キンモクセイ
電車の車内に香る秋の香り。
停車駅が目的地を告げ、ドアを開けた瞬間キンモクセイの香りが車内いっぱいに広がった。
「セイちゃんは卒業後はどこいくん」
「まだ就職すら決まっとらん」
こんな会話をするのも残り数回になるだろう。
卒業まで4ヶ月。
長いようで残り少ない。
「ハルは決まったん」
「セイちゃんと同じで決まっとらんよ」
双子であり欠かせない存在。
別々の場所で就職なんて考えれなかった。
その感情は家族愛、兄弟愛を通り越して『恋愛』へと育っていた。
「ねぇ、セイちゃん」
やっぱなんでもないや。
言えばすべてが終わるようで怖かった。
私の初恋の相手はお兄ちゃん。
一卵性双生児のお兄ちゃん。
キンモクセイの花言葉は「初恋」