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俺と緋乃さんの魔法部隊  作者: 空乃そら
第4章 魔女
38/49

38.

 

「魔法は使えませんが、夢のなかの服装とかは寝るまえのままなんですよ。だから武器を身につけていれば、それで戦ったりとかは一応できますよ」


 「そっか。でもそれだと日本刀を用意するのは無理かなあ。せいぜい木刀くらいかな」


 「まあ、今どき日本刀売ってるとこなんてないだろ」


 「そうね……。でも木刀でも魔法がないなら何とかなるわよ」


 「いえ、それが……」



 沙紀のその言葉に緋乃さんは苦笑いをしながら言いづらそうにそう切り出した。



 「実は魔法が使えないのは私たちだけなんです。魔女側はその、普通に魔法とかバンバン使ってくるので……」


 「うわあ、RPGゲームで魔法なしの縛りでラスボスに挑む魔法使いの気持ちがわかった気がするわ……」


 「いろいろ突っ込みたいところだが、言いたいことはわかるな……」


 緋乃さんだけは首を傾げながら「縛り? どういうことでしょう……」などとやっていたが説明が面倒なのでスルーしておく。



 「とりあえず今までの話をまとめると、夢で受けた怪我は現実でも受ける。相手は魔法が使えるけど、こっちは使えない。あとは相手が魔女じゃなくて怪物ってくらいか」


 「あれ? ちょっと待って。でも校長先生は魔女と戦えって言ってたわよね。これって魔女との戦いに

なるの……?」



 「あー、確かに微妙なところではあるよな。でも魔女が出てこないんじゃ仕方ないんじゃないか?」


 「そうよね……」


 「あの……」



 俺と沙紀が頭を唸らせていると、食後のお茶をずずーっとすすっていた緋乃さんがおずおずという感じでゆっくりと口を開いた。


 「もしかしたら魔女をおびきだすこと出来るかもしれないです」


 「どういうことだ?」


 「実は昨晩の夢のとき、あと一歩で勝てるかもってところまで追い詰めることが出来たんです。そしたら魔女が現れたので……」



 「負けそうになったら出てくるってこと? 魔女ってそんな卑怯なやつなのね……」


 「あ、いえ。魔女が出てきたのはあれが初めてだったので断言は出来ませんが……。もしかしたら次も追い詰めれば姿を見せるかもしれないです」


 「なるほど、な。つまり俺たちは怪物とやらを倒した後に魔女と戦わなければならないわけか……」


 「大変ね……。そういえば魔女に弱点とかはないの?」


 「弱点かどうかはわかりませんが……、彼女自体は戦闘は苦手なはずですよ。呪いをかける以外の魔法は持っていないはずなので、それさえ気を付ければ……」



 「呪いをかける、か。かけるための条件とかありそうだよな」


 「まあ強い魔法ほどそういうのがあるってのはセオリーだからね。私の場合は体力とか気力を使うってくらいだけど。つくもちゃんなんか一回魔法発動したら何日も寝込まないといけないし、発動するための条件も三つくらいあったけ?」


 「ああ。こんな長い間、緋乃さんに魔法をかけ続けてるんだもんな。たぶん何かあるとは思うんだけど……」


 「緋乃ちゃん、どう? 何か心当たりとか……」



 沙紀の言葉でうーむと緋乃さんは考え込み始めた。もしこれで何かわかれば呪いにかけられなくて済むかもしれない。


 「あ! もしかしたらあれかもしれないです」



 緋乃さんはしばらく考え込むと唐突にそう声を上げた。俺も俺で考え込んでいたのでいきなり大きな声を出されるとびっくりする。まったく、心臓が飛び出すかと思ったぞ。


 「あの、実はシローさんが言ってたんですけど」


 「俺?」


 「あ、その今のシローさんじゃなくて、未来のシローさんです。あの私が前に魔女に襲われたときのことを話したの覚えてますか?」


 「ああ。たしか不意打ちされたんだっけ」


 「はい。それでそのときシローさんが言ってたんです。『声を出すな』って」


 「声を出すな? それが魔女の魔法の発動条件なのか?」


 「可能性は高いわね……。未だに信じられないけど、未来ではシローは部隊長だったらしいし。何か気が付いても不思議じゃないわ。未だに信じられないけど」


 「二度も言わんでいい!」


 「大切なことなので二回言いましたーってやつよ」


 「本当にお二人は仲がいいですね」


 相変わらずな俺たちに笑みを浮かべながら緋乃さんは席を立つと、


 「食器、片付けちゃいますね。お二人はここにいてください」


 「あ、緋乃ちゃん。それくらい私がやるよ?」


 「いえ、お二人には協力していただいているわけですし。このくらいさせてください」


 「そう? じゃあお願いしちゃおうかな……。ありがとう、緋乃ちゃん」


 「悪い、ありがとうな。緋乃さん」


 「はい、まかせてください」


 緋乃さんはそう言うと、食器と空になったお弁当箱を持ちながら台所へ向かって行った。





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