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2.選択肢
女は男の質問に答えず、男を眺めていた。
その視線は、同情しているようにも、哀れんでいるようにも、見下しているようにも見えた。
「何で、こんなところに……」
男の質問を遮るように女が口を開いた。
「貴方は幸運よ」
「……は?」
男は女の言っている意味が分からなかった。
「幸運よ、本当に」
女は繰り返す。
男は再び混乱した。
そんな男の様子を意に介さず、女は続ける。
「私に出会った貴方には、3つの選択肢が出来た」
「……選択肢?」
「1つ目、『生』。貴方はここまで来た道をそのまま帰ればいい」
「……そんなことするわけないだろ!」
男は思わず声を荒げたが、謎の女に振り回されているという状況にすぐに冷静さを取り戻して口をつぐんだ。
(戻るわけないだろ……。どれだけの覚悟をしてここに来たと思っているんだ……)
男はそう口には出さず反論したが、じっと見つめてくる女の目に全て見透かされているのではと恐怖した。
女はさらに続ける。
「2つ目、『死』。貴方はこのままそのフェンスの向こう側へ行けばいい」
(言われなくてもそうするつもりだ……)
「3つ目、『消滅』」
「……は?」