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俺と緋乃さんの魔法部隊  作者: 空乃そら
第3章 条件
31/49

31.


「ん? なにか必勝法でも思いついたのか?」



「あ、いえ。そういうわけではないんです。すいません、紛らわしいこと言って」



そう言いながら、ぺこりと頭を下げる。



「あの、友達がいるのでそろそろ行きますね」



もはや本当のことを説明しても信じてもらえないと思った私は委員長にそう言うと、お二人のところに向かおうと足を踏み出した。しかし、



「行くって、これだけの人がいるのにどこにいるのかわかるのか? サボろうとしてたんだし、まさか待ち合わせしてるわけでもないだろう? それともこの期に及んでまだサボろうと――」



「ち、違います!」



とりあえず反射的にそう否定する。ここでまたそんな風に勘違いされたら、シローさん達と合流するのに支障が出るかもしれない。私は小さくため息を吐くと、仕方なく魔法を発動することにした。



「――知り合い探索エルノルミヤ・エレブナ



対象をシローさんと沙紀さんに設定。するとすぐに東北に約一キロ先の場所にいるという結果が返ってきた。どうやらお二人とはまとまって行動しているようだ。しかし改めて数字に換算すると、この学園の大きさが異常に感じる。



「私の魔法、捜索系なんです。これで友達の位置がわかります」



「そうか。無粋な質問をしてすまなかった」



どんな魔法を使えるかは極力秘密にするのが常識だ。もちろん強制というわけではないが、珍しい能力を持っているだけで犯罪に巻き込まれることも少なくない。そのため相手にどんな魔法を持っているか聞くのはタブーとされている。まあ昨日も喫茶店でシローさんに私の魔法が時間を操るものか聞かれたが、あれは状況的に仕方ないことだったと思う。今回も私が言葉で説明するより実際に見せたほうが早いと思い、勝手に魔法発動させただけなのだが、それでも委員長は罪悪感を抱いているようだった。なんとなく彼が委員長に選ばれた理由がわかったような気がする。



「そろそろ行きますね。いろいろありがとうございました」


「ああ。お互い全力を尽くそう」



委員長もさすがにもうサボらないと思ったのか――実際に本当にサボりだったわけではないが――、それ以上は何も言ってこなかった。私はぺこりと一礼すると、今度こそお二人のところへ行くべく足を動かした。知り合い探索エルノルミヤ・エレブナを発動させている間はたとえ対象者が移動し始めても位置を追うことができるが、お二人がこれからも一緒に行動するとは限らないので出来る限り急いで合流したほうがいいだろう。可能なら実戦が始まってしまう前にたどり着きたいところだが――、



『ではこれより試合を開始します』



そんな無機質な声と同時に笛の音が響き渡った。そして、ところどころからあがる歓声。



「まったく運がないにもほどがありますよ……」



どうやらそう上手くことは運んでくれないらしく、移動を始めてすぐに開始してしまったようだ。一応いつ始まってもいいように委員長と別れてから人気のないルートを探していこうとは考えていたものの、思っていた以上に早く始まってしまったため、まだ人気のないところまで到達することが出来ていない。しかも他の生徒たちは私のことをここの生徒と勘違いしている可能性が高いのだ。



――そりゃいくら私服とはいえ、こんなところに同世代の子がいたら勘違いしちゃいますよね……。



そんなことを考えているとさっそく勘違いをしてしまったらしい体育着の男子生徒が目の前に現れ、手に持った箒で襲いかかってきた。大きく振りかぶり、それを思いっきり叩きつける。私はとっさにそれを右に跳んでかわすと、急いで体勢を立て直した。MCPの訓練で染み付いた動きがどうやら役に立ったようだ。



「あ!」



しかし手に持ったお弁当箱まで意識することは叶わず、先ほどの動きで少し傾いてしまった。反射的にキッと男子生徒をにらみつける。



しかし男子生徒はその視線におびえることなく、まるで剣道の竹刀を握っているかのような隙のない構えで箒を握っていた。よく見ると箒がわずかに光を放っている。これは物体系――魔法で様々な物を造ることができる――によく見られるものだ。つまりあの箒はあの男子生徒の魔法ということなのだろう。

私はなおも男子生徒を睨んだまま、どうするべきかと考えていた。あの箒をただの打撃攻撃にしか使わないのであれば正直いつまでも避け続けられる自信はある。しかしお弁当を気にするとなれば話は別だし、何より魔法で造ったものならば何らかの能力があっても不思議ではない。さらに言えばたとえ避け続けても男子生徒が諦めてくれるとは限らないうえにバトルロワイヤルという性質上、他に乱入者が現れるかもしれない。もしかしたらお弁当を諦めれば逃げることは可能かもしれないが――、




その選択肢はありえませんよね。お二人にはお世話になってますし、何とか無事に届けなければ。となると、多少申し訳ない気もしますが人気のないところまで実力行使で突っ切るしかないですかね……。ごめんなさい。



心のなかで謝罪するとお弁当を握りしめ、新たに魔法を展開することにする。



「――灼熱弾丸カフシィ・スフェラ



お弁当を持っていないほうの手の人差し指を男子生徒に向ける。それで私が何かする気だとわかったらしく、箒を再び大きく振りかぶってくるがそれより早く私の魔法が発動した。ジュッという音とともに放たれた青白い光が男子生徒に向かって飛んでいく。まさか遠距離攻撃と思っていなかったのか、避けることも出来ずにそのまま直撃すると男子生徒の体が大きく吹き飛ばされた。近くにいた何人かの生徒を巻き込みながら最後はどうやら集団で戦っていた一団に激突し、ずるりと崩れ落ちる。



「あはは……。ちょっと加減を間違えましたかね……?」



乾いた苦笑いを浮かべながら、思っていた以上の威力に少し驚く。灼熱弾丸カフシィ・スフェラは炎の玉を出現させ、それを自在に放つことのできる魔法だ。真っ直ぐにしか飛ばなかったりと欠点はいろいろあるのだが、ここまで攻撃性に特化された魔法はあまりないので重宝している。しかも大きさや威力なども調整することができ、先ほどは炎の温度を最低に設定し、代わりに威力を上げるように意識した。……少し上げすぎたような気もするが。



「ごめんなさい」



私は小さく謝罪をすると、どうやら気絶してしまったらしい男子生徒に頭を下げる。ちらりと周囲を確認すると魔法が思った以上の規模になってしまったためか、何人かの生徒が驚きの眼をこちらに向けていた。顔を覚えられるまえに移動したほうがいいだろう。



「あれ、シローさんたちが動きだしましたね……」



そう思った矢先、知り合い探索エルノルミヤ・エレブナが教えてくれるお二人の位置が段々と動き始めた。まあもう戦闘は始まっているし、移動すること自体は何の不思議もない。行き違いになることはないだろうが、早くお二人に追いつかなければならないだろう。



「でも人気のないところを通るとかなりの遠回り、ですか」



私の魔法は対象の位置情報だけでなく、その周辺の地理も調べることができるので学校の全体図は大体わかっている。それによると人気のなさそうなところを通ってもたいした時間のロスはなさそうだったのだが、お二人が移動し始めたため遠回りになってしまう可能性が出てきたのだ。正直なところ一刻も早くこの状況を何とかしたいのだが、一番確実に早く合流するためには校庭の中心を通る必要がある。遠目にもわかるくらいにあそこはたくさんの人がいるので戦闘を避けることは困難だろう。



――しかし人気のないところを通れば絶対に戦闘しなくて済むというわけでもありませんし……。



正直あそこを通り過ぎるのは少し気が引けるが、もしかしたら一気に突っ切れば必要最低限の戦闘で済むかもしれない。どちらにせよ、いつまでもここにいるわけにもいかないので早く決断しなければ。



「……行ってみますか」


私はそうつぶやくと、校庭の中心に向けて走りはじめた。


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