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俺と緋乃さんの魔法部隊  作者: 空乃そら
第3章 条件
32/49

32.




      ※





「シロー! 次は⁉」


「くっ、――心理理解パシグリア・カタノンシ!!」



俺は沙紀に急かされ、急いで魔法を発動させる。心理理解パシグリア・カタノンシ。これは対象者の行動を予知することの出来る魔法だ。相手が何をするか、どう動くのか。それらを瞬時に導き出す。



「どう⁉」


「くそ、もう少しかかる!」



しかしどうにも俺はこの魔法を使いこなせないでいた。上手く使うことが出来れば落ちこぼれの称号も返上できるかもしれないが、発動にはかなりの時間が必要なうえ、成功確率はせいぜい十%といったところだ。



「ダメ、もう待てない! ――気力抜刀エンエアジ・カニスパシィ!」



そんな俺を見かねて、沙紀が自分の魔法を発動する。瞬間、黄色い閃光がきらめき、沙紀の右手に細長い日本刀が現れた。気力抜刀エンエアジ・カニスパシィ。俺も詳しいことまでは知らないが、沙紀は物体系という位置づけにある魔法を行使することができ、なんでも自分の思い通りに日本刀を造り出せるらしい。しかし無限にというわけにはいかず、日本刀を造り出すにはそれなりに体力を使うので一日に出せる量は大体決まっているそうだ。



「はっ!」



沙紀は俺の前に出ると、目前まで迫ってきていた男子生徒にすばやく一太刀入れる。しかし男子生徒はそれをなんなく避けると、大きく一歩下がって距離をとった。そして口元に嫌らしい笑みを浮かべる。



「おいおい。相変わらずだな、柊沙紀? また海草くんのお守りか?」


「あなたこそ相変わらずね。海草くんなんて呼んで……シローにはちゃんと名前があるのよ? それとも頭が悪すぎて覚えられないのかしら?」


「ふん、そんなやつ海草くんで十分だろ……? ここじゃ実力のないやつに人権は存在しない」



情けなさを覚えながらもちらりと沙紀のほうへ顔を向けると、俺から見てもわかるほど沙紀は眉を吊り上げていた。



「本当に相変わらずなのね。いまだに人を実力でしか見れないのかしら?」


「ああ。普通の学校なら少しは事情が変わったかもしれないが、ここは実力がものをいう育成学校だぞ? まともに自分の魔法も使えないやつなんて邪魔なだけだ」



あまりにもな言い方に腹が立ったが、俺は文句を言いたいのをぐっと堪える。悔しいが彼が言っていることに嘘はない。ひとりひとりの実力イコール学校全体の実力と見られてしまう育成学校の生徒からすれば、魔法を使いこなすことの出来ない生徒は本当に足手まといにしかならないのだ。


「しかも自分では何もせずに女に守ってもらうとは……。同じ男として恥ずかしく思うね」

「くっ……」


自分に実力がないせいで同じ学校の生徒たちに迷惑をかけている以上、文句を言うことは出来ない。何も言い返すことが出来ず、何もすることができない無力感を感じつつ俺は思わず顔を背けた。しかし、



「バカじゃないの?」



いきなり隣から聞こえてきた怒鳴り声に驚いてびくりと体が震える。



「何も知らないくせによくそんなこと言えるわね。シローは確かに魔法を使いこなせてないかもしれない。でもね、少しでも上手になろうと学校に残ってちゃんと練習してるの。自分の実力を慢心しているあなたたちより、よっぽど努力しているわ。だから私はシローが頑張り続ける限り応援する」



「なっ」



なんでそんなこと知っているんだ、と言いかけて言葉が止まる。そう言ってくれた沙紀の表情は真剣そのもので、本心からの言葉だとわかってしまったから。



「はっ、どんなに努力しようと結局は実力がすべてだ」


「そう。もうあなたと話しても無駄みたいね」



沙紀はぶっきらぼうにそう言うと、右足で地面を思いっきり蹴って走り出した。それと同時に黄色い閃光が再びきらめき、二本目の日本刀が生まれる。そして一気に間合いを詰めると、右手で日本刀を大きく振るう。男子生徒はとっさにそれを右手で受け止めようとして――日本刀が男子生徒の手の甲に吸い込まれていく。



「危ないっ!」



思わず声をあげるが、そんなことお構いなしに沙紀がそのまま切りつける。


――ガキンッ。


しかし訪れた結果は俺の予想と遥かかけ離れたものだった。日本刀は男子生徒の手に傷を負わせることも叶わず、触れ合った瞬間そんな金属と金属がぶつかり合う重々しい音が響く。


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