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それでも俺は恋がしたい  作者: 明智龍獅
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幸運は不運の罠!

 学校初日は、クラス委員を決めるのが恒例だが、あの流れで委員長は、桐原萌愛になったらしい。

 なったらしいというのも、俺は、桐原に蹴り上げられた後、気絶状態で保健室に速攻運ばれたそうだ。

 教えてくれたのは、担任の先生だった。

 生徒に事情を話すのも先生の仕事なのだろう。なにせ怯えながら教えてくれたのだから。

 俺が起きた時には、ほとんどの生徒が学校に残っていなかった。

 少し、俺の不運について教えておこう。

 俺と関わった者は、不運におちいる。

 その不運さは、石につまづいて転びそうになるだけの軽いものもあれば、壁にぶつかって、頭から血が出るほどの重傷を負うケースもある。

 何が起こるかは、ランダムで、対象者のダメージ量もランダムで、頻度とどのくらい続くかもランダムである。

 ただ、一日過ぎて朝になれば、その不運の効果は、消えている。

 なぜこの話を今するのかと言うと俺に関わった人間が今日この学校にいるはずなのだ。

 そう、俺を保健室に運んだ人間だ!

 でもそいつらは、安全なのだ。

 俺が意識のない状態で関わった人間は、不運にはならない。

 その日だけそいつは、不運には、一切ならない絶対安全権を得るのだ。

 ただし例外は、ある。

 自ら不幸な道に行く場合と普通の状態のとき既に関わっていた場合や意識が戻った後に関わってしまい不運が上書きされる場合だ。

 万引きをして、捕まり牢屋入りするとかだ。

 このことも俺のせいにされては、たまったもんじゃない。

 今日俺を運んだ人は、誰だか知らんが多分俺と関わりがない人間だから大丈夫なのだ。今日関わることもないだろう。

 担任の先生は、自分の仕事をしただけだから関わった内に入らないだろう。

 関わりたくなさそうな顔していたが…(笑)

 なぜこんなに詳しいかと言うとかつての友達に興味本位で実験を何度かしたからである。今思うと惨いことをしたと思う。

 このような出来事がトラウマになり俺は、いつしか人を避けるようになってしまっていたのだ。

 俺の不運の話はここまでにしておこう。

 俺の不運は、まだ謎ばかりだ。未だに知らないこともあるだろう。いつか謎を全て知って解消法を知りたいものだ。

 俺は、先生にお礼をした後、下駄箱で靴を履いた後、朝の出来事があった校門を少し悲しい目で見ながら苦笑いしてそこを通った。



 地獄のような入学初日の下校中、俺は、家に向かってまっすぐ歩いていた。

 珍しく今日は、帰り道にドブに落ちたり、犬のフンを踏むなどのいつも通りの不運がなかった。

 まあ、今日の出来事が悲惨すぎたもんだから神が同情してくれたのかもしれない。

 歩いている最中俺は、道路に光るものを見つけた。

「500円玉だ」

 落し物は、警察に!

 小学生の時に教えられた人は、多いだろう。

 俺も昔は、財布を拾ったことがあるから分かるがこの行為は、無意味だ。

 何故かというと、持ち主に怒られるからである。

 普通ならば褒められてお金を少しくれるものだろうが、俺が拾うと逆にお金を取られてしまう。

 俺の親切心は、届かないどころか俺が取ったとかぬかしやがる。罰金を要求されて、俺は、良い思いをしたことがない。

 だから、俺は、人のものを拾わない。何度も言うが無意味だからである。

 じゃあ、500円玉もスルーだ……ってことには、ならねえ!

 もちろん拾って使うに決まってる。

 少し考えれば分かることだ。落ちてる現金に持ち主なんかいねえ!名前が書いてあるわけでも、誰かのものと言う証拠があるわけでもない。

 警察に持っていってもただ取られるだけだ。

 小さい時、500円玉を警察に渡したことがあったが「ありがとう」と言われ、500円玉を取られてしまった経験がある。

 持ち主に渡しとくからと言われ、当時の俺は、警察に褒められて嬉しかったのか、うなずいて帰ってしまったが、今思うと警察が言ったことは、嘘なのだ。

 だって、持ち主なんか分からないのだから。

 その経験を活かし、俺は、拾った500円玉をルーレット付き自動販売機に入れて150円のジュースを買った。

 拾ったお金は、すぐ使わなければ罪悪感に負けて、警察に渡してしまいそうになる。

 すぐ使って、ワンコインでなくすれば渡す気も失せるというものなのだ。

 そして、今の俺は、つくづく運がいい。

 ルーレットでプラス2本の当たりが出た。

 最初に選んだコーラのほかに缶コーヒーと妹用にクーちゃんリンゴ味を選んだ。

 3本は、持つのが大変だが当たったジュースは、嫌な気にならない。俺は、冷たいコーラとクーちゃんリンゴ味をカバンに入れて、温かい缶コーヒーをポケットに入れた。缶コーヒーをカイロ代わりにし、俺は、寒さをまぎれさせた。

 寒い四月は、早く帰りたいものだ。

 春は、温かいイメージの方が強いのに寒いのが現実である。多分、桜を見た人が勝手に温かい気分になったのが由来だろう。(根拠は無いが)

 お年寄りたちも春だねえ、温かいねえと言いながら、熱いお茶をすすっている。やっていることと言っていることが矛盾である。

 噂をしてるとお年寄り二人が俺の前に立ち止まった。

 よく見ると1人は、今朝邪犬チワワの散歩をしていて途中で手綱を離してしまった役立たないおばあさんだった。

 この怖い顔をしているジジイは、おばあさんの夫だろう。

「己は、うちんとこの犬をどこやったんじゃボケー」

「あなたのせいでうちの犬は、行方不明なのよ!一緒に探してちょうだい!」

 俺は、笑顔でこのクズなジジイどもの用件を聞いた。

 何で俺せめられてんの?朝のことで怒りたいの俺だし、あのバカチワワに追いかけられなければ、入学初日に変態扱いされなかったんだけど!っていうかそもそもおばあさんが手綱を離さなければ良かっただけだよね。何逆切れしてんの?俺腸が煮えくり返りそうなんだが、でるとこでてやろうか?口喧嘩上等だぜ!返り討ちにしてやるぜー!…

 

 俺は、チワワ探しを熱心にした。

 正直チキった。あんなごついジジイに喧嘩売るなんて俺にはできなかった。

 俺は、制服が泥だらけになりながらも必死で邪犬チワワを探した。

 草むらを探したり、川の中に入って探したりしたが、チワワはどこにも見つからなかった。

「謝って許してもらおう」

 俺が、絶望的な声を漏らしたその時だった。

 とても美人なお姉さんが家から出てきた。

 きれいな顔にも注目だが、それよりも注目したのが手に持ってるドッグフードだった。

 犬小屋は、見渡す限りないのになぜドッグフードを持っているのか疑問だったが聞き覚えのある鳴き声を聞き俺は、納得がいった。

 どこからか鳴きながら走って来た犬は、俺とジジイたちが探している今朝の邪犬だった。

 このチワワは、凶悪なほかにエロ犬だったらしい。美人のお姉さんにべったりだった。

「あの、こいつの飼い主のおじさんとおばさんが探してたんですけど、こいつ連れてっていいですか?」

「それは、大変ですね。餌食べ終わったら連れてってあげてください」

 そう言って、お姉さんは、家の中に入っていった。

 お姉さんを追いかけようとするエロチワワを押さえつけて、餌を全部食わせて、ジジイどものとこに渡しに行った。

「ありがとう」

「よくやった礼を言うが次やったらお前を容赦なく殴るでのう、覚悟しとけや」

 物凄くお礼を言ってくるおばあさんと微妙な礼をしてきたジジイと別れて、俺は、また、真っすぐ自分の家に歩んだ。

 のどが渇き缶コーヒーをポケットから出して、俺は、プルタブを開けた。

 口にもっていきコーヒーを流し込もうとした時、水滴で缶を滑らせて、落としてしまった。

 ズボンの裾は、コーヒーで濡れてしまった。落ちた缶を拾おうとした時、こぼれたコーヒーに足を滑らせてしまった。

 缶は、足に当たってドブの中に、俺は、地面に尻餅をついてしまった。

 べちゃっ

 お尻を見ると犬のフン踏んでしまったらしい。

 おまけに起き上がろうとしてドブに足を突っ込んでしまった。

 幸運は、不運の罠だと今日思い知らされた。少し勉強になった気がする。

 俺は、泣きながら家まで歩き、やっとのことで家に着いた。

 地獄の世界からやっと天国の家に入れるのだと思うととても嬉しかった。

 鍵を開けて、俺は、我が家に入った。

 後で、聞いた話だが邪犬エロチワワは、色んな美人お姉さんに餌をもらってたらしく、別に心配して探さなくてものたれ死ぬことはなかったらしい。

 それなのに必死こいて探して、泥だらけになって、犬のフン臭くなってしまって、俺ってやっぱり不運だ――‼


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