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俺と緋乃さんの魔法部隊  作者: 空乃そら
第1章 相談事
7/49

7.



     ※



 「シローさん、後ろ大丈夫です」


 「こっちも平気だ。じゃあ、せーのでダッシュで。せーの!」


 俺たちは掛け声とともに、急いで通路を渡る。もし誰かが来たら、言い訳できない状況だから油断は許されない。



 俺たちは現在、学生寮にいる。緋乃さんに協力することにしたのはいいが、話している間にいい時間になってしまったので解散することになったのだが。


 「シローさん、私はどうすればいいでしょう?」


 という緋乃さんの発言でいったん中止に。わけがわからず、


 「どうすればいいって……。とりあえず家に帰って、明日また詳しく話そう」


 と言ったところ……。


 「でも私、家なんてないですよ?」


 と爆弾発言をしてくれた。


 よくよく考えれば未来から来た緋乃さんに家がないのは当たり前なのだが、過去に来てから俺を探していたんだから、その間に使っていた家があるのではないかと思ったのだが。


 「実は過去に着いたとき、目の前にシローさんの学校があったんです。だから、過去に来てすぐシローさんに会えたんですよ。それに、ここじゃ未来のお金なんて使えませんから無一文です」


 と笑顔で答えてくれた。正直どんな偶然だよと思わなくもないが、緋乃さんがこう言っている以上仕方がない。とはいえ寮の門限も刻々(こくこく)と近付いてきているし、かといって緋乃さんをこのまま放置しておくことも出来ない。というか無一文のうえに何の準備もなく過去に来るなんて、天然の一言じゃ片付けられない気がする。


 まあ、そんなわけでとりあえず俺の寮の部屋でこれからどうするかを考えようということになったのだが、寮は女子禁制なのでこっそり帰ることにしたのだ。


 「じゃあ、鍵あけるから誰か来たら教えてね」


 「はい」


 先ほどからこんな感じで分担して、なんとか誰とも接触することなくここまで来れた。問題は鍵をあけるときに一番隙が出来るということだ。だがここをクリアできれば、もう安全といっても大丈夫だろう。


 「よし、開いた。じゃあ緋乃さん入って」


 ドアを大きくあけ、緋乃さんを中に入れる。


 「お、お邪魔します」


 緋乃さんはちょっと緊張したような顔持ちでいそいそとなかに入った。同年代の男の部屋に入るのだから、それなりに思うところがあるのだろう。まあ何にせよこれでもう安全なはずだ。


 「あら? シローくん?」


 「……っ⁉」


 などと悠長なことを思いながら緋乃さんが中に入るのを待っていると、すぐ近くから聞き慣れた声が耳に入る。この声は間違いなく、寮の管理人さんだ。

俺のなかでそう結論が出た瞬間、靴を脱いでいた緋乃さんを後ろから突き飛ばすと、急いでドアを閉める。


 「わっ!」


 ドアの向こう側で緋乃さんの声が聞こえたが今はスルーだ。


 「か、管理人さん。どうも」


 なんとかそう返しながら横を向くと、通路の少し先に管理人さんが立っていた。どうやら緋乃さんのことはまだ気が付かれていないようだが、そのまま俺のほうに近付いてくる。


 「少し前に女の子と一緒にいたけど、あの子はシローくんの知り合いなの?」


 緋乃さんが最初に寮に来たとき管理人さんに見られているので、そのことを言っているんだろう。別に部屋に入れたところを見られているわけではないので、今ならなんとかごまかしが効くはずだ。


 「あ、はい。あの子は俺の友達で……。わざわざ部屋の前で待っててくれたみたいなんです」


 「そうだったのね。でもシローくん、この寮は私以外の女の子禁制だから……」


 「あ、はい。わかってます」


 いい年して――なんて言うと怒られるが――私以外の女の子なんて言うところあたりが管理人さんらしい。


 「そう、シローくんが物分りいい子でよかったわ。まあ万が一にも間違いがあったらいけないし、他の子に示しがつかないからね。本当は私もこんな厳しく言いたくないのだけれど」


 管理人さんは口に手を当てて、クスクスと笑う。その仕草は管理人さんにとても似合っていて、上品さを際立たせていた。


 「いや、こちらこそすいませんでした」


 頭を下げて謝る。事実、悪いのはこちらのほうなのだ。管理人さんは優しくて生徒からも人気が高いし、どんな人が相手でも決して態度を崩さず差別しない。

だからこそ、俺だけ注意をしないわけにはいかないのだろう。


 「ううん、大丈夫よ。じゃあ、私はそろそろ行くわね。時間とらせちゃってごめんなさい…………あら?」


 そう言って別れようと思った矢先。


 ガンッ!



 という大きな音が俺の部屋のドアから聞こえてきた。ドアの向こうにいる人物……どう考えても緋乃さんの仕業だ。


 「今の音は……」


 まずい。これは本当にまずい。緋乃さんには後で文句を言うとして(突き飛ばした俺も悪いのだが)、とにかく今の状況を何とかしなければならない。見つかっても退学とかそういうことにはならないだろうが、確実に怒られるうえに最悪未来のこともバレてしまうだろう。そうなったら最後、俺も緋乃さんももう普通の生活は出来ないかもしれない。


 「あ、その……鳥です! 鳥!」


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