48.
「今日転校生が来るんだってよ!」
俺は教室の机にぐでーっと体重を預けながら、クラスメイトたちの話し声を流し聴きする。
緋乃さんとの夢での出来事から早数ヶ月が経った。あれからというもの、みんなで聞き込みやネット検索などを駆使してなんとか魔法を無効化する魔法を持つ人に会うことができた。そして呪いを無効化するために緋乃さんがこの町を出てそれなりに経つが、いまだに何の音沙汰もない。
「シロー、また緋乃ちゃんのこと考えてたの?」
そんな風に沙紀は顔を覗き込んでくると、隣の席に腰を落とす。そこは沙紀の席ではないが、まだ朝のHRには時間があるので大丈夫だろう。
「んー、やっぱりあれだけいろいろあったからなあ。ちょっと心配ではあるかな」
「でも待つしかないんだし、仕方ないじゃない。私達が焦っても何も出来ないわけだし」
「それはそうなんだけどな」
確かに沙紀の言うとおり、俺が焦ったところで仕方のない問題だ。だが、ここまで何の連絡もないと何か問題でもあったのではと不安になる。
「まあ、もう少しすればきっと連絡あるわよ。シローさん、ただいまです! とか言ってひょっこり姿現すんじゃない?」
「ありえそうで怖いな……」
沙紀とそんなたわいもない話をしているとガラガラと教室のドアを開けて先生が入ってきた。
「おーい、お前ら。席に着けー」
どうやら沙紀と話しているうちに朝のHRの時間になっていたようだ。
「やば、じゃあシロー、またね」
「おう」
沙紀は颯爽と自分の席に戻っていく。
「よーし、全員席に着いたな。じゃあ今日は転校生を紹介する」
ああ、そういえばさっきクラスメイトのやつが言ってたっけ。しかしこの時期に転校生とは珍しいな。
「じゃあ、星野! 入って来い」
先生にそう言われ、ドアを開けて入ってきたのは――、
「シローさん、ただいまです!」
星野緋乃、その人だった。




