拶を受けるだけでも良いのです。それならばこうして「姫様」を待たせて我らと話をするのは無礼と思われませんか?」


む、言われてみれば平手の言う通りよな。もし何か提案されたり、その腹の内を探るならばこうして2人に話を聞くのも必要だが、それは彼らの身元が判明してからのことよ。それまでは「信長を頼む」とだけ言って少量の資金を出す程度でよかろう。


そして挨拶を受けるだけなら準備は身支度だけで良いからの。


彼らが本物の場合を考えれば、こうして待たせるのも無礼だろうし、そうでなくとも信長を鍛えてくれると言ってる者だ。無駄に待たせて儂らに不満を抱かれても困る。


「相分かった、平手の申す通りよ。これより挨拶を受ける故、準備致そう」


「「はっ!」」


儂がそう言えば2人は心底安心したような顔をしておる。よほど「姫様」を待たせるのが怖かったのだろうな。


蝮や治部大輔との戦にも怯えぬこの2人をこうまで怯えさせるとはな。大友家の直系の姫と言うのもあながち嘘ではないのやもしれぬ。


しかしそうなると一つ問題が……


















「のう平手?」


「はっ!」


「儂はどのような格好をすれば良いのだ? 烏帽子とか必要か?」


相手は武衛(斯波義統)様より上か? 公家よりはどうなんじゃ? 信長に仕える事になったとは言え、向こうは『客将』で指南役なのじゃろう? 寄付金目当ての公家や公方(将軍家)の使者ならともかく、このような相手にどこまで礼儀を払うのが正しいかがわからぬわい。


「お主そう言うの詳しいじゃろ?」


「「あぁ」」


そう思って衣類を用意しようとしたんじゃが……これ、貴様ら! 儂を信長を見るような目で見るでないわ!


仕方ないだろ! 所詮儂は尾張の田舎領主ぞ! こんな儂に貴人の相手とか、一体どうせよと言うのだ! 





当時のノッブはかなりやばいんだぜってお話


早く戦争に行きたーい

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >実際彼女は吉弘殿の妻らしいから「姫様」の姓も吉弘殿になる >のだろうが、まぁこの方がわかりやすいからの。 日本で「夫婦同姓」が導入されたのは明治31年(1898年)と、割と最近で、…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ