37.
「さてとりあえずご飯にするか……」
校長室を後にした俺たちは、寮の部屋に戻ってきていた。あの後すぐに「実戦授業で負傷者がたくさん出てしまったため早帰り」という放送が入り、そのまま三人で帰宅することにしたのだ。
「でも今日の夜かあ……。何ていうか、やっぱり急よね」
「だよな……」
校長先生は緋乃さんの呪いについても知っていて、試験に合格すれば呪いのほうも何とかしてくれると約束してくれた。そのため試験は出来るだけ早いほうがいいということになり、今夜執り行うことになったのだ。
「しかし、夢で魔女と戦うなんて変な感じだな」
緋乃さんのために作った焼きそばを机の上に置くと、俺たちは少し遅い昼食を取ることにした。ちなみに俺と沙紀は緋乃さんがわざわざ届けてくれたお弁当を食べている。
「そうね。というか夢に干渉できる魔法なんて聞いたこともないわ」
そう――、校長先生の話によると知り合いに他人の夢に干渉することのできる魔法を持っている人がいるらしい。詳しいことはよくわからないが、その魔法を使えば緋乃さんの夢の内容を視ることも、俺たちが緋乃さんの夢に入り込むことも可能だという。
校長先生のいう魔女を相手に模擬戦をするというのは、夢のなかで魔女を相手に戦闘をすることだった。しかしいくら何でもひとり命がけで戦うというのは危険ということで、校長先生は俺たちも一緒に緋乃さんと戦うことを許可してくれた。夢に干渉できる魔法とやらを使えばいつでも夢から覚ますことも可能で、本当に危険になったら無理やり起こすという条件付きだったが。
「でも本当にいいんですか……?」
しかし緋乃さんだけは頑なにその提案に反対し続けていた。俺たちが揃って抗議しているうちに一度は折れたが、先ほどから何かあるたびにそんなことを言い続けている。
「魔女はお二人が思っているよりも凶悪ですし……。それに夢で受けたダメージは現実でも負ってしまいます」
「だから大丈夫だって。ここまで来たら乗りかかった船だし、危険になったら夢から覚めることも可能なんだぞ? 先生だって生徒の安全を第一に考えてくれるだろうし」
「そうよ。それより魔女についての情報とかをまとめたほうがよっぽど有意義だと思うけど?」
緋乃さんはそんな俺たちの様子を見て小さくため息を吐くと、
「わかりました、もう言いません。その……、よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げる相変わらずな緋乃さんを見ながら、俺と沙紀はくすりと微笑を浮かべる。
「うん、こちらこそよろしくね。それで緋乃ちゃん。魔女について知ってることを教えてもらえる?」
「あ、はい。もちろんです。といっても私自身、知ってることはあまり多くないですが……」
「そうなの? でも緋乃ちゃんって毎日魔女と夢で戦ってるんだよね?」
「あ、いえ、そういうわけじゃないんです。シローさんには以前話したかもしれませんが、夢には魔女じゃなくて怪物とか、そういうのが出てくるんです」
「ふーん、怪物ねぇ……。じゃあ、その魔女の手下みたいのと戦ってるの?」
「はい、最近のでは鬼とか……でした。実は戦うのは稀でほとんどの場合は逃げ回ってるんです。夢では魔法が使えないので……」
「魔法が使えない? じゃあ戦うって無理があるんじゃないか……?」
「シローは魔法が使えなくてもあまり関係ないじゃない」
「う、うるさいなあ! 俺だってたまに成功するんだよ」
緋乃さんはそんな俺たちのやり取りを見ながら小さく笑みを浮かべた。しかしすぐに真剣な顔つきに戻る。




