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俺と緋乃さんの魔法部隊  作者: 空乃そら
第3章 条件
29/49

29.


 「しかしキミは一年生だったのか」


 「え?」



 「去年の内容を知らないということは、そういうことだろう? それなら実戦の舞踏会(プラクティキ・フロ―シュ))を知らないのも納得がいく」



 「……違うって言っても信じてもらえなさそうですね」



 この人は本当に人の話を聞かないと思う。ちょっと失礼だが、そんなことでこの先大丈夫なのか少し心配になるレベルだ。



 『静かにしてください』



 そんなたわいもない話をしていると、再び校内放送が流れる。さすがは育成学校というべきか、それだけで騒がしさはなくなり、あたりが一気に静寂に包まれた。



 『次に制限時間の説明に入ります。制限時間は開始から三十分、そこで終了となります。そして賞品ですが、今回は終了時に失格になっていない生徒全員に単位十を贈呈いたします』



 けれど、そんな静寂もその言葉とともに再び破られた。しかし今度は驚きと戸惑いに満ちた声ではなく――興奮と期待に満ち溢れているように感じる。

 

「単位十は凄いな……」




 委員長までもが真剣な顔を崩し、にやりと不敵に笑みを浮かべていた。正直なところ学校に通ったことのない私は単位というものがどういうものかわからなかったが、それでも周囲の反応から察するに相当のものなのだろう。そしてこれは推測だが、賞品を出すことで適当にやりすごそうとしている人をやる気にさせているのだと思う。実際、私の周りにもこの話を聞いてから眼の色を変えた人が何人もいる。



 『では失格になる条件ですが、まず場外に出ること。つぎに棄権をすることです。棄権の場合は大きく手を挙げて、校舎内まで来てください。そして棄権しているものを攻撃した場合も失格とします』



 「ほー……」



 私はそのルールに少し関心を覚えた。というのもMCPとして犯罪者と交戦する場合、民間人や降伏している人に攻撃しないことは、自分の命の次に最も重要なことなのだ。そういったものを練習するにはとても良いルールのように思える。



 『また気絶、教員がこれ以上は無理だと判断した場合も失格です。降参以外の失格は、教員が校舎内まで送るので待機していてください。ルールの説明は以上になります』



 つまりこれは学年・クラス関係のないバトルロワイヤルで、三十分経ってもリタイアしていない生徒全員に賞品が与えられる。範囲はグラウンド内全域で、リタイアの条件は大きく五つ。まず場外に出ること、次に自分の意志でリタイアすること。この場合は自分で校舎内まで歩いていき、それを攻撃してしまった人も失格。そして気絶、教員の方が無理だと判断した場合。



 「これは結構奥が深いルールですね……」



 ――まあ、ルールをまとめたところで、私には関係ないことですが……。



 私はそんなこと思いながら、頭の中で先ほど聞いたルールをまとめる。



 「ああ、今回は本当に全力でいかないといけないみたいだな。さあ、すぐに始まる。キミも準備したほうがいいぞ」



 「え? あ、はい」



 もちろん私は参加しないのだが、曖昧に返事をする。つい流れでここまで来てしまったが、そろそろ本当に何とかしなければならないだろう。始まってしまったら他の生徒さんの邪魔にもなってしまうし、何より巻き込まれて手に持っているお弁当に被害が及んだら困る。


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